オスカー・ワイルドの戯曲『ウィンダミア卿夫人の扇』を1930年代のイタリアを舞台に映画化した本作は豪華スターのリラックスしたアンサンブルが小劇場演劇のような密着感あるグルーヴを生み出している。危うい恋のさや当てがほっこりするような大団円を迎えるのは古典演劇ならではの多幸感だ。
ヘレン・ハント演じるアーリーン夫人は独身、妻帯者問わず社交界の男たちを次々とモノにする魔性の女。いくらオスカー女優とはいえ、親しみやすさが魅力のハントはミスキャストではと思ったアナタは正しい。この“ひっかかり”が大きな伏線になっている。
アーリーン夫人の登場によってアマルフィの若いカップル達がその愛を試される。『マッチポイント』への出演直前、セクシー路線に行く前のスカーレット・ヨハンソンが瑞々しい美しさと色香でヒロインを演じているのは今となっては貴重だ。おそらくキャリアにおける少女期をほぼ終えたのがこの作品ではないだろうか。終幕、乙女の涙が心を打った。
1930年という時代の華やかさ、アマルフィの風光明媚さといった原作からアレンジを利かせても物語に揺るぎがないのはこれが親子愛の物語だからだ。古典作品の普遍性をお楽しみあれ。
『理想の女』04・英、伊、米、ルクセンブルク
出演 マイク・バーカー
出演 ヘレン・ハント、スカーレット・ヨハンソン、トム・ウィルキンソン
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