『ふたりのベロニカ』『トリコロール 赤の愛』で知られる女優イレーヌ・ジャコブの息子ポール・キルシェが主演。その母親役にやはり『トリコロール 青の愛』に主演したジュリエット・ビノシュ。この配役だけでも、随分と時間が経ったものだと感慨深いものがある。自身の少年時代を元にしたというクリストフ・オノレ監督は、やはりビノシュが夫を交通事故で亡くした『青の愛』同様、本作を青みがかった映像で包み、父を亡くした17歳の喪失感を描き出していく。
ポール・キルシェは時折、憂い気に伏せた面持ちがキェシロフスキの描く運命の不思議に遭遇した母イレーヌを想わせ、あどけなさと体当たりの切れ味に今後を期待させるものがある。キルシェ演じるリュカの憂鬱は現在(いま)を生きる子どもたちのメランコリーを体現しているが、それをオールディーズポップで代弁するオノレの演出はややノスタルジーが過ぎるだろう。アメリカに留まらず、昨今の映画作家は感傷に依り過ぎているのではないか。
『Winter boy』22・仏
監督 クリストフ・オノレ
出演 ポール・キルシェ、ジュリエット・ビノシュ、ヴァンサン・ラコスト、エルヴァン・クポア・ファン
12月8日よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
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