長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『エージェント:ライアン』

2017-08-17 | 映画レビュー(え)

アレック・ボールドウィン(昔は痩せてた)の『レッド・オクトーバーを追え!』に始まり、ハリソン・フォードの2作で人気を確立した“ジャック・ライアンシリーズ”の再々始動作。
ベン・アフレックの『トータル・フィアーズ』もそんなに悪い出来ではなかったが、いかんせんその後のベニファー騒動が足を引っ張ってシリーズ化には至らなかった(今ならアフレック監督・主演で最高傑作が作れそうだけど)。

今回はトム・クランシー原作による“ジャック・ライアン”というキャラクターを翻案した映画オリジナル作品。ライアン役には『スター・トレック』の体育会系なカーク船長役で人気を博したクリス・パインを迎え、一介のアナリストからスパイ工作員へと転ずるライアンを描く…って、それもうジャック・ライアンじゃないじゃん!!彼はあくまで事務方・学者であり、スーパーヒーロー然としていないのが魅力だった。インテリジェンスよりもフィジカルが勝るパインでスパイアクションものの新鉱脈を狙ったのがありありと分かる。この題材に対する製作陣の愛のなさは早々に見破られ、本作はほとんどヒットせずに市場から姿を消した。

 また“ジェイソン・ボーン”以後のリアリズム・ハード路線の後では旧時代的なスタイルも失敗の原因かも知れない。経済テロを起こそうとするロシア人実業家に内偵する地味なストーリー展開は『ゼロ・ダーク・サーティ』等のドキュドラマタッチで衝撃を受けた今となっては箱庭感がある。終幕のアクションシークエンスも何だか『24』の1エピソードみたいだ。いみじくもこの12年ぶりの再始動はサスペンスアクションというジャンルの進歩を逆説的に証明してしまったのである。


『エージェント:ライアン』14・米
監督 ケネス・ブラナー
出演 クリス・パイン、キーラ・ナイトレイ、ケネス・ブラナー、ケヴィン・コスナー
 

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