長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ウエスト・エンド殺人事件』

2022-12-10 | 映画レビュー(う)

 1950年代、ロンドンはウエスト・エンドでアガサ・クリスティによる戯曲『ねずみとり』の上演を巡って殺人事件が起こる。第1の被害者エイドリアン・ブロディのモノローグから始まるトム・ジョージ監督の『ウエスト・エンド殺人事件』(原題“See How They Run”)はフーダニットミステリに実在の人物、映画タイトル等を絡めた虚実入り混じるコメディだ。一級のプロダクションデザインや明らかにアレクサンドル・デスプラ風のユーモラスなスコアを流すダニエル・ペンバートンといい、ウェス・アンダーソンの影響下にあるのは間違いなく、全くやる気のない刑事サム・ロックウェルと新米巡査シアーシャ・ローナンのコンビはチャーミングで微笑ましい。もっともジャンルのお約束を遊んでアガサ・クリスティまで登場させるミステリの筋立て自体はパロディの域を出ておらず、ローナンがいなければ98分というランニングタイムは保たなかったかも知れない。ジャンルの更新はライアン・ジョンソン監督の『ナイブズ・アウト グラスオニオン』に期待しよう。


『ウエスト・エンド殺人事件』22・米
監督 トム・ジョージ
出演 サム・ロックウェル、シアーシャ・ローナン、ハリス・ディキンソン、エイドリアン・ブロディ、ルース・ウィルソン、チャーリー・クーパー、シアン・クリフォード、デヴィッド・オイェロウォ

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