殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

愛人警察

2009年01月06日 14時50分59秒 | 不倫…戦いの記録
部屋にいる夫を呼ぼうとしましたが

人の好さそうな初老の巡査は

ニコニコしながらまず私に質問しました。


「半月ほど前に、車を換えられましたね」

      「はい…主人の車ですけど」


老眼が進んでいるらしく、手帳を手元から離して読みながら

「車種は○○○○で、色は白、ナンバーは○○○ですね」

           「はい…」



それから少し間を置いて


「奥さん、○○市の○○山…という町をご存じですか?」

    「○○市は知ってますが

     ○○山という所には行ったことありませんねぇ」


そして矢継ぎ早に質問です。

「車はなぜ換えたんです?」

      「主人がぶつけたとかで…」

「なぜ下取りにしないで廃車にしたんですかね?」

      「さぁ…」



昔から、車をぶつけるのが得意な夫です。

普通に走っていれば大丈夫なのに

女性を乗せて道なき道を走り

なぜか山奥や人けのない場所へ行きたがるので

どうしても早く傷んでしまいます。

切り株に乗り上げて車のお腹が壊れ、なんか水分が漏れたり

大事な所が歪んでダメになるのは珍しいことではありませんでした。


そんなに山奥が好きならジープにすればいい…と何度も言うのですが

どうもジープではムードが出ないらしく、いつもセダンにしたがります。

第一印象を良くしたいらしいのです。

私たち家族は「一人相撲の王者」と呼んでいました。   


今度のも「ぶつけた」と言うので、そのまま受け流していました。

いつもの癖で再起不能になるほど壊したのでしょう。

でも、こんなことを説明するのは面倒なので、夫を呼びました。

やりとりはまる聞こえのはずなのに

グズグズと出て来ないチキンぶりが憎らしくもありました。


しぶしぶ玄関まで出て来た夫に

「○○市の○○山…という町をご存じですか?」

巡査はすぐさま質問しました。


「…え…」

「どっちですか?○○市の○○山という町をご存じですか?」

「…はぁ…」

「○○市の○○山という町ですよ」


    なるほど…こうやって同じ質問をするのが手なんだな…
  
    表情の変化を見るんだ…


生返事の夫を見ていると、警官でなくても怪しいと思います。

    「あなた、ちゃんと答えないと。

     …あの…殺人って、誰が殺されたんですか?」


「半月ほど前、○○山でスナックのママさんが殺されましてね」

  「ああ、ニュースでやってましたよね」

「それで、被害者宅によく停まっていたという車を探しているんですわ。

 ここも、ナンバーが似ていたもんでね。しらみつぶしというやつです」

           「大変ですね」

「ハハハ、仕事ですからねぇ」


家族を傷つけないためでしょうか。

それとも彼の権限の問題でしょうか。

なかなか核心には触れません。


私は店の住所は知っていましたが 

ゆ○子さんの名字や自宅の住所は知らなかったので

ニュースを見ても、ピンと来ませんでした。


でも、今やっとピンと来ました。

      あ~らら、彼女、死んじゃったのね…


警察がどこまで調べているかはわかりませんが

事件と前後してタイミング良く車を廃車にした夫はもちろん

私もまた疑われている気がしました。


包丁でメッタ刺しと報道していましたが

三角関係のもつれで、妻が愛人を殺す…なんてことも考えて

私に質問したのだと思いました。


          失礼な…
    
          逆上してすぐバレるようなことをするもんですか

          初心者じゃあるまいし… 



多分…恐がりの夫にメッタ刺しは無理です。

重みで圧死…ならあるかもしれませんが。

しかし、かばう気にはなれませんでした。

何が起こるかわからないのが世の中ですもの。


こうなったら私も、いち市民として捜査に協力しなくては!


 「主人が、その人と関係があったから疑われているんですね?」  

「いやいや、奥さん、そういうわけじゃ…」

  「いいえ!わかっています!証拠もありますわ!」


私は足取りも軽く部屋へ取ってかえし

例の神社の葉書やライターを差し出したのでした。
   
           うひょひょひょ…


しかし、期待していたほど喜ばれませんでした。

刑事ドラマとは、やっぱり違うようです。


外で待っていたのか、もう一人刑事らしき人物が現われました。

「どうでしょう、ご主人。

 ちょっと署のほうでゆっくり話をうかがえませんか」

コメント (12)
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