監督:フランシス・F・コッポラ
出演:マーロン・ブランド/マーティン・シーン他
1979年 アメリカ
《あらすじ》
1960年代末のヴェトナム。ウィラード大尉は、ジョングルの奥地で王国を築いたとされるカーツ大佐を暗殺する命令を受け、ナング河を溯っていく。その過程でウィラードが遭遇するさまざまな戦争の狂気。
《この一言》
“ 欺瞞だ ”
有名すぎるこの映画を、私はまだ観たことがなかったのですが、ようやく観ました。すごく長かったので、多分「完全版」の方を観たのかと思われます。疲れた…。
で、どうだったかと言うと……うーむ。とにかく憂鬱です。ただ、内容の恐ろしさから連想していたような直接的な残虐描写はあまり見られず、どちらかと言えば幻想的とさえ言えるような狂気の世界が、これまた憂鬱なことに美しいとしか言えない映像で表現されていました。
特に、序盤でワーグナーの大音量の中をヘリコプターが隊列を組んでやってくる場面や、終盤でウィラード大尉が水の中から静かに頭を出す場面などは、観ていない人にも知られているほどに有名なだけあって圧巻です。フランス人の館も美しかった。
しかし、どの場面を取っても、狂気が渦巻いているようで、私はめまいがするようです。しまいには、狂気とは何だろうか、正常とはどういうことだったろうか、という手に負えない疑問に襲われてしまいます。
ひとつ感じたことには、この映画は、観客が登場人物に感情移入することをあまり許してくれない作品なのではないかということです。誰の立場にも、ある程度は理解を示すことはできるけれど、どこかで突き放されてしまう。主人公のウィラードにしても、最初からちょっとおかしな人物だったのですが、中盤はわりと分かりかけた気がしたのに、最後にはやっぱり分かりませんでした。
誰も彼もが少し(あるいはすごく)おかしい。
その状況に置かれなければ分からない、と言ってしまえばそれまでですが、登場する誰ひとりとしてその心を理解できないとすれば、おかしいのは私も同じではないだろうかと思えてきて仕方がありません。これは何か危険な臭いがする。もうやめておこう。
ここからはネタバレ注意!
観終えて、K氏が鋭いことを言っていたので書き留めておきましょう。
陽気なサーファーのランスが最後まで生き延びたのは、彼だけが「欺瞞」に侵されていなかったからではないか。途中からの彼はただ欲望の赴くままに行動しており、その精神は何ものにも引き裂かれていなかった。だからカーツは彼には構わなかったし、最後の地から生き延びることができた。
なるほど、そうかもしれません。ランスの中には暴力と慈愛が、なんの矛盾もなく同居しているように見えました。彼が恐怖心を表さなくなったのには、なにかそういうことも関係しているのでしょうか。
とにかく、色々な意味でヘトヘトになった1本。
出演:マーロン・ブランド/マーティン・シーン他
1979年 アメリカ
《あらすじ》
1960年代末のヴェトナム。ウィラード大尉は、ジョングルの奥地で王国を築いたとされるカーツ大佐を暗殺する命令を受け、ナング河を溯っていく。その過程でウィラードが遭遇するさまざまな戦争の狂気。
《この一言》
“ 欺瞞だ ”
有名すぎるこの映画を、私はまだ観たことがなかったのですが、ようやく観ました。すごく長かったので、多分「完全版」の方を観たのかと思われます。疲れた…。
で、どうだったかと言うと……うーむ。とにかく憂鬱です。ただ、内容の恐ろしさから連想していたような直接的な残虐描写はあまり見られず、どちらかと言えば幻想的とさえ言えるような狂気の世界が、これまた憂鬱なことに美しいとしか言えない映像で表現されていました。
特に、序盤でワーグナーの大音量の中をヘリコプターが隊列を組んでやってくる場面や、終盤でウィラード大尉が水の中から静かに頭を出す場面などは、観ていない人にも知られているほどに有名なだけあって圧巻です。フランス人の館も美しかった。
しかし、どの場面を取っても、狂気が渦巻いているようで、私はめまいがするようです。しまいには、狂気とは何だろうか、正常とはどういうことだったろうか、という手に負えない疑問に襲われてしまいます。
ひとつ感じたことには、この映画は、観客が登場人物に感情移入することをあまり許してくれない作品なのではないかということです。誰の立場にも、ある程度は理解を示すことはできるけれど、どこかで突き放されてしまう。主人公のウィラードにしても、最初からちょっとおかしな人物だったのですが、中盤はわりと分かりかけた気がしたのに、最後にはやっぱり分かりませんでした。
誰も彼もが少し(あるいはすごく)おかしい。
その状況に置かれなければ分からない、と言ってしまえばそれまでですが、登場する誰ひとりとしてその心を理解できないとすれば、おかしいのは私も同じではないだろうかと思えてきて仕方がありません。これは何か危険な臭いがする。もうやめておこう。
ここからはネタバレ注意!
観終えて、K氏が鋭いことを言っていたので書き留めておきましょう。
陽気なサーファーのランスが最後まで生き延びたのは、彼だけが「欺瞞」に侵されていなかったからではないか。途中からの彼はただ欲望の赴くままに行動しており、その精神は何ものにも引き裂かれていなかった。だからカーツは彼には構わなかったし、最後の地から生き延びることができた。
なるほど、そうかもしれません。ランスの中には暴力と慈愛が、なんの矛盾もなく同居しているように見えました。彼が恐怖心を表さなくなったのには、なにかそういうことも関係しているのでしょうか。
とにかく、色々な意味でヘトヘトになった1本。