長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ヴェノム』

2019-08-04 | 映画レビュー(う)

今やマーベルコミックの実写映画化はディズニー/MCUの寡占状態。そこに一石を投じようとスパイダーマンの実写化権を持つソニーから送り込まれたのが“マーベル史上最凶の敵”と謳われるヴェノムだ。主演は怪優トム・ハーディ。予告編の雰囲気からもこれはクローネンバーグ映画のような異形のヒーロー映画になるのではと期待が高まったが…まさかのコメディだった。宇宙生命体ヴェノムに憑りつかれたトム・ハーディの一人芝居で見せる“ヴェノムコント”ではないか。なんだそりゃ!

「まぁ、そういう映画なんだ」と早い段階で割り切れれば、そこそこ楽しめはする。ハーディ扮する主人公エディ・ブロックはフリーライター。違法な手段で手に入れたソースを基に、ライフ財団へ突撃取材を行った事から仕事も恋人(珍しく肩の力の抜けたミシェル・ウィリアムズ)も失ってしまう。ヴェノムに憑りつかれる前からちょっと奇異なトム・ハーディはハリウッド映画のメインストリームを張るには異能過ぎると再確認。

ヴェノムによって内なる声を解放していくジキルとハイド的な話なのかな、と思えば忙しなくアクションが展開するばかりで、2010年代になっても舞台がサンフランシスコとなれば『ブリット』の変奏をやる所はご愛敬(この年は『アントマン&ワスプ』も同じ事をやった)。ヴェノムは凶悪でも何でもなく、彼もまた母星では落ちこぼれであり、親和性の高い宿主であるエディと同化して共通の敵に立ち向かう…ってド根性カエルかよ!結局、“史上最凶の悪”どころか、『デッドプール』と一、二を争うコミックリリーフが誕生してしまった!


『ヴェノム』18・米
監督 ルーベン・フライシャー
出演 トム・ハーディ、ミシェル・ウィリアムズ、リズ・アーメッド
 


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