昨日の続きから。
後編の前に、少しだけ。
このお話には、続編・・・というか、対になってるお話があるので、
出来れば、間をおかず、
今週中に、UPしたいなあと、思ってます。
よろしければ、そちらもお付き合いくださいませ。
では、後編。
オカンから送られて来た画像を見ながらの、
彼の独白・・・と、
おまけの締めです。
続きから、どうぞ。
この仕事始めたんが、
そもそもの別れの始まりやったんかもしれん。
地元と仕事場と、
行ったり来たりしながら、
それでも最初のうちは、地元で、みんなで、遊ぶ余裕もあった。
彼女にしたって、
高校入って、新しい環境で頑張ってたし。
なかなか会える時間が少なくなってることに、
オレは気付かへんくらいやった。
けど。
彼女にしたら、違ったんやな。
電話の向こうで、
「寂しい」って、泣くことが多くなった。
泣かれても、
オレは、すぐに彼女のそばには戻れない。
距離的なこともそうやけど、
彼女と付き合うより、
やりたいことが、いっぱいあった。
苦しいことも無論あったけど、
あの頃は、まだ、
目新しいおもちゃを手に入れたガキと、おんなじ気分やった。
それが、
のちのち、オレ自身を追い込んでいく元凶だとは、
これっぽっちも、気付いてへんかった。
彼女には、オレ以外のとこに興味を見つけて、
ほんまにやりたいこと、探して、夢中になって、
輝いていてほしかったんや、と、思う。
それが、オレの刺激になって、
より、上を目指す原動力になる。
お互いが大切にするもんが違うからこそ、
相手を思いやる気持ちが生まれる。
二人っきりでいたら、
恥ずかしくなるくらいに甘い時間やって、
どんなふうにでも過ごせるけど、
でも、
それが、いつも、いつもになったら、
その時間が、いかに大切なもんか、
見失ってしまうだろう。
二人で過ごす時間の温かさを、
独りで戦う瞬間を生き抜くための力にするために。
お互いに、
離れていることも必要なんやって、
本気で、
そう、思ってた。
今でも、基本的なとこは、変わってない。
だから、
未だに、本気の恋ってヤツを知らへんのかも、わからん。
かわいいなぁとか、
ええ女やなぁ、色っぽいなぁとか、
男やから、そんなん、四六時中、考えへんことは、ない。
頭ん中、そんなんばっかの時やって、あるけど。
でも、
それは、恋とか愛とかってもんとは、別ものや。
けど、
彼女にしたら、
それこそが、理解出来へんことやったんやな。
一般論としては、きっと、分かってたと思うねん。
せやけど、
それが自分の彼氏のことになったら、
話は別になりよるから、
だんだん、ケンカする回数も増えた。
泣いたり、
怒ったり、
彼女の感情の起伏が激しくなるのを、
オレは、どうすることも出来へんかった。
どんづまり。
行くも、戻るも、
手の施しようがないように思えた。
どっちみち、
結論は出さなアカン時期やった。
だんだん、仕事をやらせてもらえるようにもなって、
地元には、なかなか、戻られへんようにもなった。
これ以上、宙ぶらりんのまま、彼女を放っておくのは、
互いのためにも良くない、とは思ってた。
しゃしゃり出て来たんは、互いのオカンやった。
ほんま、あの時は、
いらん世話焼くなや、って、怒ったけど。
『おまえ、小っちゃいんは、背だけにしときや』
『逃げんと、ちゃんと向き合って、結論出すんも、男の役目やで』
『男と女のことやさかい、どっちが悪いとは、決められんかもしらん』
『でも、な。
あのコ、ひとりにして、寂しい思いさせて、泣かせたのは、おまえやで』
『小っさい頃から、おまえのことだけ追いかけてたコを捨てるんやから、
それなり、覚悟はしとるやんなぁ』
分かってること、念押されると、腹立つわあ。
『ま、おまえらが別れることになったかて、
お母ちゃんらの友情には、なんの関係もないけど』
最後のひとこと、余計やろ。
誰が、オカンらの心配までするか!!
