日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 備中守康廣 Yasuhiro Katana

2017-03-08 | 
刀 備中守康廣


刀 備中守康廣

 備中守康廣は、大坂石堂と呼ばれる江戸時代前期に備前伝を得意とした刀工集団の代表格。出は紀伊国であり、紀州石堂の呼称もある。この刀も高低変化に富んだ互の目に小丁子が密に連なる刃文構成で、小足、飛足が盛んに入り、鎌倉時代中期の備前古作を手本にしたことが良く判る。帽子はわずかに乱れ込んで掃き掛けており、古調を示している。地鉄は地景を伴う小板目鍛えに縮緬状に杢や板目が入って肌目が強く現れているとともに、丁子風の映りが淡く立っている。鎌倉時代の焼刃を求めながらも、刀の姿格好は江戸時代前期の、腰に帯びて安定感のあるもの。簡単に説明してしまったが、小丁子が密集し、焼頭が高低変化しながら連続し、しかも小丁子の寄り合う様子は複雑で繊細。鎌倉時代のあまり揃わない構成の方が自然味があって良いという人もあろうが、江戸時代の完成されたこのような美観もいい。澄んだ刃中に射す無数の足と宙を舞う飛足の動きのある働きも大きな見どころ。江戸時代の作と鎌倉時代の作を並べて比較するものではないが、こうして優品を鑑賞すると、江戸時代の技術の確かさを改めて思い知らされることになる。良いものは、時代など無関係に良いのだ。