演技派の階段をひた駆け上がるジェイク・ギレンホールがいよいよ“名優”の代名詞の1つであるボクサー役に挑む。
それも前年『ナイトクローラー』で大幅減量した後のビルドアップという、まさにデニーロ・アプローチと呼びたくなる肉体改造だ。
もちろん、ギレンホールはそんな見た目に留まらず、自己過信から呼び込んだ悲劇を克服しようと贖罪に身を費やす男に魂を込めた。本作の見所は紛れもなくギレンホールだ。
残念ながら、映画はそんな彼に見合った見せ場を用意できていない。
監督のアントワン・フークアはリアリズムを重視したクールな作風が持ち味であり、『ロッキー』のような涙と根性の人情ドラマとは真逆の作家性だ。ファイトシーンはまるでTV中継を見ているような淡白さであり、エミネムの力強い主題歌もまったくもってミスマッチに終わっている。こんな事は言いたくないが、白人が主人公のドラマを黒人が演出した本作はキャスト、スタッフの生理が一致しておらず、方向性が定まっていないのだ。
本作が公開された半年後、2015年末には『クリード』が封切られ、『サウスポー』は“過去の人”へと追いやられた。
『ロッキー』を実質、黒人映画としてリメイクしたライアン・クーグラー監督は1ラウンドを一発長回しで撮る若さ漲る野心と、過去作の韻を踏みまくる巧みさでついにはあのスタローンを40年ぶりにオスカー会場へと送り出した。ボクシング映画の作り手にはこれくらいの熱量があってほしいし、『サウスポー』はもっとベタでも良かったのではないか。ギレンホールは名優への階段を上がったが、そこはまだ踊り場だったようだ。
それも前年『ナイトクローラー』で大幅減量した後のビルドアップという、まさにデニーロ・アプローチと呼びたくなる肉体改造だ。
もちろん、ギレンホールはそんな見た目に留まらず、自己過信から呼び込んだ悲劇を克服しようと贖罪に身を費やす男に魂を込めた。本作の見所は紛れもなくギレンホールだ。
残念ながら、映画はそんな彼に見合った見せ場を用意できていない。
監督のアントワン・フークアはリアリズムを重視したクールな作風が持ち味であり、『ロッキー』のような涙と根性の人情ドラマとは真逆の作家性だ。ファイトシーンはまるでTV中継を見ているような淡白さであり、エミネムの力強い主題歌もまったくもってミスマッチに終わっている。こんな事は言いたくないが、白人が主人公のドラマを黒人が演出した本作はキャスト、スタッフの生理が一致しておらず、方向性が定まっていないのだ。
本作が公開された半年後、2015年末には『クリード』が封切られ、『サウスポー』は“過去の人”へと追いやられた。
『ロッキー』を実質、黒人映画としてリメイクしたライアン・クーグラー監督は1ラウンドを一発長回しで撮る若さ漲る野心と、過去作の韻を踏みまくる巧みさでついにはあのスタローンを40年ぶりにオスカー会場へと送り出した。ボクシング映画の作り手にはこれくらいの熱量があってほしいし、『サウスポー』はもっとベタでも良かったのではないか。ギレンホールは名優への階段を上がったが、そこはまだ踊り場だったようだ。
『サウスポー』15・米
監督 アントワン・フークア
出演 ジェイク・ギレンホール、フォレスト・ウィテカー、レイチェル・マクアダムス
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