まもなく収穫の季節を迎える越後平野を115系電車が疾走する。
東日本でこの形式が見られるのも、すでに越後線・弥彦線、しなの鉄道くらいになってしまった。
越後線呑み潰しの旅は、新潟淡麗と美味い肴、それにこの先々代湘南電車に乗ることが楽しみなのだ。
かつて日本石油の工場があった柏崎駅前、広大な跡地には文化会館と防災公園になっている。
いつの間にかブルボンの工場も無くなって、近代的な本社屋が建っている。ずいぶん雰囲気が変わった。
昭和な旧い湘南電車に乗りたかったのに、12:11発の147Mは新鋭のE129系、ちょっと残念。
2両編成の後ろの車両には、乗客はボクを含めて二人、それでは早速っと地酒のスクリューキャップを切る。
駅前で仕込んだ “越の誉” は柏崎の地酒、スッキリした辛口の吟醸酒だ。
寺泊で2両編成のE129系を見送る。ここまで約50分、300mlの地酒を愉しむにはちょうどいい時間だ。
商店の一つもない駅前に越後交通のバスが待っている。これに乗って魚のアメ横を目指すのだ。
寺泊海岸にジェットスキーが遊ぶ。『荒海や 佐渡によこたふ 天河』今日は穏やかな日本海だが、
はるか海の彼方に黒々と佐渡島が見える情景は、この句を思い出させる。
活気にあふれる魚のアメ横、地魚をはじめ全国の新鮮な海産物が集まる。浜焼きの匂いが食欲をそそるね。
お約束の生ビールを呷っていると “うに・いくら丼” が着丼、イクラが輝いて宝石みたいだ。
たっぷりワサビを溶いて、甘ぁいウニをビールのアテにいただく。旨いね。
イクラの上に刻み海苔を散らして、ワサビ醤油を円を描くように慎重に垂らしたら、
磯の香りがする “潮汁” と一緒に掻き込む。なんとも美味しい途中下車でしょ。
再び路線バスで寺泊駅へ、往復とも一緒だった大学生らしいお嬢さん5人組、寺泊へ小旅行なんて渋いね。
そこに登場するやはり5人組の男子高校生、声を掛けたくて互いに牽制したり、一歩踏み出したり後退りしたり、
結局アプローチできずに、上り下りの電車で違う方向に帰って行ったな。青春だな、頑張れよ。
吉田行きの157Mはまさに湘南色の115系、これに乗りたかった。僅かに4駅15分の昭和な旅を愉しむのだ。
越後線と弥彦線がX字に交差する午後4時半の吉田駅、5つのホームに新旧のオールスターが並んで壮観だ。
3番ホームの新潟行き1941Mは堂々6両編成、吉田さらには内野から新潟は都市圏輸送の頻度を誇る。
車窓、背景には国上山(313m)から弥彦山(634m)そして角田山(482m)と続く弥彦山塊が存在感を増す。
線路側は新潟に近づくにつれ、黄金の田圃から住宅へと徐々にグラデーションしていく。
E129系がガタゴトと、トラスを鳴らして信濃川橋梁を渡り始めるとこの旅の終わりも近い。
高架化工事が進む新潟駅、新幹線と同じ高さにドームで覆われた2番ホームで越後線の旅は終わる。
「青い灯が揺れる」万代口駅舎はすでに取り壊されていてなんだか寂しさを感じる。
米俵やら菰樽を並べて、米どころ酒どころ新潟を演出した酒場には腰をかがめて潜り戸から入る。
豊富な地酒のラインナップから当然に新潟市内の蔵を択ぶ。“鶴の友” は芳醇でふくよかな酒だ。
アテは佐渡の郷土料理 “いごねり”、刻みネギと一緒に生姜だれを絡めていただく。これはイケる。
“のっぺ” は新潟のおふくろの味、里芋、野菜、きのこなどを薄味で煮たとろみのある煮物にイクラをのせる。
家庭により具も味付けも様々なんだろうけど、ボクは冷製のイクラのせが好みだ。
“今代司” の蔵は沼垂にある。淡麗辛口さらりとした純米酒は、郷土料理と相性の良い美味しい食中酒だね。
〆は佐渡のご当地どんぶり “いかながも丼” をいただこう。
細切りにした新鮮なイカ、しょうゆとワサビで味付けした海藻・ながも、そこに大葉を散らしている。
玉子と一緒に品がないくらいによぉく掻き混ぜたら、コリコリ、トロトロと美味しい。
なんだか食レポのような越後線の呑み鉄旅、それだけ新潟の酒と肴は美味しいのだ。
越後線 柏崎〜新潟 83.8km 完乗!
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