熊本から豊肥本線に乗って、スイッチバックで有名な立野駅にやってきた。
スイッチバックで山を越すのではなく、分岐する南阿蘇鉄道(旧高森線)を呑み潰す。
起点の立野駅は阿蘇カルデラを囲む外輪山の切れ目に在る。大きく身震いをして
走り始めた単行のレールバスはこの切れ目に潜り込んでいくのだ。
立野を出発早々息を呑む絶景に出会える。高さ58m、トレッスル橋なる構造の
立野橋梁は白川をひと跨ぎする。観光鉄道らしく乗務員は橋梁上で徐行してくれる。
単行のレールバスは、阿蘇五岳を左手に、外輪山を右手にすすきの原を往く。
お供は山村酒造の "阿蘇の酒れいざん" のワンカップ、南阿蘇鉄道がめざす高森町の酒、
宝暦12年(1762年)創業の老舗の酒蔵だ。"明太子さきいか" を摘みながらちびりちびり。
春の日差しに包まれて、昼間酒が旨い。
旅の醍醐味は阿蘇の山々の車窓、噴煙を上げているのが中岳(1506m)で、
ロープーウェイで登れる阿蘇観光の中心。現在は噴火警戒レベル2で入山規制中。
その右に最高峰の高岳(1592m)、一番奥のギザギザ頭が根子岳(1433m)だ。
南阿蘇鉄道の旅は進行方向右手に席を占めるとベストなのだ。
東へ東へと走ってきたレールバスは、見晴台駅を過ぎて長い直線の緩やかな勾配を登る。
やがて大きく左にカーブして、根子岳を正面に見て高森駅に終着する。
国鉄高森線の時代、高千穂線と結ばれて九州横断鉄道となる予定だった。
実現していたら観光特急が走っていただろうか。夢は車止めで遮られたままだ。
南阿蘇鉄道 立野~高森 17.7km 完乗
There's A Kind Of Hush / The Carpenters 1976