ただ、
全部のこと、
オレのわがままやってことだけ、真実やったから、
誰に何言われても、反論のしようのないことやった。
彼女は。
もう、アカンってこと、
本当は、とっくに、分かってたんやと、思う。
オレのこと、好きやったんは確かかもしれん。
でもそれは、
恋に恋したかった時期に、
一番身近に、オレがおったっていうだけのことだったのかもしれん。
小さい時から、オレのもんだった彼女を、
他のヤツに渡すんが悔しかっただけの、
オレの独占欲が、彼女を苦しめただけ。
「ひどいこと、言うかもしれんけど・・・。
オレら、もう、これ以上は、無理・・・だよ、な・・・。
オレは、オレのやりたいこと、見つけた。
これからも、やってみたいねん。
寂しいって泣かれても、
会いたいって、我儘言われても、
オレは、おまえのそばにいてやれん。
すぐに戻っても来れん。
普通の恋人同士のようなんは、これから、もっと、無理になる。
オレ、おまえのこと、好きやった。
小さい時から、ずっと、おまえがそばにいたからな。
今さら、他のヤツに、おまえ渡すのかと思ったら、気が狂いそうにもなる。
せやけど、
この仕事、選んだからには、ずっと、このままって訳にはいかん。
我慢ばっかりさせんのは、オレもシンドイ。
おまえの気持ちが、オレから離れて、
他のヤツ好きになってくんを見るくらいやったら・・・。
ここらで、ちゃんと、終わらせよ。
もう、
二人では、会われへん」
言ってることは、支離滅裂やったかもしれん。
自分でも、何を言ってるか、
途中で分からんようになってきてた。
言葉の持つ重みを、実感してた。
オレの話を、
下を向いてじっと、聞いていた彼女は、
もう、泣くことすら、しなかった。
その代わり、
最後の別れ際、彼女は、言った。
『隣の、ちぃ兄のこと、応援してるんは、かまわへん?
ファン第一号やもん』
まだ、ちぃ兄の位置には、
オレを置いといてくれるんや・・・・・・
そんなことを、思い出した。
どこかで、突然、機械的なメロディーが鳴る。
なんで《ドラゴンボール》やねん。
おっかしいやろ。
「どこや? どこで鳴ってる?」
まだ、探しとったんか。
しかも、
いつのまに、オレのん、使ってるし。
ええかげんにせえっちゅうねん。
「なあ、このコートの中からと違う?」
メンバーの一人が、にこにこ顔で、携帯を取り出した。
「あぁーーーっ!!! あったぁ!!!」
それ、誰のコートやねん。
「忘れとったわあ。朝、寒かったから、現場でコート着てたんや」
失くしたって騒いだ本人のかい!
「わりィ、わりィ。ありがとう、返すわ、携帯」
悪びれた様子もなく、そいつは携帯を返してよこした。
オレは、オカンに打ちかけたメールの続きを開く。
【おめでとうって、伝えて。ちィ兄も、それなり幸せにやってるって】
いらんこと、かな。
ちょっと考えて、オレは、最後の一文を消した。
伝えたいことは、きっと、あの日で終わってるはずやから、
余計なことは、言わんほうがええな。
【おめでとう、幸せにって、伝えて】
送信しました
そんな恋の結末。
FIN.
後編の前に、少しだけ。
このお話には、続編・・・というか、対になってるお話があるので、
出来れば、間をおかず、
今週中に、UPしたいなあと、思ってます。
よろしければ、そちらもお付き合いくださいませ。
では、後編。
オカンから送られて来た画像を見ながらの、
彼の独白・・・と、
おまけの締めです。
続きから、どうぞ。
この仕事始めたんが、
そもそもの別れの始まりやったんかもしれん。
地元と仕事場と、
行ったり来たりしながら、
それでも最初のうちは、地元で、みんなで、遊ぶ余裕もあった。
彼女にしたって、
高校入って、新しい環境で頑張ってたし。
なかなか会える時間が少なくなってることに、
オレは気付かへんくらいやった。
けど。
彼女にしたら、違ったんやな。
電話の向こうで、
「寂しい」って、泣くことが多くなった。
泣かれても、
オレは、すぐに彼女のそばには戻れない。
距離的なこともそうやけど、
彼女と付き合うより、
やりたいことが、いっぱいあった。
苦しいことも無論あったけど、
あの頃は、まだ、
目新しいおもちゃを手に入れたガキと、おんなじ気分やった。
それが、
のちのち、オレ自身を追い込んでいく元凶だとは、
これっぽっちも、気付いてへんかった。
彼女には、オレ以外のとこに興味を見つけて、
ほんまにやりたいこと、探して、夢中になって、
輝いていてほしかったんや、と、思う。
それが、オレの刺激になって、
より、上を目指す原動力になる。
お互いが大切にするもんが違うからこそ、
相手を思いやる気持ちが生まれる。
二人っきりでいたら、
恥ずかしくなるくらいに甘い時間やって、
どんなふうにでも過ごせるけど、
でも、
それが、いつも、いつもになったら、
その時間が、いかに大切なもんか、
見失ってしまうだろう。
二人で過ごす時間の温かさを、
独りで戦う瞬間を生き抜くための力にするために。
お互いに、
離れていることも必要なんやって、
本気で、
そう、思ってた。
今でも、基本的なとこは、変わってない。
だから、
未だに、本気の恋ってヤツを知らへんのかも、わからん。
かわいいなぁとか、
ええ女やなぁ、色っぽいなぁとか、
男やから、そんなん、四六時中、考えへんことは、ない。
頭ん中、そんなんばっかの時やって、あるけど。
でも、
それは、恋とか愛とかってもんとは、別ものや。
けど、
彼女にしたら、
それこそが、理解出来へんことやったんやな。
一般論としては、きっと、分かってたと思うねん。
せやけど、
それが自分の彼氏のことになったら、
話は別になりよるから、
だんだん、ケンカする回数も増えた。
泣いたり、
怒ったり、
彼女の感情の起伏が激しくなるのを、
オレは、どうすることも出来へんかった。
どんづまり。
行くも、戻るも、
手の施しようがないように思えた。
どっちみち、
結論は出さなアカン時期やった。
だんだん、仕事をやらせてもらえるようにもなって、
地元には、なかなか、戻られへんようにもなった。
これ以上、宙ぶらりんのまま、彼女を放っておくのは、
互いのためにも良くない、とは思ってた。
しゃしゃり出て来たんは、互いのオカンやった。
ほんま、あの時は、
いらん世話焼くなや、って、怒ったけど。
『おまえ、小っちゃいんは、背だけにしときや』
『逃げんと、ちゃんと向き合って、結論出すんも、男の役目やで』
『男と女のことやさかい、どっちが悪いとは、決められんかもしらん』
『でも、な。
あのコ、ひとりにして、寂しい思いさせて、泣かせたのは、おまえやで』
『小っさい頃から、おまえのことだけ追いかけてたコを捨てるんやから、
それなり、覚悟はしとるやんなぁ』
分かってること、念押されると、腹立つわあ。
『ま、おまえらが別れることになったかて、
お母ちゃんらの友情には、なんの関係もないけど』
最後のひとこと、余計やろ。
誰が、オカンらの心配までするか!!
ただ、
全部のこと、
オレのわがままやってことだけ、真実やったから、
誰に何言われても、反論のしようのないことやった。
彼女は。
もう、アカンってこと、
本当は、とっくに、分かってたんやと、思う。
オレのこと、好きやったんは確かかもしれん。
でもそれは、
恋に恋したかった時期に、
一番身近に、オレがおったっていうだけのことだったのかもしれん。
小さい時から、オレのもんだった彼女を、
他のヤツに渡すんが悔しかっただけの、
オレの独占欲が、彼女を苦しめただけ。
「ひどいこと、言うかもしれんけど・・・。
オレら、もう、これ以上は、無理・・・だよ、な・・・。
オレは、オレのやりたいこと、見つけた。
これからも、やってみたいねん。
寂しいって泣かれても、
会いたいって、我儘言われても、
オレは、おまえのそばにいてやれん。
すぐに戻っても来れん。
普通の恋人同士のようなんは、これから、もっと、無理になる。
オレ、おまえのこと、好きやった。
小さい時から、ずっと、おまえがそばにいたからな。
今さら、他のヤツに、おまえ渡すのかと思ったら、気が狂いそうにもなる。
せやけど、
この仕事、選んだからには、ずっと、このままって訳にはいかん。
我慢ばっかりさせんのは、オレもシンドイ。
おまえの気持ちが、オレから離れて、
他のヤツ好きになってくんを見るくらいやったら・・・。
ここらで、ちゃんと、終わらせよ。
もう、
二人では、会われへん」
言ってることは、支離滅裂やったかもしれん。
自分でも、何を言ってるか、
途中で分からんようになってきてた。
言葉の持つ重みを、実感してた。
オレの話を、
下を向いてじっと、聞いていた彼女は、
もう、泣くことすら、しなかった。
その代わり、
最後の別れ際、彼女は、言った。
『隣の、ちぃ兄のこと、応援してるんは、かまわへん?
ファン第一号やもん』
まだ、ちぃ兄の位置には、
オレを置いといてくれるんや・・・・・・
そんなことを、思い出した。
どこかで、突然、機械的なメロディーが鳴る。
なんで《ドラゴンボール》やねん。
おっかしいやろ。
「どこや? どこで鳴ってる?」
まだ、探しとったんか。
しかも、
いつのまに、オレのん、使ってるし。
ええかげんにせえっちゅうねん。
「なあ、このコートの中からと違う?」
メンバーの一人が、にこにこ顔で、携帯を取り出した。
「あぁーーーっ!!! あったぁ!!!」
それ、誰のコートやねん。
「忘れとったわあ。朝、寒かったから、現場でコート着てたんや」
失くしたって騒いだ本人のかい!
「わりィ、わりィ。ありがとう、返すわ、携帯」
悪びれた様子もなく、そいつは携帯を返してよこした。
オレは、オカンに打ちかけたメールの続きを開く。
【おめでとうって、伝えて。ちィ兄も、それなり幸せにやってるって】
いらんこと、かな。
ちょっと考えて、オレは、最後の一文を消した。
伝えたいことは、きっと、あの日で終わってるはずやから、
余計なことは、言わんほうがええな。
【おめでとう、幸せにって、伝えて】
そんな恋の結末。
FIN.