「先生、奥歯がなくなっても前歯があればなんとか噛むことはできるし、人には見えないから抜けたままにしておいてもいい?」と患者さんに聞かれました。
奥歯には二つの大きな役割があります。
一つはしっかり噛んだ時に前歯に負担がかからないように支える役割りがあります。
なので奥歯を失うと前歯に噛む力が集中し壊れてしまいます。
二つ目は奥歯は臼歯といいますが書いて字のごとく食べ物を臼(うす)のようにすりつぶす役割があります。
肉や魚などのカルシウムやタンパク質は胃酸で溶かして消化できるので臼歯部は必要ありません。
なので肉しか食べない猫や犬やトラなどは臼のような歯は持っておらず全て歯がとんがっています。
ところが植物はしっかりすり潰さなければ栄養素を取り出すことができないので植物しか食べない牛や馬は前歯まで臼のような形をしています。
人間やクマなどは雑食なのでとんがった歯と臼のような歯と両方持ち合わせています。
前歯で無理に硬いものを擦り潰そうとするとハサミで豆を切り続けるようなもので、やはり前歯が壊れてしまいます。
こういった理由から奥歯があったほうが残っている前歯が長持ちしますので奥歯はしっかり治療しましょう。
ちなみに写真は西宮沖でつったチヌ(クロダイ)ですが、餌はエビやカニや貝だけでなく糠や麦やコーンでも釣ることができます。
彼らも雑食なので物を食いちぎる前歯とすりつぶす臼歯を持っており、構造的に人間とよく似ています。
観察した後はお刺身とあら汁でおいしくいただきました。