長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『X-MEN:アポカリプス』

2017-09-14 | 映画レビュー(え)


新シリーズ3部作の完結編。
2011年の『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』から始まったこの連作は60年代、70年代の時代風俗の再現と、当時の事件にX-MENが関わる設定に面白さがあった。マシュー・ボーンが手掛けた『ファースト・ジェネレーション』はケイパー映画風のジャンル映画スタイルになった快作で、一新されたキャスト陣の若さも作品のフレッシュさに貢献していた。続く『フューチャー&パスト』ではシリーズの代表監督ブライアン・シンガーがベトナム戦争期の混乱と現在の時勢をマッチさせ、さながらシリーズ最終作のような趣があった。

80年代を舞台にした本作にはこれらのコンセプトが継承されておらず、何とも味気がない。時代の名残はせいぜいファッションくらいで、この個性のなさ、起伏のなさがあの時代らしくもあり、ご愛敬だ。シンガーは次から次へと見せ場を盛り込んで飽きさせないが(今回もクイックシルバーはマーベルより楽しい)、これが果たして面白いのかというと首を傾げてしまう。原因はあまりの強さにパワーインフレし、無個性化してしまったヴィラン、アポカリプスのせいだろう。旬の演技派スター、オスカー・アイザックを持ってしても何ら映画を救う事はできなかった(彼を起用した意味すら見出しにくい)。

むしろマグニートー役マイケル・ファスベンダーをもっと見ていたかった。
 ポーランドで潜伏中の彼が手に入れたささやかな幸せと迫害。ファスベンダーの魅力は苦悶であり、シンガーも時間をかけてそれに注力しているのがわかる。ポーランドで暮らすアウシュヴィッツの生き残り、という設定がもたらすニュアンスの豊富さも原作が元来持ち得てきたものであり、それこそが『X-MEN』シリーズの根幹ではなかったか。このあたりの企画不足ぶりにマーヴェル(ディズニー)と20世紀フォックスの差が見えた。


『X-MEN:アポカリプス』16・米
監督 ブライアン・シンガー
出演 ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、ニコラス・ホルト、ソフィ・ターナー、オスカー・アイザック、ローズ・バーン
 

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