▲映画MINAMATA
ユージンスミス、この映画以前に日本で彼の名前を知っていたのは、還暦マイナス5歳、プラス20歳くらいの年齢で、高校か大学の時に白黒フィルムの現像・プリントを自分でやっていた写真大好き男子がほとんどと思います。
かくいう私もその一人、大学生の時に見たユージンスミスのオリジナルプリントの綺麗さに、衝撃を受けた覚えがあります。
さて、本作は偉大なる報道カメラマンとしてのユージンスミスの人となりを知らなくても楽しめるように、彼にまつわるエピソードを巧みに散りばめ、ユージンスミスなる人物がどういう人なのか、聖人君子でないことさえわかるようになっています。
水俣に来てからのシーンでは、現実にあった話か、演出上の虚構なのか判然としないストーリー展開が良かったです。(さすがに実際は放火まではしなかったようですが)
被害者との交流も、ジーンと心を打ちます。
すっかり忘れていましたが、チッソは水俣病の原因を早くから特定していながら隠蔽し、15〜16年間も水銀をたれ流し続けていて、日本政府もチッソが巨大化学メーカーであるゆえにそれを黙認してきた、という現実があったわけです。
正直、鑑賞を終わっての爽快感は皆無ですし、当時をかすかにでも知る世代にとっては、なにやら苦い思い出が蘇ってくるように感じてしまいます。
それでもジョニーデップや真田広之をはじめ出演者の熱演もあり、やはり見にきて良かったとしみじみ思える素晴らしい映画に仕上がっていました。
最近では、もはや水俣病患者あるいは”公害”の被害者は、日本中から姿を消したように漠然と感じていましたが、エンドロールでそうでないことが示されます。
(ただ、福島第1原発の事件は水俣病とはえらく違うぞ、という違和感は感じました。)
昭和の写真男子向けの映画ではありますが、ショッキングな水俣病患者の様子は凄まじいくらいリアリティがあり、鑑賞するにあたってはある程度の覚悟は必要かもしれません。
ですが、それでも鑑賞をお勧めします。見たことを後悔するような映画ではありません。