長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『コンドル』

2020-04-08 | 映画レビュー(こ)
 
 MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の重要作『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』にも引用された陰謀スリラーの傑作。強固な反骨、批評精神はこの時代のアメリカ映画ならではのものだ。

 ロバート・レッドフォード扮する主人公=コードネーム“コンドル”は各国のコミックや娯楽小説を読み漁り、思想行動をデータベース化していくCIAアナリスト。表向きは公共の資料館として構えられた建物で変哲のないオフィスワークに勤しむが、ある日ランチから戻ると施設内の全員が惨殺されていた。コンドルはCIA本部に助けを求めるが…。

 監督として絶頂期にあったシドニー・ポラックのサスペンス演出が冴え渡る。特に件の襲撃シーンは白眉だ。先頃、亡くなった名優マックス・フォン・シドーが不気味かつエレガントに演じる殺し屋と自身の運命を悟った女性職員のやり取りは身の毛もよだつ名場面であり、忘れ難い。

 恐ろしい陰謀を暴いたコンドルはそれをNYタイムズへリークし、僕らは正義が成されたと確信するが、巨悪は事も無げに言い放つ「どうしてそれが公表されると思うんだね」。
本当の陰謀は表沙汰になったりしない。国家が個人を潰すことなど造作もない。今なお僕らの背筋を震え上がらせるラストシーンである。ゆえに『コンドル』は傑作なのだ。


『コンドル』75・米
監督 シドニー・ポラック
出演 ロバート・レッドフォード、フェイ・ダナウェイ、マックス・フォン・シドー

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