日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

短刀 長谷部國信 Kuninobu Tanto

2016-04-19 | 短刀
短刀 長谷部國信


短刀 長谷部國信

 南北朝時代の京都において活躍した刀工で、相州に学んだのがこの國信と兄の國重。國重は「へしきり長谷部」で良く知られているが、長いものは少なく、専ら、主に今で言う脇差ほどの得物を製作していた。國信の方が長い太刀を多く遺しており、兄弟間の技術力に差はなかったようだ。とにかく沸を強めた作風に特徴があり、凄い。皆焼出来には網目のような焼刃構成もある。この短刀は比較的穏やかな刃文構成であり、湾れを主調とした中に沸が強く配合されたもので、品位が高い。おとなしくて面白味がないのでは?と感じるかもしれないが、仔細に観察すると、刃中には沸筋が幾重にも流れ掛かり、これが刃先に至るまで濃淡変化しつつ連続しているもので、皆焼出来が良いとは言えないことが判る。凄みのある地鉄も見どころ。板目が強く、地景が蠢くように入り組み、地沸はもちろんだが、淡い飛焼、湯走りも淡く入るなど、ここに凄みの根源が読み取れる。とにかく貴重な在銘作であり、沸を強調しながらも品位を落とさない工夫を凝らした相州物の際立った美観が楽しめる作である。□