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コロナショックによって世界各国大小の映画祭が中止され、多くのインディーズ映画が世に出る機会を失った中、救い主となっているのがNetflixだ。中国系アリス・ウー監督による本作は所謂ラブコメディ映画でありながらメジャーにはない知性を湛えた好編であり、世界各国でスマッシュヒットとなっている。
アメリカの田舎町。主人公エリーは学校で唯一の中国系アメリカ人で、ろくに友達もいない。父は母の死後、心を閉ざして家に閉じこもり、旧い映画を見るばかりだ。彼女は得意の文章力でレポートのゴーストライター業を請け負い、小遣いを稼いでいた。そんなある日、ラグビー部のポールから学校一の美少女アスターへのラブレターを依頼される。だが、エリーもアスターへ好意を抱いていて…。
サルトルやカズオ・イシグロ、ヴィム・ヴェンダースなど小説から映画まで様々な引用に溢れた知的なアプローチが本作の魅力の1つだ。アスター役アレクシス・レミールはどこかしらニューシネマ期の女優を思い起こさせる古風さがあり、『卒業』のオマージュまで出てくる。ウー監督はまさに“出口なし”な三角関係を楽しく描きながら、そんな青春時代に過度な感傷を持ち込まないのがいい。
彼女らは束の間の友情を築き、いつかの再会を誓うがおそらくもう会う事はないだろう。チェ・ゲバラの言葉を借りれば人生における一時の伴走に過ぎず、それこそが青春時代なのだから。『ザ・ライダー』のクロエ・ジャオ、『フェアウェル』のルル・ワンら新世代アジア系アメリカ人監督達の台頭は新たなムーブメントになりつつある。
『ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから』20・米
監督 アリス・ウー
出演 リーア・ルイス、ダニエル・ディーマー、アレクシス・レミール
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