すばるに恋して∞に堕ちて

新たに。また1から始めてみようかと。

STORY.10 あとがき & おまけ

2008-11-27 19:35:50 | 小説
あとがき、でございます。

ああ、長かった。
お付き合いくださった方、ありがとうございました。

自分でも、打ち込んでて、こんなに長くなるなんて思ってもなかったんです。

書き溜めた元の原稿はあるんですけど、
ちょいちょい言い回しを書き直したりしたもんだから、
時間もとってしまったし。

このお話、
書き始めるときは、二人は別れる方向だったんです。
そのつもりで、話を組んでたし。

でも、なんか、違う方向、違う方向にいってしまって。

ああ、また、主人公が、
特に、彼の方が、勝手に動き出しちゃったなって((笑
物書きとしては、致命的ですよね。
予定どおりに、話を作れないなんて。

そんなわけで、

ちょっと、補足的なおまけを、続きで。

待ち合わせの場所に向かう車の中での、
彼の、ひとりごと、です。



おまけ

やばい、やばい、やばいっ!!

あかんがな、遅れとる。
約束の時間から、もう一時間以上も過ぎてるやん。

なんでこんなに道が混んでんねん。
さっきから、ちっとも前に進まへんやんけ。

あ、クリスマスやからか。

どないする?
もう、待ってへんのと、違うかな。
オレ、時間過ぎたら帰れ、言うたしな。

大体、なんで、今日みたいな日に会いたがるねん。

今日が最終日やねんから、終わりが延びるくらいのこと、
想像出来るやろ、っちゅうねん。

はけて、ソッコー、シャワー浴びて、着替えて出ても、この時間やねんぞ。

まあ、普段から、そうは我儘も言わん、あいつのことやから、
こっちも安心して仕事も出来るし、羽根も伸ばせるんやけど。

ほんでも、
今日の約束するときは、ちょっと、様子が違った気、するんだよな。

クリスマスって行事は、女にとって、そんなに大事なんかな。

別に、ただの、キリストさんの誕生日やろ?
仏教徒には、関係あらへんのと違うか?

浮かれすぎやねん、どいつもこいつも。

まあ、そういうオレも、あいつにプレゼントなんか、
いっちょまえに用意もしたけど、やな。

気に入るかな。

ブランドもんとかとちゃうし、
石、偽モンの、安っすいヤツやしな。

けど、これ見つけたとき、
真っ先に、あいつの顔、浮かんだからな。
似合うやろなあ、思うて。

これ、買うんに、どんだけ勇気がいったか、
考えてほしいわ。

店員さんに、『これ下さい』が言えんと、
延々、一時間も、店ん中、うろうろして。
見ようによっては、不審者やん、オレ。

結局、一回店出て、気を落ち着けて、
勇気振り絞って、もう一回、行ったんやから。

そうまでしてでも、
あいつに、これ、買ってやりたかったんは、なんでやろ。

クリスマスのせいか?
店員さんに頼んで、
そばにあった、ディスプレー用の、
小っちゃな、サンタのろうそくまで、中に入れてもろうて。

オレも、浮かれてんのか?

ちゃうわ。
絶対、浮かれてんのと、ちゃう。

せやって、クリスマスやから買うたんとちゃうもん。

いやいや、サンタは、クリスマスやけども、や。

サンタは、口実や。

あいつの喜ぶ顔、見たかっただけやねんな、きっと。

最近忙しくて、ろくに会えてもないし。
電話やって、メールやって、
疲れてると面倒で、
愛想もないもんばっかし返してた気、するからや。

あいつ放っといて、後輩とばっかし、ツルんで遊んでたから、
淋しがらせてるんは、判ってんねんけど。
自由にさせてほしいって、
どうしても、思ってしまうねん。

あいつに甘えてるんやろな、きっと。

アカンよなあ。
そんな甘え方、通じんよなあ。
判ってくれ、言う方が、無理があるよなあ。

普通、甘えんのは、女の特権やからな。

あ、そういえば。
あいつが甘えんの、あんまり、見たことないわ。

そのせいかな。
あいつやったら、どんな無理も、ムチャも、やんちゃも、
許してくれるような気になってるんやろな。

あいつやったら、オレが自由に息できる場所、
作って、待っててくれてる気がすんねん。

そうや。
今日は、ちゃんと、あいつを甘えさせてやらんと。

そのために、無理してでも、時間作ったろって思ったんやから。

まだ、待ってる、かな。
待ってるよな、きっと。

頼むから、待っててくれよ。

オレ、
おまえのこと、
好きやからな。

ずっと、そばにいてくれよな。





                       FIN.

STORY.10 Holly Night epilogue

2008-11-27 14:40:13 | 小説
やっと、10話の終わりが見えてきました。

エピローグになります。

あと、ひといき。

よろしければ、続きでどうぞ。
ベンチで寄り添っていた二人の時間の、
沈黙を破ったのは、彼の方だった。

「もう、ええかな」

時計を見ながら、彼が、私の手を握った。

「行こ。そろそろ、ええ時間やから」

立ち上がった彼は、私の手を引っ張るように、歩き出した。


公園を突っ切って、住宅街の狭い路地へ入って行く。


家々のイルミネーションが輝いて、暖かな団欒を描き出している。

明日になれば、また、
新しい年を迎えるための準備に変わるのだろう。



「ああ、ここや、ここ」



教会・・・・・・?



「入ろ」

「え、だって、勝手に・・・」

「大丈夫、ここな、毎年、昨日と今日だけは、一晩中開いてるんや」

なんで、そんなこと、知ってるの?

不思議そうな顔をしている私を促すように、彼は扉を開け、
中に入った。

「この時間には、もう、誰も、いなくなるからな」


彼は、入り口で戸惑う私に、手招きをした。

私はゆっくりと彼に近づく。

それでも、ヒールの音が、静かな暗闇の中に響く。

天窓から差し込む月あかりが彼にあたり、
まるでスポットライトを浴びているかのようだ。


正面の十字架の前。

「永遠なんて、よう、誓われへんけど、これがオレの今の気持ち。
 受け取ってくれたら、うれしいんやけど」

彼がポケットから取り出したのは、小さな紙包み。

細くて赤いリボンをほどくと、中から、小さなサンタのろうそく。
クリスマスケーキに乗ってるような。

そして、そのサンタと一緒に・・・。

「これ、ピアス・・・?」

シルバーの星の形に、光る小さなクリスタル。

「あのな、ごめんな。
 最初に言うとくわ。その石、な、偽モンやねん。
 今のオレでは、それが精一杯やった。
 いつか、もっと、高価なヤツ、プレゼントしたるから」

クリスマスなんて       そう言っていた彼が用意してくれた、
私のためのプレゼント。

これを、どんな顔して選んだのだろう。
店員さんに、なんて言って包んでもらったんだろう。

「ありがとう」

これを買う時の彼の様子を想像して、気持ちが和む。
自然と、笑顔がこぼれる。

ホントは、高価なものなんて、なにもいらない。

私は、もうなにより高価な星、
私だけの、光る【星】を手に入れたのだから。

今は小さくて、
輝き始めたばかりの【星】。

いつか手の届かないところへ行ってしまうかもしれない、
その【星】は、
だけど、
今は、私の手の中にある。



見上げた私の顔を見て、彼が微笑った。

「やっぱり、おまえには、その顔が一番似合ってる」

言った彼も、とても優しい表情をしていた