殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

海辺焼き

2010年04月23日 09時12分18秒 | みりこん胃袋物語
“B級グルメ選手権”と印刷された紙を見せながら

知人の久代は言った。

「私ね、これ、チャンスだと思うの」


ゴールデンウィークに、遠い町で開催されるという“B級グルメ選手権”。

2日間行われ、売れた数を競う。

久代はこれに出場して、我が町の知名度を上げ

ひいては自身の経営する飲食店を宣伝したいともくろんでいる。


武器は「海辺焼き(うみべやき・仮名)」。

海産物を色々入れた、軽食めいたものと思ってもらいたい。

町を活性化するために、新しい名物を作ろうと

数店舗の庶民派飲食店が立ち上がり、共同で開発した。

その中の一人が、久代であった。


社運、いや店運をかけて売り出した「海辺焼き」だが

あんまり人気が出ないと言う。

そこで選手権に出場して、認知度アップを狙いたいらしい。


「どう思う?他の店はみんな出られないから

 私だけ、返事を待ってもらってる状態」

      「ふ~ん」

「7人ひと組でエントリーするんだけど

 家族とパートさん連れて行っても、あと1人足りないの。

 ねえ、どう思う?」

      「じゃあ、出なきゃいいじゃん」


そうじゃなくて…と久代はもどかしげだ。

意味不明のやりとりがあって、鈍い私にもやっとわかった。

人数合わせに、私の自発的参加を促しているのだ。

用事がある…と呼び出されて、これだもんな。


「来て」と頼めば、日当がいる。

私から「行きたい」と言い出せば、タダである。

よっぽどヒマそうに見えるのだろう。

いくら出しゃばりな私でも、出しゃばる場所は選ぶぞ。


     「やなこった!」

「2日だけだし」

     「日焼けするじゃん!」

「困ってるのに…」

     「しろうとじゃ、役に立たないわよ。

      他の店の人に1日ずつでも協力してもらいなさいよ。

      久代、こないだの産業祭の時も、1人だったじゃん。

      雨降ったし、疲れて熱出したじゃん」

「あの日もね、みんな、どうしても無理だったの。

 今回もちょうど法事や子供さんの帰省が重なって、残念がってるのよ」

     「どの店も全員が全員、2日とも動けないはずないよ。

      かき入れ時に店を閉めたくないのよ。

      あんな遠くじゃ、産業祭よりもっと大変で効果が低いしさ」 

「行きたいけど、本当に用があるのよ。

 だから一番若手の私に、頑張ってほしいって」

     「は~!やっぱ年寄りはえらいね~!さすが。

      その日に私、町内を回ってみるよ。

      店を開けてるか閉めてるか調べて、あんたにレポート出す」

「もういい!頼まない!」

いつ頼んだ…幼稚な計算高さで、人をタダでこき使おうとしたではないか。


出場できなくても、大丈夫…売れやしないさ。

すごくまずいのだ…海辺焼きは。

なぜかというと、ある食品の製造行程で出る

カス的なものを入れるからだ。

豆腐を作る時に出るおからみたいなものだと思ってほしい。


おからは無味無臭なので用途が広いが、こっちのカスは癖がある。

油と海産物のニオイをたっぷり吸ったカスは、とっても生臭いざます。

ナンボいやしい私でも、一度食べたらもうけっこう…というお味。

B級なんて言ったら、B級に失礼だぞよ。

C級、D級にエントリーするべきだ。


海辺焼きは、製造工程でカスを出す業者が

カスをお金に換えたくてもくろんだ企画であった。

それを使ったメニューを考案し、定期的に仕入れてくれれば

開発の経費を負担し、会社の季刊誌で店のPRをしてくれるという取引があった。

工場見学、勉強会などの名目で、さりげなく接待されつつ考案したものの

発売から半年…リピーターは少ない。


「売れないと、あんまり仕入れられないから、業者に悪くて…

 だから選手権で頑張りを見せたいの」

久代は言うけど

「まずいもん出したら、客に悪い」とは思わないようである。


本当に繁盛させたいなら

店中にベタベタ貼りまくってる子供や家族旅行の写真はがせ。

ホコリかぶって変色した造花やはく製を捨てぃ。

入り口に宅配牛乳の箱、置くな。

客が来るたんびに、奥から仏頂面で店をのぞくガキをしつけろ。

…言わないけどさ。

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41 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お疲れ様! (南風)
2010-04-23 12:34:23
やっぱり 町内パトロールを優先ですね!


