ガルシア・マルケスが17日、亡くなった。 「百年の孤独」などの作品で知られる南米コロンビアのノーベル賞作家である。
認知症を患い、執筆することもなくなったなど、健康状態が悪化していたのは知っていたのだが、「あのマルケスがとうとう・・・」と思うと何ともいえない空白が、心にきざしてしまう。
彼は、単にノーベル賞作家というだけでなく、その重要度、読者数の多さ、世界文学に果たした影響力の大きさからして、アメリカのヘミングウェイに匹敵する大作家だったと思う。私も若い頃、彼の作品を幾つも読み、本棚には「百年の孤独」はもとより、「予告された殺人の記録」「コレラの時代の愛」など数冊の作品がある。そして、読む時はまあまあ面白くても、読んだ後は忘れてしまい、内容など霧の中へ・・・という作品・作家が圧倒的なのに、マルケスの作品は読後長い時間がたってもくっきり、思い出される。
そして、物語が素晴らしく面白い! 上品で格調高いけれど、面白さはいまいちなどというものでなく、南米の奔放さ・猥雑が作品からみなぎり、カーニバルのごとき祝祭を思わせるのだ。 「百年の孤独」は、ある一族の百年の歴史を物語る壮大なスケールもさることながら、最後叔母・甥の禁じられた結びつきが生まれた途端、架空の町、マコンドがそっくり消滅してしまうという、衝撃的・鮮やかな幕切れ--、今も脳裏に焼き付いている。
でも、私が一番好きなのは「コレラの時代の愛」。一度は婚約までしながら、彼女の心変わりによって破綻したはずの愛を、ずっと感じ続け、彼女を追い続ける一人の男。 やがて歳月は流れ、彼女も孫までいる女性になっているのだが、その夫が死に、男ももう一度、彼女の愛を取り戻すことができる――これも最後、二人がアマゾン川に船旅に行くシーンがくっきり印象に残っている。
その奔放な想像力、魔術を思わせるストーリーテラーぶりで、世界の読者を魅了したマルケス。私も、その南米の熱気やむせるような灼熱の空気を、もう一度深く味わってみたいと思う。