今朝の新聞に、一面をまるごと使って、高村薫のルポルタージュ記事が! 「21世紀の空海」と題された記事は、作家が「空海ゆかりの地や東日本大震災の被災地を僧侶たちと歩き、空海の実像に迫り、日本の祈りを描く」という趣旨のもので、これからも続けられるらしい。
それにしても、震災の跡地を自身の目で見て歩き、歴史上最大の宗教者と結びつけて、思索を巡らすなど、さすがは高村薫! 尊敬し、その見識と人生観に深い信頼を寄せられる作家を持つということは、本当に幸せなことである。
被災地には、今も荒涼たる光景が広がっているという。 放射能がまきちらされているはずの福島の地を、恐れることなく歩き、寺院を訪れる作家。 紙面には、一枚の感動的な写真が大写しで写しだされている。 道端に設けられた慰霊台とその横に立ち尽くす高村薫--吹き付ける冷たい風が感じられるばかりに、コートの前をかきあわせ、かすかに眉をひそめる表情・・・ここには、深く心を打つものがある。 作家の内面が、不意にむき出しにされた決定的な瞬間といえばいいのか・・・。
岩手県の仮設住宅には、山伏が法螺貝を吹き、僧侶たちがお経をあげる。どんな状況にあっても、信仰は慰めとなり、民衆には祈るしか手立てがないのかもしれない。
日本史上に、高峰のようにそびえたつ空海。密教思想を日本に紹介し、高野山に寺院を開き、さまざまな「弘法大師」伝説をも生んだ。彼が、この被災地の惨状を見たら、何と言ったであろう?