売れても 売れなくても 絡まれそう。
平和な休日が一番ですね~
 こんな時に、年老いた親と旦那に登場してもらわなくちゃね!
私も子供のご飯作りが大事なので 今は自宅待機!優先中です。
返信する
まどろっこしい... (サキマ)
2010-04-23 13:37:55
『来て』と頼めば日当が...
私から『行きたい』と言い出せばタダ...
そういう感覚の『知人』、ちょっと困りますね。

義父母がそれの十倍酷い感覚で...。

昨日は義父の転院予定のB病院の面接日でした。
現在入院しているA病院とは真逆の方向です。
時間もガソリンもバカになりません。
面接にいくだけの目的で車を出しているのに、義母は何やら紙袋を持参。...。
そしてB病院へ。面接終了後、帰路へ。

...。『何ですか?それ?』
『ああ、これ?お義父さんの着替え...。』

...。...。...。『A病院いきましょうか?』
『ええっ!いいの~~~??』

白々しい...。

いっつもそう。遠まわしに言って、結論を私に言わせる。(豚ヒレの時だってそう)

『私はな~にも言ってません。頼んでません。向こうから言ってきた。”勝手に”やってくれた。私は迷惑かけてませ~ん。なんの借りもないわよ~!』
って言われてるみたいで腹が立つんです。
だからそういうまどろっこしい言い方やめてくれます?結論を先に言ってもらえませんかー?

って言ったら、どうなるかな...。
って言ってみたいな...。



返信する
またまた記事から… (たらこ)
2010-04-23 14:44:38
記事内容から離れた事ですみませんm(_ _)m

さっき 夫と電話で話しました。
今日は お給料日…。
いつも当たり前で使っていたお金は 当たり前ではないのにそこに気付けず 感謝も言っていませんでした。
言わなければ伝わらないこと 生活するためのテクニックだと自分に言い聞かせ

『いつもありがとう。今まで感謝も言わずごめんなさい。あなたのおかげで生活ができていることを忘れていました。本当にごめんなさい』
と伝えました。

夫は怒る事もなく 
『子供たちのこれからの学費はいくらかかるんだ?』と聞いてきました。

また泣きながら話してしましたが 話せて良かったと思います。

スッキリしました(笑)

ありがとうございました!m(_ _)m
返信する
パトロール(笑) (みりこん~南風さんへ)
2010-04-23 15:00:06
いっこうにそんな気は無いんだけどね~(笑)
狭い町なので、つい行ったほうが早いみたいな会話に
なっちゃいますね。

出ても売れないと思います。
「グランプリを獲ろうなんて気はない…何でも
やってみることに意義がある」なんて行ってたけど
人にお金を出させて買ってもらう競技で、一番になる気が
無くてどうするんじゃ…ですよ(笑)

連休は、家でまったりが一番です。
1回くらいは、どこか行こうかな~♪
返信する
ははは… (みりこん~サキマさんへ)
2010-04-23 15:27:59
そんなん、普通、普通(笑)
運転をしない人は、そういうとこ、あります。
気を付けている人もいますけど、少ないですね。

うちもそうですよ。
ついカッとなりますね(笑)
買物なんか行くと、経路をまったく無視で、思いつくままに
あっちの町、こっちの町…「出たついで、ついで」とか言ってごまかす(笑)

よそから電話で迎えを頼む時は「すいません…
来てもらえますでしょうか…」なんて弱々しく芝居すんの。
周りで「そんなにお嫁さんに気兼ねしなくても~」
とか、ギャラリーが言ってる。
人がいない時は「入り口まで、乗り付けてちょうだい!」だべ(笑)

毎回「なんの借りもないわよ~」まさにそれ(笑)
行く前に、言ってくれたら心構えも違うんですけどね。
あれ、老人には無理みたいですよ。
荷物と回る先が、頭の中で直結しないみたい。
最初に言うと、機嫌が悪くなるかな?っていう心配も
どこかにあるみたいです。

もう最近は、荷物なんか持ってたら「それ、何?どこへ行くの?」
って、こっちから聞きますね。
キリがないから。

時々は考えるんです。
「乗せてやってる…連れて行ってやってる」みたいな気に
つい自分がなってると。
だから腹が立つ。

昔は馬に乗ったお侍が、平民を見下ろしてましたよね。
今は、排気量の大きい車が、小さい車を見下すところがある。
運転する者は、運転しない者をどこかで見下してないかな…って
機嫌のいい時は考えたりもします。

そして思うのです…この気持ちは、江戸の名残だ…な~んてね(笑)
それくらい、精神的にきついことですよ…わかります。
ブツブツ言ってた時期、ありましたもん(笑)

やっぱりね~…ブーブー言ってたら、望みが叶っちゃう気はしてます。
望み…それは運転したくないという望み。
目や頭が早く衰えたりして、運転できなくなるの。
そうならないように、同じやるなら楽しくを目指し
お互い頑張りましょう(笑)
返信する
おお~! (みりこん~たらこさんへ)
2010-04-23 15:41:52
すごいじゃん!
そこまで出来るとはね~!
よく頑張りましたね!
テクニック…本当に、そうですね。
私も負けずに、今日夫に、日頃のお礼を言おう(笑)

毎月言ってると、喜んで入金してくれるようになりますよ。
男は自分で言うのは苦手だけど、人から感謝されたり
耳心地の良いことを言われるのは、女が想像する以上に嬉しいのです。

