北投車站の第四月台(4番ホーム)に、トロピカルに化粧されたC371型電車がゆっくりと入ってきた。
この色調で短い編成がモソモソと動くのは、まるで芋虫を見るようである。
観光や通勤の需要が旺盛だけど、北投支線は騒音対策のため、運転速度25km/h、3両編成の制限がかかる。
中正紀念堂站から乗車した信義淡水線が、たまたま途中駅の北投止まりだった。
到着前の車内放送がどうやら乗換案内をしている。調べてみると短い支線があるようだ。
これは潰しておかないと。ってことで北投支線に乗り換えて、温泉リゾートに寄り道する。
トロピカルな3両編成は、窓にスモークを貼り付け、ガンガン冷房が効いて快適この上ない。
最後尾車両には “くまモン” みたいなのが居る。ほっぺは赤くない。これはセーフなのか?
とにかくこの台湾ツキノワグマのキャラクターは、子どもたちに大人気だった。
立派な高架複線の路線を4分かけて、芋虫は新北投站までの1.2キロを這っていく。
電車のドアが開くと満員の乗客をホームに溢れさせる。本当は6両を軽快に走らせたいところだろう。
新北投温泉は清代の末期に発見され、日本統治時代に開発された台湾を代表する温泉地。
温泉博物館に寄って、混浴の温泉浴池(水着着用)かホテルの立ち寄り湯に浸かっらた楽しいだろう。
かく言う呑み人は予定外の訪問で時間がなく、とりあえず涼しげなオブジェから親水公園を歩く。
途中、日本流のおもてなしを提供する日勝生加賀屋では、和服姿のお姐さんがお客様をお見送りしている。
親水公園の小径を登り切ると90℃の温泉が沸々と、硫黄の匂いを充満させ地獄谷が口を開けている。
翡翠に似た緑色の酸性泉は「青湯」と呼ばれ、新北投3つの源泉のうちの一つだ。
新北投站まで戻ると、駅舎に隣接する公園に日本式木造建築を見つけた。
屋根から突き出したドーマー窓、軒下の腕木の彫刻、なかなかお洒落な建造物は旧新北投駅。
どうやら台湾鉄道にも淡水線とそこから分岐する新北投支線があって、1988まで営業していたそうだ。
裏手に回ると客車2両分ほどのプラットホームが再現してあって、青い客車が留置されている。
オハ形式に似た鋼製客車は、スーベニアショップになっていて、自由に乗降しては往時を思い起こさせる。
今宵もホテルのある中山站まで戻ってから、食べておくべき “鴛鴦(おしどり)火鍋” で一杯。
唐辛子たっぷりの “辣香鍋” と 漢方香辛料で甘く仕立てた “白湯鍋” をハーフ&ハーフでいただく。
もはやお馴染みになった “台湾啤酒” で乾杯。これって鍋には合いそうだ。
先ずは “麺包豆腐” を双方の鍋に潜らせて味を見る。おっかなびっくりの辣香鍋もほどよい辛さで美味。
続いて “帆立” と “鮑魚” を放り込む。これは白湯鍋の方がいいね。
ビールを “台湾啤酒 生18” に変える。
豚ロースと魚のすり身は睡蓮菜を添えて、辣香に白湯にと交互に浸して美味しい。
猛暑の夏に冷房の効いた店で、ほどよく辛い火鍋を突いて啤酒を楽しむ。これまた一興なのだ。
駆け足で訪ねた短い短い新北投支線の旅。次に訪れる機会には投宿してゆっくり湯に浸かりたいものだ。
台北捷運 新北投支線 北投〜新北投 1.2km 完乗
<40年前に街で流れたJ-POP>
サヨナラは八月のララバイ / 吉川晃司 1984