西の空の雲と雲が三角形に区切れた隙間から、沈みかけの細い月が燃えるように輝いているので、私はそれを写真におさめようとデジカメを構えるのだが、車が揺れるのでいつも以上にぶれた写真を撮るしかできない。
私は息子とともに田舎へ帰省しているところで、この日は母と姉と私と、どこかへ出かける途中だった。
目的地へ着いてみると、一間ほどの幅の玄関口がある細長い木造の建物があり、そのわきには大きな梅の木がちょうど満開になっていた。朝の10時の開館までまだ数分時間があるので、私達は表で待っている。周りには他にも待っている人がたくさんいる。何の施設だかよく覚えていないが、葬儀とか、故人に供物を捧げるといったようなことをする場所であった気がしている。
忘れんぼうの母がいつもの通り「あっ、Tちゃん(私の息子)の描いてくれた漫画を持ってくるのを忘れた!」と言う。息子が鉛筆で描いた漫画を小さな冊子にして綴じたものを、お供えするつもりだったのだ。
すると、父が、「いいよ大丈夫、もう持ってるよ」と言う。
「それより、みんなで写真でも撮るか」と、父が、促すので、父と母と姉を並べて私はデジカメを構える。
すぐそこに満開の梅の木があるのにそれを背景にせず、燃えるように輝く美しい月も背景にせず、ただ父と母と姉と、息子がこの場に不在なのを残念に思いながら、開館を待つ群衆を(不在の息子の代わりのように、見知らぬ男の子がカメラを見つめて立っていた)私は写真に撮った。
お父さん、今度はちゃんと漫画を持ってくるよ。
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父が私の夢に出て来る時は、これまでは若い頃からずっと「父が死にかけていてヤバイ」みたいな夢であったのですが、今朝はじめてこんなに穏やかで死にかけてもなくヤバくもない父と夢で出会いました。
昨年末に父が亡くなってからずっと、私は自分で予想していたよりもずっと強い衝撃を受けていて、心がずっと重苦しく落ち着かない感じだったのですが、もう大丈夫なような気がしています。