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『壜の中の手記』

2008年09月29日 | 読書日記ー英米
ジェラルド・カーシュ 西崎憲 他訳(角川文庫)


《あらすじ》
ビアスの失踪という米文学史上最大のミステリを題材に不気味なファンタジーを創造、エドガー賞に輝いた「壜の中の手記」、無人島で発見された奇怪な白骨に秘められた哀しくも恐ろしい愛の物語「豚の島の女王」など途方もない奇想とねじれたユーモアに満ちた語り/騙りの天才カーシュの異色短篇集。

《収録作品》
*豚の島の女王
*黄金の河
*ねじくれた骨
*凍れる美女
*骨のない人間
*壜の中の手記
*ブライトンの怪物
*破滅の種子
*壁のない部屋で
*時計収集家の王
*狂える花
*死こそわが同志

《この一文》
“「有りえない」と医師は言った。「科学の光に照らしあわせると結論はそうなる。しかし、科学の光というものはまだ案外に暗いものだ。我々は生と死に関して、それに魂と一般に呼んでいるものに関してほとんど何も知らない。眠りについてすら何も知らないのだ。…」
     ―――「凍れる美女」より”



ぐっとくるほど面白かったです。久しぶりに書店で引力を感じて手に取った1冊。買った後に、そう言えば、ブックガイドで面白そうに紹介してあったことを思い出しました。そうか、これだったのか。いやはや大当たりです。

とにかく、とてもうまいです。わりと淡々と語られる物語はどれもあまりにもよく練られていて、いちいち「あっ」と驚かされるうえに、ひとつひとつの物語がそれぞれに違った雰囲気と質感を持ち、ひとつの作品を読むだけでかなりの満足感があるので、次に進む前に少し休みたくなるような充実した短篇集でした。
面白いなー、実に面白い!

全体に共通して感じられるのは、どこか異常なもの、グロテスクなものを熱心に見詰めながらも冷たく言い放ってしまう語り口とでもいいましょうか、そういう雰囲気があります。なにかおかしな断絶というようなものがあって、それが私の胸をビリビリと刺激するようでした。ひとを驚かせて楽しむ底意地の悪さに満ちているようで、同時に実はなにか聞き逃すべきでない重要なことを語っているような、そんな感じ。うまく説明できませんが、妙な味わいでした。

特に面白かったのは、次の5篇。
「豚の島の女王」は、難破して無人島に漂着したサーカス団の面々が、生まれつき手足を持たない美女ラルエットを愛したがために滅びるまでを描いた哀しい物語。あまりにも痛ましく、やるせない気持ちにさせられます。

「骨のない人間」はSF風味のごく短い物語。ジャングルで行方不明となり、全滅した探検隊がそこで見たものとは――。私の思考が単純すぎるとはいえ、まさかの展開に思わず声をあげてしまいました。隊長であるヨーワード教授の態度が非常に恐ろしかった。人が人を拒絶するようになったその瞬間があまりに簡潔明瞭に描かれてあります。恐い。

「壜の中の手記」は、アンブローズ・ビアスの失踪をあつかった作品。フエンテスの『老いぼれグリンゴ』もまたビアスの失踪後の物語でしたが、これはどうも多くの作家を刺激するモチーフのようですね。カーシュのこの物語も、不気味に幻想的でとても面白かったです。

「時計収集家の王」は、時計収集が趣味のニコラス三世のために大時計を製作したスイスの時計職人ポメルのたどる数奇な運命の物語。異常に面白かったです。からくり時計とか蠟人形というのは、それだけですでに魅力的です。

「死こそわが同志」は、世界中に終わりのない戦争の火種をまき散らし巨万の富を得た武器商人を描くSF風味の物語。この狂気には震えました。グロテスク度合いから言っても、これが最高にグロテスクでした。ひどい。


どちらかと言うと気の滅入る物語ばかりでしたが、ちょっと癖になります。他のも是非とも読んでみたいところです。





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ペットボトル

2008年09月27日 | 自作まんが

最近、こういう猫よけのペットボトルを見なくなったなぁ、と思って……。やはりあまり効果がないことが分かったからでしょうかね。

コカコーラのペットボトル(500ml)は、くびれてて、持ちやすいですね。
そして、水を詰めると結構な重さになります(500gですよね?)。
衰えるままに日々を暮らす私を見かねたK氏から「はい」と渡されました。
「目に付くところに置けば、さすがの君でもやるでしょ」と言って、
私の机の脇に置いていきました(2本)。
新手の嫌がらせでしょうか。
……しかし、一理ある。
ということで、私はコレでおもに弱り過ぎた左腕と左肩の強化を狙うことになりました。筋肉、筋肉。ところで、足腰はどうやって鍛えればいいんですか?



