ジェニファー・ニーヴンによる小説を映画化した本作は日本のティーン映画でも見慣れた筋立てだ。冒頭、主人公フィンチは橋の欄干に立つ少女ヴァイオレットを目撃する。彼女は最愛の姉を交通事故で亡くし、悲嘆に暮れていた。原作小説ではフィンチも自殺を試みていたというこの奇妙なボーイ・ミーツ・ガールから始まる本作はエル・ファニング、ジャスティス・スミスというフレッシュでキュートな主演カップルを得て演技はもちろん、脚色も『ペンタゴン・ペーパーズ』『ロング・ショット』の気鋭リズ・ハンナと一級である。
ではなぜ“日本のティーン映画”を引き合いに出したかというと、この手の映画で必ずと言っていいほど“障害”として持ち出される不治の病や不慮の事故が本作ではメンタルイルネスとなっている所に米ティーンのリアルを感じたからだ。先行する傑作『13の理由』や『ユーフォリア』でも描かれたようにそれは自殺とも密接に結びつく。終盤、フィンチの抱える虚無や、ヴァイオレットの喪失が浮かび上がる思いがけない展開に胸を痛めた。僕はとうに若者といえる年齢を過ぎてしまったが、諸作を俯瞰する事で現在を生きる彼らの“生きづらさ”を垣間見たのである。
『最高に素晴らしいこと』20・米
監督 ブレット・ヘイリー
出演 エル・ファニング、ジャスティス・スミス、アレクサンドラ・シップ、キーガン・マイケル・キー
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