礒山雅先生と言えばバッハやバロック時代の音楽という印象があるが、実は礒山先生がバッハを好きになられたのは大学浪人の頃で、それまではロマン派音楽に傾倒していたという。なんと「バロック音楽は心がない」と思うという文章を文集に書かれていたことがあったそうだ。そこて都合よく何かを思い出した私 ^^;演奏面でも、例えばバッハや古典派の音楽を弾くときには感情のこめ方のさじ加減が難しく(それらの音楽にも感情がたっぷり込められていると思うのです、ただ、それを演奏者が前面に出すということについて配慮がいるというか)、演奏の難しさを感じるのだが、礒山先生も方向は違うものの同じような感想を抱かれていたことがあったのかと親近感がわいたのだった。
ところが礒山先生は、カンタータBWV78『イエスよ、あなたは私の魂を』を聴いてバッハの音楽が人間の「生きる」ということにいかに密接に関わっているかを実感し、バッハの音楽への見方が大いに変わったという。あの礒山先生を一回転させたという運命の一曲、これはぜひ聴かねばならないと思いyoutubeを通してなのだが聴いてみた。フィリップ・ヘレヴェッヘの指揮による演奏。
出だしのコラール合唱『イエスよ、汝わが魂を』から泣けてくる。しかし第2曲 二重唱『われは急ぐ』でのびやかに。そして礒山先生の心に電流のように訴えかけてきたという第3曲レチタティーヴォ『ああ、われ罪の子』のせつせつとしたテノール。。。ただならぬ雰囲気、念がこもっている。第4曲アリア『わが咎を消し去る御血潮』へと続く過程も印象的。つたない感想ですみません。感想はつたないけれど、曲の魅力はたっぷり味わえている。
好きなバッハだが、好きな曲があるロ短調ミサやマタイ受難曲以外はカンタータには苦手意識を持っていた。なかなか実感をもって捉えることができにくいのか、意味を分かろうとした途端ハードルを感じることもあるのだが、これからはもっと耳を傾けたいと思うようになっている。
ここで紹介するのは図々しいかもしれませんが、尊敬の念を込めて、礒山先生のブログ「I招聘教授の談話室」です。いつも楽しみに読んでいました。
それから昨日も書いた「古楽の楽しみ」という番組で、礒山先生のアンコール放送を3月12日〜16日に予定しているそうです。
晴れ間も見えてきて春の足音が聴こえ始めているこの頃、私も再始動しなくちゃ。