警笛を鳴らして折り返し9時40分発の石狩当別行きの気動車がやってきた。
この列車、ここ新十津川駅の始発列車であり最終列車なのだ。
北海道新幹線開通で湧いたJR北海道、一方でローカル各線はリストラが進んだ。
そして札沼線の最端部、浦臼~新十津川間は1日1往復の運行となってしまった。
新十津川駅舎はこんな感じ、もう何年も余計な手はかかっていそうもない。
駅舎の軒下に『歓迎 ようこそ新十津川駅へ』の看板。地方の終着駅に生活の匂いはない。
降りる人、乗り込む人もマニアに限られる。今日は春の青春18きっぷ最終乗車日だ。
昨日訪ねた国稀酒造で仕込んでおいた "特別純米酒・国稀" のスクリューキャップを切る。
肴がコンビニ弁当とは味気ないが、石狩当別までの80分ほどをちびりちびりと楽しむ。
名前は知らないが、残雪の山を眺めながら往く。
写真はうまく撮れなかったけれど、泥濘んだ田圃には白鳥たちが遊んでいた。
何年か前に小樽港から富良野に向かう途中、750ccでこの辺りを走ったはずだ。
石狩当別はベットタウンに有りがちな瀟洒な駅だ。
気動車での運行はここまで、北海道医療大学駅以南は電車が走る。電車は6両編成。
学園都市線と称されるこの区間は札幌への通勤通学と沿線の大学によって需要がある。
あいの里教育大駅以南は複線となって、1日の運行は50往復を超える。
1日1往復の浦臼~新十津川間とはえらい違いだ。
さらに太平駅以南は高架線となった。
高速道路を跨ぎ、高層マンション群を抜けて、まるで首都圏と変わらない風景だ。
札沼線(学園都市線)の全列車は札幌発着。でも起点は桑園駅。その先は函館本線だ。
故に桑園駅で旅を終える。札幌へ向かう列車を見送ってから0キロポストを探す。
コンクリート基盤の高架駅には杭は見当たらない。代わりに壁面にプレートがあった。
1日1往復の北端区間、50往復を超える札幌近郊区間、相反する顔を持つ札沼線なのだ。
札沼線 新十津川~桑園 76.5km 完乗
翳りゆく部屋 / 荒井由実 1976