鳥甲山(2,037m)の荒々しく険しい岩壁は、人を寄せ付けないかの様な荘厳さに満ちている。
ちょうど中津川が深く削った渓谷、秘境「秋山郷」を挟んで苗場山と向かい合うような位置になる。
平家落人の伝承やマタギ文化など、昔ながらの生活様式が色濃く残る秘境地域。
その秋山郷の最奥地に湧く「切明温泉」で週末を過ごそうと車を飛ばしてきた。
ほんのりと硫黄が匂う50度を超える源泉は、ほどよく外気に触れて、
それでも40度を超える熱い湯が、滔々と石造りの湯槽を溢れさせている。
熱さに慣れてきたら、石の縁に頭を載せて首まで浸かってみる。至福だ。
火照った身体を冷ますように、夕餉は冷たい “黒ラベル” ではじめる。
“岩魚” は刺身と塩焼きが贅沢にならぶ。冷水でしまった刺身が美味い。塩焼きは頭からかぶり付く。
小鉢は “クレソンの” と “かぼちゃ” が脇を固めて、絶品の箸休めだ。
岩魚に舌鼓を打つうちに、手打ちの “蕎麦” が運ばれてきた。不揃いな田舎そばがほんのり香る。
“猪鍋” に火がはいる。“天然なめこ” やらたっぷりの山菜が入って、煮えるのが待ち遠しい。
手元はすでに “芋焼酎ロック” に代わっている。
天ぷらは揚げたてを一品一品、オーナー夫妻がかわるがわる皿にのせてくれる。
“岩魚” に、えっとそれから馴染みのない山菜の名は覚え切れない。それほど採れたての地物に拘っている。
ご飯は “おこわ” に “天然舞茸” のお吸い物で〆る。
デザートは “甘酒のアイスクリーム” 、これがまたサッパリと、お膳の余韻を消すことなく、美味しいのだ。
食後は暖炉(もちろん火は無い)の傍で “芋焼酎ロック” を傾けながら、奥さんの弟氏のピアノに耳を傾ける。
Raindrops Keep Fallin' On My Head、The Long And Winding Road、リクエストに即興してくれた。
誰よりも早起きして露天風呂を独占する。中津川のせせらぎを聴きながら、いつまでも浸かっていたい。
そう深夜にもこの湯に浸かった。大自然の漆黒の闇の中、見上げる中天の天の川が美しかった。
7月にZで走った天空の湖･野反湖から流れ落ちるのがこの中津川だ。
河原をスコップで掘ると温泉が湧き出る。冷たい水を引き込んで調整、野趣溢れる露天風呂が楽しい。
テレビもエアコンもない秘境の湯宿。
大自然と掛け流しの湯とオーナー夫妻+弟氏のホスピタリーに癒された週末が愉し過ぎる。
季節をかえて訪ねたい温泉がまた一つ増えたのが嬉しいね。
＜40年前に街で流れたJ-POP＞
Go Away / 中原めいこ 1982
秘境宿、宿の名前も雪あかりなのですか？素敵ですね～お酒も雪あかり
私はちょっと足を運べない所のようです。
写真だけでも堪能出来て良かった～
スダチが採れる暖かな地方にお住まいなのですね。
信越国境の秘境はちょっと遠いですね。
この辺りは2,000m級の山に囲まれて、
冬は数メートルの積雪に閉じ込められる地域です。
そんな様子もいつかお届けできれば良いなぁ、と思っております。
コメントありがとうございます。
切明温泉には三度ほど行きました。
丁度、雑魚川と中津川の合流するあたりに三軒の温泉宿があり、雄川閣に泊まりました。10年ぐらい前の当時は村営の施設で、接客、食事などに問題がありました(現在は私営になったと聞いています)。リニューアルしたのでしょね、食事処もきれいになり、食事内容も改善されたようです。2度目は細い道路を挟んだ中津川の近くにあるリバーサイドホテルでした。3回目も同ホテルにお世話になりました。「雪明かり」は何度か外観を見に訪れましたが、宿泊に至りませんでした。
秋山郷はお気に入りの場所で、私は十日町方面から入り秋山郷の廃村の跡などを巡りながら、切明温泉に一泊し、翌日奥志賀高原へ抜けるコースを続けています。
猿飛橋や廃村跡では猿、熊、ニホンカモシカなどに遭遇しびっくりしましたが、こうした野生の動物の出現は秋山郷では珍しくないと土地の人はいう。
特に秋が美しい切明温泉から奥志賀へ抜ける道路は好きな道の一つです。例年11月20日過ぎには交通止めになってしまうので、80歳の私が自力で車で行けるのももう一回ぐらいかなと思います。
久々に秋山郷の情報を見て、懐かしさのあまりコメントさせていただきました。
ありがとうございました。
記事が懐かしい思い出を刺激いたしたのであれば光栄です。
私は車で奥志賀高原から雑魚川を走ったり、単車で紅葉の秋山郷に紛れ込んだりしましたが、切明温泉に泊まったのは初めてです。
宿は昔から3軒ですね、「雪明かり」だけが名称が替わっています。
代替わりなのか、人手に渡ったのかは分かりません。
とにかくオーナー夫妻と弟氏のホスピタリティーが素晴らしく、
私もこの地とこの湯宿のファンになりました。
また他の季節に訪ねてみようと思っております。