小沢氏の初公判が6日でしょう。
そろそろ小沢から脱却するときではないでしょうか?
検察内部に亀裂…なぜ小沢捜査が評価されなかったのか
2011年10月4日(火)08:00 産経新聞
【剛腕出廷 裁かれる小沢被告】(中)「関与こそ事件の本質」
「証拠改竄(かいざん)事件以来のよどんだ空気が、これで一掃される」
9月26日。小沢一郎(69)の元秘書3人に対する判決公判で“満額回答”を得た検察内部には久々に笑顔が戻った。
約2カ月前の8月、組織の空気は対照的だった。小沢捜査の中心的存在だった捜査幹部が辞職し、もう一人は本来のルートを外れ、法務省の出先機関に異動となった。2人とも将来を嘱望された検事だっただけに、「小沢捜査への責任を取らされたのではないか」との臆測も広がった。
なぜ、小沢捜査は検察内で評価されなかったのか。平成21年3月の西松建設違法献金事件から22年1月の陸山会土地購入事件まで約1年続いた捜査では常に激しい意見の対立があった。
「なんということだ!」
21年12月28日夕。仕事納めだったこの日、東京地検特捜部では、怒りに震える捜査幹部の姿があった。
特捜部は年明け早々に元秘書の石川知裕(38)を逮捕し、その後、小沢へと“本丸捜査”を進めるつもりでいた。だが最高検から突如「石川の逮捕は駄目だ。在宅起訴にするように」と指示が下りてきたのだ。石川の在宅起訴は共犯として告発されている小沢本人の不起訴を意味する。
「小沢の指示もなく、元秘書らの独断で何億もの資金を動かせるはずはない。小沢の関与こそ事件の本質だ」。そう考える特捜部幹部らの怒りはすさまじく、見かねた最高検の幹部が取りなしたほどだった。結局、石川らは年が明けた22年1月15日に逮捕された。捜査は2週間あまりで方針が一変したのだ。
「積極派の捜査幹部が総長に辞表を突きつけた」
検察内部でこんな噂が駆けめぐった。
「実は国会議員の職務権限は狭く、贈収賄はほとんど成立しない。だからこそ政治資金の透明化を趣旨とした政治資金規正法は重要だ」。“積極派”は小沢捜査の意義を強調する。
一方、“消極派”の考え方はこうだ。多忙な政治家は政治資金収支報告書を逐一チェックできないため、規正法は政治団体の会計担当者の責任を問う法律となっている。政治家本人を担当者の「共犯」として立件する場合は、明確な動機や関与の証拠が必要となる。
小沢逮捕の条件は「ゼネコンからの裏献金」だった。裏献金を隠す目的ならば小沢の動機が明確となる-。だが、元秘書らは裏献金提供についてかたくなに認めなかった。
小沢を不起訴にした後も、意見の対立は続いた。
「なぜ、検察審査会で小沢が強制起訴されるように考えては駄目なのか」
捜査幹部の一人は会議で公然と発言し、「小沢、小沢と一生懸命になりすぎだ」と首脳らから怒りを買う結果になった。
検察の捜査手法などの問題がクローズアップされた事件としては昨年9月に発覚した郵便不正事件をめぐる証拠改竄事件が記憶に新しい。だが、同時期に進められた小沢捜査でも、内部に亀裂が生じていた実態が浮かぶ。組織は今、大転換期にある。特捜事件にも試験的に取り調べの録音・録画(可視化)が導入され、「独自捜査縮小」の体制改革も進む。その過程で失ったものは少なくない。
「特捜検事には社会の不正は絶対許せないという極端な執着心を持つことも必要だが、今の検察はそういう検事を置く余裕がない」。法務省幹部は嘆く。
裁判所にも変化が見られる。元秘書公判では有罪としたが、「取り調べに威圧、誘導があった」と調書を大量却下した。法曹関係者は「これまで裁判所は検察の証拠に頼って事実認定を行ってきた。今回の調書却下はこれまでの反省の側面もあるのでは。両者の“距離感”が変わり、法廷証言などを重視する流れができつつある」と指摘する。
陸山会事件と郵便不正事件を経て、刑事司法のあり方が変わろうとしている。(敬称略)