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面白いページデザイン

2008年09月26日 | 同人誌をつくろう!
今度の同人誌に向けて、まだ早いかなと思いつつも、あれこれと絵付きの本をめくっています。
まずは、内田百間に『王様の背中』という童話集があるのですが、物語ごとに工夫されたページのデザインが面白かったので、ご紹介します。








まあ、ここまで大胆なことはできないかもしれませんが、同人のみなさまがたも、もし面白いレイアウトや、やってみたいデザインなどがおありでしたら、ご報告くださいませ☆
作品を並べるだけでなく、楽しい誌面を工夫したいですね(^^)

**掲示板にも貼っておきます。
  みなさんもどうぞ♪



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テンプレートを変えてみる

2008年09月25日 | もやもや日記



gooブログが用意してくれている新しいテンプレートの、リスが可愛かったので変えてみました。

しかし、私はこのところずっと自前のテンプレートを使っていたので、何と言うか、非常に違和感を感じてしまいます。デザインがあんまりちゃんとしているというのも落ち着かないもんですね…;

デザインが、と言うよりも、色合いが私らしくない。私はもっとくっきりした色づかいを好みます。このテンプレートの緑色はいささか薄すぎるのではないかと思うのですが、いかがでしょう。まあ趣味が悪いと評判の私が何を言う、って感じですが。


というわけで、リスに釣られてテンプレートを変えてみたものの、またすぐに元に戻すかも。という記事でした。(何なんだ……)

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水色の悪魔

2008年09月24日 | 夢の記録
こんな夢を見た人もいる。
シュールな。





このところ、見た夢をあまり覚えていられないことに悩んでいるのですが(←悩むようなことか;)、いくつか断片的に覚えているものもあります。

ひとつは、私はまだ大学生くらいで、仲間たちと一緒に海へ来ているのですが、その海が奇麗で、透明で大きな分厚いクラゲが大量発生、しかも田舎の海なのに「海の家」が軒を連ね、焼き鳥やらトウモロコシやら、競って売りまくっている。
という夢。意味はさっぱりなさそうだけど、印象的でした。

もうひとつは、ミステリー。たぶんポワロが登場してました。こないだまでポワロ漬けだったのが影響しているかもしれません。
それは「水色の悪魔」というタイトルで、私は「ふーん、面白い」と思ったような記憶があるので、どうやら夢の中で私はテレビドラマを見ていたのではないかと。
内容はすっかり忘れてしまいましたが、「水色の悪魔」という響きが美しくて、よく覚えていました。


うーむ。そろそろ「美術学校」の続きが見たい私は、目下、夢ネタで漫画を描かねばならぬところです。

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銀座 WEST のクッキー

2008年09月22日 | もやもや日記


このあいだ、K氏が上京するというのでお土産に銀座 WEST のお菓子を買ってきてくれるように頼みました。私は polon(ポロン)という小さくて丸い粉砂糖のかかった焼き菓子の小さい箱をお願いしたのですが、K氏は何を思ったのか、大きい箱のポロンと、クッキーを何枚か買ってきてくれました。おかげで私が渡したお金では足りなかったらしい(…そんなこと言われても;)。
さらにK氏は有楽町の交通会館にある北海道の物産センターにてロイズのナッティー・バーも買ってきてくれました。やっぱいいなー、東京。


関西にも旨いものはたくさんありますが、東京を離れて何年も経つとやはり東京時代の味が懐かしくなります。根津の信濃屋のトンカツが食いたいとか、竹葉亭のうな重が食いたいとか、京橋の桃六の大福が食いたいとか、茗荷谷のナマスカでカレーが食いたいとか、てんやの天丼が食いたいとか(関西にはてんやが無い…)、いろいろな味覚がよみがえってくるようです。殊に秋には! あー、腹減った。

ま、でも、食べ物というのは、やはりその土地にいる間に楽しんでおくのがよいのでしょう。大阪を離れることになったら、きっと551の豚マンや、美舟の太麺甘口ソース焼そばや、リクローおじさんのチーズケーキが懐かしくてたまらなくなるに違いない。
田舎へ帰れば帰ったで、刺身やなんかが食べたくなるしな。そういうもんだな。


そんなこんなで、食べ物のことばかり考えている秋の日。最近の私はちなみに、ラム肉が好きでたまりません。ラム肉……産地はオーストラリアでしょうか? もはや大阪とか関係ないし。でも、どこにいてもいつも旨いものが手に入るって、実際現代社会のこのシステムってすごいですよね。これで偽装とかしなくてもよくなれば、もっといいのになあ。

うーむ。まとまりのない話になってしまいましたが、いよいよ食欲の秋ですね。



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『カプリコン・1』

2008年09月21日 | 映像
Capricorn One
監督 ピーター・ハイアムズ
脚本 ピーター・ハイアムズ(原作)
出演者 エリオット・グールド
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
撮影 ビル・バトラー
編集 ジェームス・ミッチェル
1977年 129分 アメリカ・イギリス

