
トキの島では合歓の木の花が艶やかなピンクの花を満開に咲かせていた。トキ、トキと言う割りに本物の朱鷺を見ることは保護センターのゲージの中・・というのが現実。今回の帰省でも、空を飛ぶ2羽の白い鳥に車を止め、見上げたがただのサギだった。
「合歓の木」はマメ科の落葉高木。ネムノキ科として独立させる見方もある。日当たりの良い川沿いや道路脇などに、枝先にピンクの艶やかな花を付けた姿が良く目立つ。花期は7-8月上旬。花の部分は径が3-4センチあり、枝先に集まり次々と開花するようだ。木が大きいと花の部分が浮き上がっているようにみえる。調べて見ると、糸状というか女性が化粧に使うフワフワした刷毛のような部分は、花弁ではなくオシベなのだそうだ。花には桃に似た甘い香りがあると言う。
中国ではネムの花を生薬として用いる。精神安定剤や不眠解消などに効果があるとか。樹皮には担任が含まれており打撲傷などに効用があるらしい。「象潟(きさかた)や 雨に西施(せいし)が ネブの花」(芭蕉) ※西施は傾国の美女と言われる中国の美人。
「女神山」(590M)から「男神山」(482M)。トキの島の本土側とロシア側の2つの山脈、それに挟まれた国仲平野で構成されている。女神山は帰省するたびに山野草を求めて歩く場所。今回は隣にある男神山まで足を伸ばした。女神の山頂から往復で40分ほどだったが、山頂直下に「三助」を祭った小さな祠があった。
昔々のお話。津軽の十三湖に三助という男の子がいた。父の名は又兵衛。継母に疎まれ「遠い島に捨ててきておくれ」と言われた又兵衛は、舟に三助を乗せて海に流してしまう。舟には誰にもわからない様に“実の母が乗せてくれた鍬と鎌”があった。
三助は運良く、トキの島の松ヶ崎と言う場所(男神山の麓の小さな漁港)に漂着。ここで能登から流されてきた早苗と言う女性と出会う。実の母が与えてくれた鍬と鎌で田を起こし、二人で力をあわせ働き米を作った。
初めてできた米に「十三三助」、次の年にできたものに「加賀早苗」と名付けた。島に初めて米を伝えた神として三助は「男神山」、早苗が「女神山」となって今も見守っている。おしまい。