旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

目黒不動尊と花椒の香りと信州亀齢と 東急目黒線を完乗!

2025-02-15 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

多摩川を渡った急行が、キーンキーンと車輪とレールを擦らせて、急カーブに弧を描いてくる。
かつて目蒲線として親しまれた路線は、東京メトロとの直通運転と東横線複々線化事業により
目黒線と多摩川線に分断された。この休日は田園調布から目黒まで、城南の小さな旅をしてみたい。

都内有数の高級住宅街の田園調布が旅のスタート地点。
洋館風の旧駅舎は、複々線化事業により駅は地下化された後、2000年に復元されている。

田園調布駅を発った目黒線は、地上に飛び出すや大きな左カーブで東横線から離れて行く。
グリーンのラインを帯びた車両は東京メトロの9000系、行先表示版には赤羽岩淵の文字。

地下鉄と相互乗り入れする目黒線は行先が、赤羽(南北線)、浦和(埼玉高速鉄道)、高島平(三田線)と多彩だ。
隣の4番ホーム(東横線)の、池袋(新都心線)、川越(東武東上線)、所沢(西武線)と合わせると、
もうとんでもない混沌の中にある。「目黒(or渋谷)に出たいだけなのに」と高齢者の戸惑いが聞こえそうだ。

奥沢駅の手前で最初にすれ違った食パンは、東京都交通局の新鋭6000系。
ラインカラーの青を纏ったこの車両は、2022年にグッドデザイン賞を受賞している。

最初の停車駅である奥沢駅は車庫を併設し、6本の車両が留置できるようになっている。

斜め後方から大井町線が割り込んでくると、3000系8連の急行は大岡山駅に飛び込んで行く。
連続立体交差化事業が進んだ目黒線はまるで地下鉄の様、大岡山も地下駅になっている。

活気のある大岡山北口商店街を行く。風景が商業地から住宅街に変わって、雰囲気のある蕎麦処を見つけた。

そば屋の技とは思えないほど、一番搾りが見事な泡がちで登場する。それともグラス形状のなせる技か?
板わさ、かまぼこの天ぷら、鴨のくんせい、卵焼きが並んで、蕎麦前セット(1400円)が嬉しい。

さらに一酒一肴を欲張って “揚げ茄子肉味噌がけ”、花椒が香る一品は中華にも似て、なかなかの美味。
酒は信州上田の “信州亀齢”、美山錦の純米吟醸は穏やかな香りのフレッシュな酒だ。
北国街道上田宿の町並みの中にある岡崎酒造、杜氏さんは確か女性だったと思う。

そして刻み海苔を散らして “ざる” を一枚、かなりコシの強いやつを辛めのつゆでズズッと啜る。
美味いね。休日の真っ昼間にそば屋で一杯、贅沢で粋を気取った呑み鉄の旅なのだ。

大岡山から急行に乗車すると次は武蔵小山、所要時間はわずかに3分、この駅もまた土の中だ。

武蔵小山商店街「パルム」は800mのアーケードと250店舗を有する。
休日の午後はビックリするほどの人,人,人。大阪の心斎橋に負けないくらいの賑わいなのだ。

ところで武蔵小山には「清水湯」という銭湯があって、お昼から湯に浸かれる。
いわゆる東京の黒湯と、さらに深い地層から湧く黄金の湯の2種類の湯が楽しめる。また今度訪ねたい。

武蔵小山では各駅停車が4番ホームに退避して、3番ホームに急行が追いかけてきて先行する。
でっボクが各駅停車に乗るのは不動前駅に途中下車したいから。4番手は東京都交通局の6300系。

不動前駅を降りてL字の小さな商店街を抜けてかむろ坂通りを渡る。あとはゆるりゆるりと坂道を登る。
八つ目やが焼く香ばしいうなぎの香りが漂うと、正面にこんもりとした杜、目黒不動尊瀧泉寺だ。

護摩祈願の声を聞きながら手を合わせたら、東急目黒線の旅も終わりが近い。

最後はやっぱり東急の車両が良いね。3本ほど見逃すと5080系の赤羽岩淵行きがやってきた。
ほどなく目黒川を渡ると、赤いラインの各駅停車は地下に潜って目黒に到着する。
少し長めの停車で乗務員が交代する。ひとりボクはホームに残って赤羽岩淵行きを見送るのだ。

東急目黒線 田園調布〜目黒 6.5km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
天使のウィンク / 松田聖子 1985