長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『デュエリスト 決闘者』

2021-11-15 | 映画レビュー(て)

 1977年、リドリー・スコット40歳の長編初監督作は既に巨匠の風格だ。19世紀ヨーロッパ、ナポレオン軍の士官2人が決闘に取り憑かれ、20年間にわたって死闘を繰り広げていく。画家として勉学を積んだリドリーの映像は全てのショットが絵画のように美しく、これは後年『グラディエーター』にはじまる史劇作品でより大きなキャンパスへと変わっていく事になる。ほとんどエイリアンのような不条理さのハーヴェイ・カイテルから果たし合いを挑まれた主人公キース・キャラダインは、はじめこそ渋々ながらそれを受けていたものの、度重なる再戦にいつしか自ら身を投じていくようになる。彼らを突き動かすのは煮ても焼いても食えない“名誉”というやっかいな代物だ。スコットはぞんざいに扱われる女たちを通じて既にこれを愚かで有害な男らしさと看破しており、最新作『最後の決闘裁判』の“下絵”はまさに本作である事がよくわかる

 サーベルとレイピアで異なる剣撃の効果音など、後に完全統制されるリドリー組のスタッフワークはこのデビュー作から窺い知ることができる。まさにデビュー作にこそ監督の全てがあるのだ。


『デュエリスト 決闘者』77・英
監督 リドリー・スコット
出演 キース・キャラダイン、ハーヴェイ・カイテル、エドワード・フォックス、アルバート・フィニー
 

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