GWのはじめには新潟に出かけてきた。主なねらいはラ・フォル・ジュルネ新潟。
作曲家、そしてピアニストである加羽沢美濃さんのソロコンサートがあったら聴いてみたいと思っていたところ、新潟のラ・フォル・ジュルネで演奏されるとのこと、ソロ活動が最近は少なく近くに来られることはまずないだろうという気持ちになっていた矢先にこの機会、新潟は富山からは決して近いとはいえないのだけれど、それでもお隣の県、足を運ぶのに絶好のチャンスだと思い向かうことにした。
新潟りゅーとぴあのコンサートホール、客席が舞台を囲むようになっていてまるで劇場のよう、それでありながらパイプオルガンも設置してあり、かなり豪華なホールに感じた。客席は人でいっぱいだった。
加羽沢さん、さっそうと舞台袖から登場しくるみ割り人形の「花のワルツ」を演奏、たちまち会場が華やかな雰囲気になった。
花のワルツの次はレスピーギ作曲の「リュートのための古風な舞曲とアリア」のシチリアーノだったのだが、演奏前に、長調と短調の解説を実例を挙げながら解説された。シチリアーノは短調の例として挙げられたのだが、曲の中での和音進行が長調になったり短調になったりと揺らぎがあるという話もされた。イタリアのシチリア半島が起源でためらいがちにたゆとう曲想と付点リズムが印象的、なるほど勉強になった!有難い♪
ゆったりと哀愁の感じられるシチリアーノ、和音の表情の変化が手に取るように感じられた。
次はカッチーニ作曲と言われる「アヴェ・マリア」。らららクラシックでも演奏されていたのを思い出した。作曲者は実はカッチーニではなくて本当はリュート奏者のヴァヴィロフだということだが、ヴァヴィロフは自分の名前を伏せていたとのこと、おかげですっかりカッチーニ作曲と伝わってしまい、加羽沢さんもずっとそのようにとらえられていたとのことだが、最も好きなアヴェ・マリアだと言われていた。舞台いっぱいに、天から舞い降りたような演奏が広がっていた。
次は加羽沢さんご本人作曲による24のプレリュードから第13番「変拍子の踊り」、第18番「炎の舞」。24のプレリュードはショパンのプレリュードに習い、24ある調性をすべて用いたという。第13番、4分の5拍子や4分の7拍子、独特の拍子感が印象的だった。第18番、西洋音楽のルールから自由になった5度の音程が印象的、音がはじけ、エネルギーが感じられた。
その後、観客からリクエストを募られた。リクエストに出てきた曲をその場でアレンジしてメドレーにするとのこと、コンサートでもされていたという。神田川、イエスタディ、美女と野獣、ミッキーマウスというリクエストが出た。しんみりした曲から華やいだ曲へ、どのようにアレンジし、どのように曲と曲との間をつなげられるのだろう。考えただけでも難しそうな気がしたのだが、加羽沢さんは魔法使いのように、すべての曲をまるでもともとピアノ曲として存在したかのようにアレンジし、繋ぎの部分もエレガントに繋げられ、そのときその場で誕生したてのほやほやのリクエストメドレーを披露された。すごいなあとため息をついていたら、本人も自分のことを茶目っ気ありながらも「天才ですから」と言われていた。自信をお持ちだったのだ、けれどもまさにそのお言葉通り、演奏で裏付けもなさっているし、ただただ感嘆するばかりだった。
ボロディン作曲のだったん人の踊りがプログラム最後の曲。科学者でもあり、日曜日の作曲家だったと言われるボロディンによる優美でうっとりするようなバレエ音楽、さらに優美に、そしてさらにきらきらと華麗なアレンジと演奏で、会場を夢の世界へと誘ってくれた。
アンコールに新潟への想いを込めた即興の音楽を演奏されて幕を閉じた。
それにしてもお話たっぷり演奏たっぷり、そして想像を越えてエネルギッシュでハイテンション、作曲家兼ピアニストとして活躍するために乗り越えられたものも数多くおありだっただろう。演奏と共に、潔く逞しい生きざまにも心打たれるものがあった。