TVシリーズ黄金期PeakTVのあまりにも多いラインナップの一角に、“ポッドキャスト原作モノ”というジャンルがある。アメリカでは実録殺人事件を扱ったポッドキャストが人気の様子で(日本では聞いたことがないので、おそらく独自の文化と思われる)、既に連続ドラマとしての体裁を成したそれはTVシリーズへの置き換えも容易だったのだろう。全米脚本家組合、全米俳優組合のストライキによってPeakTVのバブルは完全に弾けたが、おそらくストライキ後にも生き残り続けるジャンルではないだろうか。
そんなブームを巧みに取り入れたのが本作『マーダーズ・イン・ビルディング』。高級マンション内で起こった殺人事件を、3人の住民がポッドキャスト配信をしながら解明するというコメディシリーズ。ショーランナーも務めるスティーヴ・マーティンが相棒マーティン・ショートを招聘し、老境に至った名コンビの掛け合いが楽しい。ここにセレーナ・ゴメスが合流し、勘の良いコメディ演技と切れ味でおじいちゃん2人を“介護”。3人のアンサンブルが本作の大きな見どころだ。また舞台となる高級マンション“アルコニア”のクラシカルなプロダクションデザインが素晴らしく、殺人犯がいようが住んでみたいと思わせてくれる魅力がある。毎話、登場するゲスト(=住人)の顔ぶれもバラエティに富んだ豪華さで、シーズン1ではエイミー・ライアンのエレガンスに見惚れてしまった。ベスト回は聾者の人物を主人公とした全編サイレント仕様の第7話。ベテランならではのウェルメイドな仕上がりに安心して楽しめるシリーズである。
『マーダーズ・イン・ビルディング』21・米
製作 スティーヴ・マーティン、他
出演 スティーヴ・マーティン、マーティン・ショート、セレーナ・ゴメス、ネイサン・レイン、エイミー・ライアン、ティナ・フェイ
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