すばるに恋して∞に堕ちて

新たに。また1から始めてみようかと。

STORY.16 First Love 前編

2009-02-06 22:30:47 | 小説
昨日のレンジャーに、本当は、一人一人返信するつもりでいたんです。

でも、
某「うたばん」さんを見ていたら、
あまりにも、あまりにも、KAT-TUNの出番が遅くて少なくて、
いつぞやの、∞と同じ扱いに、ちょっと、呆然としていたら、

すっかり忘れてしまいました。

と同時に。

今週中にUPしたいと思っているお話も、
気付けば、今日は、金曜日のこんな時間。
もう残り少ないじゃないの

ちゃんと打ち込めるの? 私。

ということで、前書きなしに、いきます。

遅くなりました。

STORY.15と対になってるお話の、前編です。

STORY.15では、彼目線のお話だったのに対して、
同じ初恋を、
こちらは、彼女目線から、書いてみました。

続きから、どうぞ。


昨日までの雨が嘘のように晴れ上がった空。


結婚式場の控え室の窓から見えるのは、
きれいな青空と、わずかに覗く木々の緑。

純白の花嫁衣裳に身を包んだ私は、
笑顔で応じていた来客の中に、
懐かしい顔を見つけた。


「ママ・・・」


ママ、と私が呼んだその女性は、実の母親ではなく、
小さい頃から隣に住んでいたヒトだった。

母親同士が仲が良く、
『おばちゃん』と呼ぶには、あまりに若かったのだ。

それに。

子供の頃のまま、約束が果たされていたら・・・

その女性は、本当に私の母になるはずだった。



『まあ、ホントかわいい。お人形さんみたいやねえ』
『おめでとう、ほんまに、おめでとう』
『あの、小さかったコが、もう、お嫁にいくんやから、月日の経つのは、早いもんやねえ』
『お相手は、ええとこの人やってねえ。幸せにしてもらいや』
『なあ、写真、撮ってもええ?』



矢継ぎ早に喋りながら、
さっさと携帯を取り出すと、
私が微笑んだのと同時くらいに、シャッターを押した。

相変わらず、にぎやかだ。

この女性の、笑った顔が、私は大好きだった。


子供の頃、
この女性は、
自分の子供のしでかすコトに謝ってまわりながら、
それでも、
いっつも、子供の前では笑ってた。

口調は怒ってたけど、
本気じゃなかった。

『男の子やから、ちょっとくらいのやんちゃは、しゃあない』
『ケガくらいですんだら、もうけもんや』
『けど、他人様に迷惑かけるんだけは、アカンよ』
『おかあちゃんが謝ってすむコトくらいで止めといてや』


膨れっ面をしながらも、
渋々、うなづいていた男の子。


どんなにやんちゃな悪たれでも、
オカンにだけは、弱かったんだよね。



私は、
記憶の奥に封印した、その男の子の顔が、
その女性の顔に重なって浮かび上がってくることに、
少し、複雑な思いだった。




幼かった、
小さな、小さな、初恋。


でも、それまでの私の人生の大半に存在していた男の子。


あれから、いろんな恋を経験して、
たった一人のヒトと巡り合って、決心して、
今日を迎えたけれど。

今も、時々、
彼の名前や活躍を聞くたび、
ズキン・・・と、胸が痛むのは、
まだ決して、忘れきってはいないからだ、ということに、
私は、あらためて、気付いてしまった。



物心ついた頃から、
私は、彼の後ばかり追っていた。

ちゃんとした発音が出来なくて、
『ちィにい』 『ちィにい』 と呼んでいたのは、私くらいだ。

彼は、とっても活発だったから、
親たちですら、気を抜くと、すぐに姿を見失ってしまうほどだった。

近所の同じ年くらいの子を集めて、
公園で遊ぶときも、
秘密基地みたいなつくりの、狭いトコでコソコソ遊ぶときも、

どんな遊びをするにしても、

私の手を引いて、
『こっちやぞ、付いて来いや』って、言ってくれてた。

『オレの嫁はんになるんやで』って、
彼に真顔で言われたのは、幼稚園くらいの時やった。

『浮気したら、許さへんよ』って、
釘をさした私も、けっこう、早熟やったわ。

意味、判ってたんかな。



二人とも、ちょっとずつ成長していって、
それまで、
何をするにも、どこへ行くにも一緒やったのに、

彼が、中学にあがった頃、
ちょっとだけ気まずい雰囲気になったことがあった。

彼に、年上の彼女が出来たからや。

向こうは中学で、
こっちは小学校やから、
それまでみたいに、一緒には帰られへん。
当然やけど、
学校行くんも、別々。

あの時は、ほんま、寂しかったわ。

彼の興味が他の女の子に移った経験は、
それまでにだって、あったけど、
家は隣やのに、
なんでか、なかなか顔も合わさんようになって、
話もしなくなったんは、初めてやった。

でも。

私が中学にあがったら、彼女のほうは卒業で、
自然消滅したらしいから、

彼は、また、私の『ちィ兄』に戻った。


付き合うっていう感覚になったんは、
それから、やな。


毎日、毎日、彼のそばで楽しかったな。


勉強は、まったく出来へんかったけど、
部活は、まあまあ、それなりやったし、
休みになったら、みんなで、あちこち遊んで回った。

近所でフリマがあるっていったら、
必ず、二人してのぞいた。

彼は洋服ばっかり見てて、
私はアクセサリーとか、香水とか、興味があって。

中学生のこづかいやから、
そんな高価なもんは、買われへんかったけど、
それでも、なかには掘り出しモンもあったりして、
ふたりして、けっこう、喜んだりしてた。


状況が変わったのは、
やっぱり、彼が卒業したあとくらいから、かな。


彼が選んだ仕事は、
地元だけでは済まんことも、多くって、
何日も、地元に帰って来ないこともあった。


最初のうちは、
そんなでもなかってん。


相変わらず、二人で遊びにも行ったし、

彼の新しい仕事仲間も増えて、

一緒にバカばっかしやってた気がするのに、



そのうち、
私だけ、付いて行かれへんくなった。



私は、地元の高校に入って、
新しい環境ってヤツに馴染むのに、
ちょっと、時間がかかった。

いっつも、『ちィ兄』がいてくれたから、気付かなかったけど、
私って、けっこう、人見知りする方だった。

最初のうちは友達だって出来なかったのに、
彼から電話があるたび、
カラ元気を振り回してた。

遠いトコで頑張ってる彼に、
心配かけんのだけは、イヤだったから。


だけど、それも、長くは続かんかった。


寂しくて、寂しくて、
電話口で泣いてしまうことも、多くなった。

彼に会いたくて会いたくて、
どれだけ我儘を言っただろう。

わりと短気な『ちィ兄』も、私にだけは、気長なほうやったと、思う。

それまで、
私に本気で怒ることって、なかったけど、
あの頃から、よう、ケンカした。


ひとつには、私の我儘。

ひとつには、私の嫉妬。

ひとつには、私の独占欲。


彼が他のオンナノコの話をするたびに、
電話の向こうとこっちとで、ケンカばっかりしてた。





後編へ続く。