金銭的不安を解消して、たらこさんが落ち着いて
子供さんを安心させることです。
子供を守るというのは、そういうことです。
強く立ち向かって、喧嘩することではありません。

学費を聞かれたら「たくさんかかるので、どうかよろしくお願いします」
とかわいく言って、たくさんいただいてくださいね(笑)
そして貯める(笑)
返信する
サキマ (ブーブー)
2010-04-23 16:17:52
言ってます。心中で(--;)
カチッときますよね!
その通りです。特に親類や他人の前では

『サキマさん悪いねんけどぉ…○○へ乗せてってもらわれへんやろかぁぁ…』
『ほんまに~、ほんま申し訳ないなあ…』

…悪いねんけどって
…申し訳ないなぁって

いやらしい!その言い方…。

親類らは、
『そんなに気を遣わな、あかんの?気の毒に…』という目でみてます。別にいいですけど。

そのくせ私だけの時は まず、
『今日、買い物行くの?』『今日、塾の送迎何時かいな?』

『…何か?』

『味噌と砂糖と○○…ついでに買ってきて』
『塾のついでにポスト入れてきて』

『ついでやねんから、アンタに迷惑かけてないやろ』みたいな感じです。

ついでがあるかどうかを必ず聞くところが嫌なんです。是が非でも、借りを作りたくないみたいな。

はじめっから、ストレートに言え!…と言いたい。

この辺の田舎の風潮で、私は長男の嫁だから、本来、義父母に平伏す存在でないといけないのでしょう。
でも、私は出来たお嫁さんじゃないので、顔や態度にビミョーに出るんでしょうね。

だから、それが義母のできる精一杯の頼み方なんでしょうかね…。
返信する
貯める!(笑) (たらこ)
2010-04-23 16:55:26
不満ではなく お金ですね!(笑)

今回の感謝を継続するように心がけをしていきたいと思います。 

夫と話をして思ったこと…。
最初にこちらが『ありがとう』を言ってしまうと文句が言えなくなる(笑)
これから夫と接する時は この方法を取り入れていこうと思います!

【強く立ち向かって、喧嘩することではありません】そうですね!私はそっちの方向に進んでいました…(苦笑)
進むべき道を修正する事が出来て良かったです。
そして 子供たちが安心して生活できるなら 女優になろうと思います♪


ヒロシさんに かわいくお礼を言ってあげてくださいね(^_-)-☆

ありがとうございました♪
返信する
でも… (サキマ)
2010-04-23 17:43:21
確かに…私が運転できるから、出来ない義母に
『○○してやってる』みたいな見下しをしているのかも…。
これには、三男嫁に対する不満も乗っかっていると思います。
『私はこんなにやってるのに、三男嫁は無関心!ノータッチ!』
と、メラメラ怒ってますから。
私がどうしても駄目なときだけ、三男嫁に頼み、媚びへつらい…お土産いっぱい渡して良い姑です。

…なのに私には…。

その辺の不満が結構たまってきてます。
正月以来、実家にも行かず四苦八苦やってるのに、三男嫁はしょっちゅう実家へ帰るし、その上に三男嫁の母親が一週間単位で泊まっていったりもします。しかも三男宅は我が家・母屋と目と鼻の先なのに
その母親は最初から挨拶なしで勝手に来ては帰っていきます。合鍵を持って。『三男よ!それでいいのかよ!居場所はあるのかよ!』って感じです。
私の実家の家族が来たのははこの十年間で数回です。しかも短時間滞在。

三男嫁は何と…義父母を家に上がらせないんです。義父母が三男宅の草刈りしてても挨拶なし。ましてお茶もなし。(←義父母が愚痴こぼしてました)完全無視。ある意味凄いです。

私はどんなに嫌だったか…
着替えの途中で勝手にズカズカ…頂いたケーキを娘とこっそり食べようとした途端ズカズカ…
用も無いのにズカズカ…

…そうです。三男嫁はずる賢いです。最初が肝心とバリケードを張り…。
保育所代金を節約するために、あれだけ二人の子供を乳飲み子から何年も母屋に預けてたくせに。私だって、どれだけ手を貸したか…。

この恩知らず!

すみません。ついつい…
吐きすぎちゃった
返信する
祖母 (ナナ)
2010-04-23 19:04:01
「〇時に迎えにこい」「〇社の〇を買ってこい」無くて代用品を買うと「私は〇社の〇しか食べん。これは美味しくない。探してもう一度買ってこい」プレゼントあげると「これはイラン返品してこい」「あれが欲しい交換しろ」又は、他人に譲る。私が買った物を他の人が使ってる。多分、うちの祖母より酷い人間は、いないのでは?母と私はコキ使われ、何の感謝もされずに振り回されてます。身内の殺人事件、わかります…その強烈婆さんが、退院しました…
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