日本海に近い駅青海川、ホームに降りると目の前はすぐ海、ちょっと旧いけれどドラマ「高校教師」の
舞台になったよね。信越本線の吞み鉄旅、後半は「越乃shu*kura」で、それこそ日本酒列車で吞んで往く。
咲き誇る約4,000本のソメイヨシノと三重櫓がボンボリの灯りに照らされお堀に映し出されて美しい。
高田城は徳川家康の六男・松平忠輝公の居城として築城された。普請奉行は舅の伊達正宗だ。
忠輝は大坂夏の陣の遅参と大久保長安事件で異母兄秀忠に改易されてしまうが、75万石、親藩の統治が
続いていたら、高田は日本海側にあって、金沢に伍する文化と規模をもった都市になっていたも知れない。
懐かしい高田城址公園の夜桜を愛でたら、雁木通りの飲み屋街・仲町通りをぶらりと歩いてみる。
赴任中、何度となくお邪魔した寿司割烹の暖簾を潜ってみる。大将も奥さんもお変わりなく嬉しい。
地酒を飲みたいから生ビールは小、お通しはホタルイカ、ぜんまい、筍、器には春がいっぱいだ。
平目、甘エビ、やりいか等日本海の幸をお任せで盛ってもらう。
地酒は先ず "鮎正宗" から、ほのかに甘くまろやかな旨味のある、地元オヤジの定番の晩酌酒だ。
妙高市(新井)には3つの蔵があって鮎正宗酒造はそのひとつ、県内産の米と蔵下に湧き出る伏流水で醸す。
君の井酒造は、JR大人の休日倶楽部のCMで吉永小百合さんが訪ねている。
"越乃酔鬼" はやや辛口の定番酒は「冷やでよし燗でなおよし」のこれまた晩酌の酒、ここは涼冷えで美味しい。
巻物を抓みながら辛口を愉しんで "きのこ汁" で〆る。久しぶりの仲町の夜は静かに流れる。
2日目のスタートは10:18、ちょっとのんびりなのはお酒を愉しむリゾート列車「越乃shu*kura」に乗るから。
ディーゼルの音を響かせて、キハ40・48系からなる3両編成が妙高はねうまラインからやって来た。
地酒王国・新潟が誇る「酒」をコンセプトとした列車は、越後の酒蔵と豊かな自然をイメージして命名された。
1号車は食事つき旅行商品用のボックスシートと展望ペアシート、2号車は「蔵守~Kuramori~」が、
地酒やおつまみなどを販売するイベントスペース。ぼっち旅の吞み人は一般的な座席の3号車に席を占める。
駅前で駅弁山﨑屋の「二大将軍弁当」を求める。人気の "鱈めし" と "鮭めし" のハーフ&ハーフ。
棒鱈の甘露煮、塩たらこ、数の子、昆布飯にほぐした鮭といくら、どう見ても日本酒のアテでしょう。
酒は妙高三蔵のもうひとつ "千代の光" 越淡麗純米大吟醸、上品な香りにさわやかで深みのある味わいの酒だ。
そして「越乃shu*kura」は青海川で5分少々停車する。特急の通過待ちではなく観光停車なのだ。
下り線ホーム下まで届くかと思う波打ち際、冬の荒れたイメージから一転、青い日本海はどこまでも穏やか。
今日は水平線に佐渡ヶ島が浮いているように見える。かなりの大きさのだ。
「越乃shu*kura」車両の藍下黒(あいしたぐろ)、なるほどこの日本海の深い藍かと妙に納得できてしまう。
折り返して上越線・飯山線を十日町へ向かう「越乃shu*kura」とはここ長岡駅でお別れになる。
コンコースから1階広場に降りると「三尺玉の打ち上げ筒」モニュメント、長岡は花火の町としても有名だ。
信越本線の旅のアンカーはE129系という新型電車、降雪時でも目立つようにと伝統の派手なカラーリング。
帯は黄金色・朱鷺(とき)色、稲穂をもたげる実りの秋と群れ飛ぶ朱鷺を想像させる新潟らしい色だ。
このE129系は1両のうち半分に4区画のボックスシートを配している、これは吞む旅人には嬉しい配慮だ。
駅ビルの「ぽんしゅ館」で求めたのは "厳選辛口 吉乃川"、なかなかスッキリとした辛口の酒。
早速ワンカップを開け、青しそ入りのひとくち蒲鉾をアテにグビり。高校生が乗ってくる前に愉しんでおこう。
新潟までの所要は1時間20分、途中の東三条・加茂辺りから下校の高校生を満載して首都圏近郊なみの混雑だ。
ぽんしゅの匂いは残ってる?ちょっと気がかりな吞み人を乗せた451Mは16:50、高架化なった新潟駅に滑り込む。
夕闇迫る万代橋にランプが灯り始める。信越本線の旅に付き合ってくれた信濃川(長野県内では千曲川)もまた、
この橋の先で日本海に注ぎ、甲武信ヶ岳に滴を発して367km、日本で一番長い川の旅を終えるのだ。
信越本線 高崎~横川 29.7km
しなの鉄道線 軽井沢~篠ノ井 65.1km
信越本線 篠ノ井~長野 9.3km
北しなの線 長野~妙高高原 37.3km
妙高はねうまライン 妙高高原~直江津 37.7km
信越本線 直江津~新潟 136.3km 完乗
長い夜 / 松山千春 1981