長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ジャングル・クルーズ』

2021-08-11 | 映画レビュー(し)

 なんせ10年に1回くらいしかディズニーランドには行かないので、ジャングル・クルーズに対して「時間潰しでしょうがなく乗るアトラクション」くらいの認識しかない。ディズニーはこれを『パイレーツ・オブ・カリビアン』の方程式で実写化をしており、まるで画面から企画書の文面が透けてくるかのような仕上がりだ。荒くれ者達が集う波止場町での活劇、敵船とのチェイス、伝説の秘宝と呪われた怪物たち…足りないのはジョニー・デップくらいで、どこを切り取っても既視感の連続である。監督は一連の“リーアム・ニーソン映画”やサメ映画の快作『ロスト・バケーション』を手掛けた職人ジャウム・コレット・セラ。彼の手際の良さが活かされているとは言い難く、ランニングタイム127分はまるでジャングル・クルーズの2時間待ちのような体感だ。

 プロデューサーも兼任する主演ドウェイン・ジョンソンはこの手の映画にはやや歳を取り過ぎな感が否めず、ここで再びハリウッド映画における不自然な年の差スクリーンカップル問題が頭をもたげてしまう。もともと年齢不詳だったが、1972年生まれの49歳。無精髭には白いものも目立つ。
 そう、1983年生まれエミリー・ブラントと対等に渡り合える男性スターがちょっと思いつかない。ブラントはジャングルの奥地でも汗1つかかず、川に落ちようが泥に塗れようが輝かんばかりの美しさで(こういう演出で良いのです)、彼女の魅力だけで映画が持っている。これぞスターだ。

 その対極を行くのが主人公をつけ狙うドイツのエセ王族に扮したジェシー・プレモンス、1988年生まれだ。子供の観客はエドガー・ラミレス扮する呪われた冒険者に悲鳴を上げるだろうが(なぜ出たラミレスよ)、大人は断然プレモンスだろう。彼が人質を前に紅茶を淹れるだけで脳裏にはアルバカーキのトラウマが甦る。さすが充実の曲者俳優、ディズニー映画に爪痕を残す頼もしい怪演ぶりだ。


『ジャングル・クルーズ』21・米
監督 ジャウム・コレット・セラ
出演 ドウェイン・ジョンソン、エミリー・ブラント、ジェシー・プレモンス、エドガー・ラミレス、ポール・ジアマッティ、ジャック・ホワイトホール

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