吾妻(あずま)はやとし日本武(やまとたけ) 嘆(なげ)き給(たま)ひし碓氷山(うすいやま)
穿(うが)つトンネル二十六 夢にも越ゆる汽車の道
『信濃の国』が七五調で謳い上げる碓氷峠、中山道の旧碓氷峠は、碓氷バイパスや国道18号線と離れた山道を、熊除けの鈴を鳴らしながらゆく。横川の標高が387m、峠頂上の標高が1,200m、その標高差800mが旅人に大きな負担であったことは想像に難くない。と云うか実際に厳しい登山のような行程だった。
日本武尊が遠くの海を眺め、相模灘で荒波を静める為に海中に身を投じた最愛の妻、弟橘姫(オトタチバナナヒメ)を偲び「ああ、いとしき我が妻よ」と嘆いたと伝えられている碓氷峠頂上には「熊野神社」が鎮座し、参道の中央部が県境になっていて、長野県側が「熊野皇大神社」、群馬県側が「熊野神社」と2社に分かれている。
「元祖力餅しげの屋」もまた店舗の中央を県境が貫いている。まさに “峠の茶屋” だ。おろし醤油の力餅と缶ビールで一息ついたら先を急ごう。西へと峠を下ると爽やかな薫風が吹き抜ける旧軽井沢だ。
2012.05.20