“文字数”の多いメインストームの大ヒットアニメーション映画よりも、2024年最も心動かされたのは102分間無言の『ロボット・ドリームズ』だ。サラ・バロンの同名コミックを原作とする本作はファニーで、とびきり切ない珠玉の1本である。
マンハッタン。大都会の片隅に暮らすドッグは何処の都市にも存在する埋没した若者だ。冷凍食品と深夜番組で寂しさを紛らわす夜、彼はCMでやっていた“お友だちロボット”を衝動買いする。自分1人では動かせない重量のパッケージからパーツを取り出し、組み立てればさぁ完成。ロボはどんなことでも共有し、楽しんでくれる最高の親友だ。互いに手を取って街に繰り出し、夏は一緒にビーチで泳ぐ。ところが砂浜でロボが動かなくなった。壊れてしまったらしい。翌日、ドッグが工具を持って再び訪れるとシーズンは終わり、ビーチは閉鎖されていた。
全ては流転する。あれほど大切にしてきたロボの存在を、ドッグは次第に忘れていく。新しい友人を作り、新しい生活を夢に見始める。ロボも夢を見る。ドッグのいない世界で踊り、浜辺に現れた小鳥たちと親交を結ぶ。僕は『ロボット・ドリームズ』をラブストーリーとして見た。在ったものは失われ、忘却される。時折かつてを想い、夢に見る。そして人生は続くのだ。2人の遠景にはワールド・トレード・センタービルが映る。本作はドッグとロボの心象にかつての街並みが託された“NY映画”でもあるのだ。奇をてらうことなく歌い響くアース・ウィンド&ファイアー“September”に、僕たちは涙を流したっていい。
『ロボット・ドリームズ』23・スペイン、仏
監督 パブロ・ベルヘル
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます