すばるに恋して∞に堕ちて

新たに。また1から始めてみようかと。

STORY.15 Little sister 後編

2009-02-02 20:04:52 | 小説
昨日の続きから。

後編の前に、少しだけ。

このお話には、続編・・・というか、対になってるお話があるので、
出来れば、間をおかず、
今週中に、UPしたいなあと、思ってます。
よろしければ、そちらもお付き合いくださいませ。

では、後編。

オカンから送られて来た画像を見ながらの、
彼の独白・・・と、
おまけの締めです。

続きから、どうぞ。


この仕事始めたんが、
そもそもの別れの始まりやったんかもしれん。

地元と仕事場と、
行ったり来たりしながら、

それでも最初のうちは、地元で、みんなで、遊ぶ余裕もあった。

彼女にしたって、
高校入って、新しい環境で頑張ってたし。

なかなか会える時間が少なくなってることに、
オレは気付かへんくらいやった。


けど。


彼女にしたら、違ったんやな。

電話の向こうで、
「寂しい」って、泣くことが多くなった。

泣かれても、
オレは、すぐに彼女のそばには戻れない。

距離的なこともそうやけど、
彼女と付き合うより、
やりたいことが、いっぱいあった。

苦しいことも無論あったけど、

あの頃は、まだ、
目新しいおもちゃを手に入れたガキと、おんなじ気分やった。

それが、
のちのち、オレ自身を追い込んでいく元凶だとは、
これっぽっちも、気付いてへんかった。

彼女には、オレ以外のとこに興味を見つけて、
ほんまにやりたいこと、探して、夢中になって、
輝いていてほしかったんや、と、思う。

それが、オレの刺激になって、
より、上を目指す原動力になる。

お互いが大切にするもんが違うからこそ、
相手を思いやる気持ちが生まれる。

二人っきりでいたら、
恥ずかしくなるくらいに甘い時間やって、
どんなふうにでも過ごせるけど、

でも、

それが、いつも、いつもになったら、


その時間が、いかに大切なもんか、
見失ってしまうだろう。

二人で過ごす時間の温かさを、
独りで戦う瞬間を生き抜くための力にするために。

お互いに、
離れていることも必要なんやって、

本気で、
そう、思ってた。


今でも、基本的なとこは、変わってない。


だから、
未だに、本気の恋ってヤツを知らへんのかも、わからん。

かわいいなぁとか、
ええ女やなぁ、色っぽいなぁとか、

男やから、そんなん、四六時中、考えへんことは、ない。

頭ん中、そんなんばっかの時やって、あるけど。
でも、
それは、恋とか愛とかってもんとは、別ものや。


けど、
彼女にしたら、
それこそが、理解出来へんことやったんやな。

一般論としては、きっと、分かってたと思うねん。

せやけど、
それが自分の彼氏のことになったら、
話は別になりよるから、
だんだん、ケンカする回数も増えた。

泣いたり、
怒ったり、
彼女の感情の起伏が激しくなるのを、
オレは、どうすることも出来へんかった。


どんづまり。


行くも、戻るも、
手の施しようがないように思えた。

どっちみち、
結論は出さなアカン時期やった。

だんだん、仕事をやらせてもらえるようにもなって、
地元には、なかなか、戻られへんようにもなった。

これ以上、宙ぶらりんのまま、彼女を放っておくのは、
互いのためにも良くない、とは思ってた。



しゃしゃり出て来たんは、互いのオカンやった。

ほんま、あの時は、
いらん世話焼くなや、って、怒ったけど。



『おまえ、小っちゃいんは、背だけにしときや』

『逃げんと、ちゃんと向き合って、結論出すんも、男の役目やで』

『男と女のことやさかい、どっちが悪いとは、決められんかもしらん』

『でも、な。
 あのコ、ひとりにして、寂しい思いさせて、泣かせたのは、おまえやで』

『小っさい頃から、おまえのことだけ追いかけてたコを捨てるんやから、
 それなり、覚悟はしとるやんなぁ』



分かってること、念押されると、腹立つわあ。


『ま、おまえらが別れることになったかて、
 お母ちゃんらの友情には、なんの関係もないけど』


最後のひとこと、余計やろ。

誰が、オカンらの心配までするか!!


ただ、

全部のこと、
オレのわがままやってことだけ、真実やったから、
誰に何言われても、反論のしようのないことやった。


彼女は。


もう、アカンってこと、
本当は、とっくに、分かってたんやと、思う。

オレのこと、好きやったんは確かかもしれん。

でもそれは、

恋に恋したかった時期に、
一番身近に、オレがおったっていうだけのことだったのかもしれん。

小さい時から、オレのもんだった彼女を、
他のヤツに渡すんが悔しかっただけの、
オレの独占欲が、彼女を苦しめただけ。



「ひどいこと、言うかもしれんけど・・・。
 オレら、もう、これ以上は、無理・・・だよ、な・・・。

 オレは、オレのやりたいこと、見つけた。
 これからも、やってみたいねん。

 寂しいって泣かれても、
 会いたいって、我儘言われても、

 オレは、おまえのそばにいてやれん。
 すぐに戻っても来れん。

 普通の恋人同士のようなんは、これから、もっと、無理になる。

 オレ、おまえのこと、好きやった。
 小さい時から、ずっと、おまえがそばにいたからな。

 今さら、他のヤツに、おまえ渡すのかと思ったら、気が狂いそうにもなる。

 せやけど、
 この仕事、選んだからには、ずっと、このままって訳にはいかん。

 我慢ばっかりさせんのは、オレもシンドイ。

 おまえの気持ちが、オレから離れて、
 他のヤツ好きになってくんを見るくらいやったら・・・。

 ここらで、ちゃんと、終わらせよ。

 もう、
 二人では、会われへん」



言ってることは、支離滅裂やったかもしれん。
自分でも、何を言ってるか、
途中で分からんようになってきてた。

言葉の持つ重みを、実感してた。


オレの話を、
下を向いてじっと、聞いていた彼女は、
もう、泣くことすら、しなかった。

その代わり、
最後の別れ際、彼女は、言った。


『隣の、ちぃ兄のこと、応援してるんは、かまわへん?
 ファン第一号やもん』


まだ、ちぃ兄の位置には、
オレを置いといてくれるんや・・・・・・

そんなことを、思い出した。






どこかで、突然、機械的なメロディーが鳴る。


なんで《ドラゴンボール》やねん。
おっかしいやろ。


「どこや? どこで鳴ってる?」


まだ、探しとったんか。
しかも、
いつのまに、オレのん、使ってるし。

ええかげんにせえっちゅうねん。


「なあ、このコートの中からと違う?」

メンバーの一人が、にこにこ顔で、携帯を取り出した。


「あぁーーーっ!!! あったぁ!!!」

それ、誰のコートやねん。

「忘れとったわあ。朝、寒かったから、現場でコート着てたんや」

失くしたって騒いだ本人のかい!

「わりィ、わりィ。ありがとう、返すわ、携帯」

悪びれた様子もなく、そいつは携帯を返してよこした。

オレは、オカンに打ちかけたメールの続きを開く。


【おめでとうって、伝えて。ちィ兄も、それなり幸せにやってるって】


いらんこと、かな。

ちょっと考えて、オレは、最後の一文を消した。


伝えたいことは、きっと、あの日で終わってるはずやから、
余計なことは、言わんほうがええな。


【おめでとう、幸せにって、伝えて】



       送信しました



そんな恋の結末。







FIN.