《あらすじ》
人類初の有人火星探査宇宙船カプリコン1号が打ち上げられるほんの数分前、突如クルーの3人は船内から連れ出され、砂漠の真ん中の無人の基地へと連行される。そして、無人のまま発射されたカプリコン1が果たすはずだった火星着陸という任務を、3人は地上で捏造するように強いられる。
およそ半年におよぶ捏造計画はほぼ成功するかに見えたが……巨大な国家計画に関わる人々の威信や陰謀、それによる犠牲などを描くサスペンスドラマ。




かなり面白かったです。あのバッサリ感! 昔の映画はほんとうにつくりが骨太でいいですね。じっくり考えるとアレ?アレ?という疑問はわいてきますが、全編を通して細かいことを気にさせない勢い、テーマだけに集中させる勢いがあります。面白かった。

しかし、まあよくもアメリカでこんな映画が作れましたね。ガッツがありますね、この人たち。「火星着陸のシーンが実は地球上で撮影されたものだった」というところなどは、「アポロ計画で人類が月面着陸したのは実はスタジオ撮影だった」とまことしやかに囁かれているのを思い出しました。ひょっとすると元ネタはこの映画だったのでしょうか。それとも、そういう疑惑は昔からあって、こういう映画になったのでしょうか。面白いですね。

さて、火星探査船などが出てくるあたりはSF風味がありますが、実際には国家の巨大プロジェクト遂行をめぐる陰謀やそれに巻き込まれて犠牲になる人々などを描いたサスペンスに仕上がっています。
最初は腑抜けだと思われていた記者が、命を狙われながらも徐々に真相に近付いていくあたりがハラハラします。

衝撃的だった場面としては、結末。えっ!? まさか、ここで終わるの!? (/o\;)プギャー!! というところでバッサリ終了。びびった。余韻とか一切なし。ある意味すがすがしいですが、結局どうなったのかあれこれと気になる感じです。

衝撃だった人物としては、農薬散布会社のじーさん。小型飛行機の超絶操縦テクを披露してくれました。がめつい性格もいい。チョイ役なのに、かなり強烈でした。こういう細かい面白さがあちらこちらにあって、結構楽しめる映画でしたね。




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業務連絡用 掲示板をつくりました

2008年09月21日 | 同人誌をつくろう!

同人のみなさま、こんにちは!

さて、今度の『ツルバミ』制作をはじめるにあたりまして、まずは業務連絡用に掲示板を設置してみました。

 ココカラ →→ yukidoke_BBS


実を言うと私は掲示板とはどういうものかをよく理解していないので、使い勝手の善し悪し・修正案など、ご意見、アドバイスをいただけると助かります。
ひとまず試験運用ですので、とりあえずのぞいて見て下さいませ☆

よろしくお願いします~♪


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We're after the same rainbow's end

2008年09月19日 | もやもや日記
彼らはおのずとそこへ辿り着いたように
私には見えました





短いけれども美しい曲 "Moon River" にこんな一節があるのを、ふと思い出した。

 " We're after the same rainbow's end--waiting 'round the bend... "


私はずっと虹を追いかけている。
いつか海に差し込んだその端に辿り着きたくて。

このあいだ2年ぶりの友人に会ってきた。
目の前には彼ひとりでも
彼女とふたりで居るような、彼らはまるで虹のなか。
私にはいっそう遠くはるかに見えた。

彼らがいるその虹の端が遠くに見えるほど、
私はもう一方の端に近づいたのだと思いたい。

人が生きるのは、そんなふうであってほしい。
私の目には、虹はいつもあまりに遠いのだけど、
ひょっとしたらその角を曲がったところで……



そんなことを考えていたら、"Moon River" という短いけれどたいそう美しい曲があることを、ふと思い出した。


 "Moon River"
 (music by Henry Mancini, lyrics by Johnny Mercer)

 Moon River, wider than a mile,
 I'm crossing you in style some day.
 Oh, dream maker, you heart breaker,
 wherever you're going I'm going your way.

 Two drifters off to see the world.
 There's such a lot of world to see.
 We're after the same rainbow's end--
 waiting 'round the bend,
 my huckleberry friend,
 Moon River and me.


ねえ、君らには馬鹿げてみえるかもしれないけれど、
ただ遠いということが私に虹を追いかけさせるんだよ。

いつのまにかひとりでもまるでふたりで居るようになった
君らは遠ざかり、私は少し寂しくなる。
だけど虹のように遠いということが、いつだって私に
君らを想わせていると言ったら、信じてくれるだろうか。


ほんとうは、こういうことを言いたかったのかもしれない。

私の懐かしい人たちよ
ここからじゃ遠いけど、いつかまた会いたい
ってことくらいは伝わるといい。
ほら、いつかのあのときみたいにさ。



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「夜の蝶」

2008年09月17日 | 映像(アニメーション)
ラウル・セルヴェ Nachtvlinders



ベルギーのアニメーション作家 ラウル・セルヴェの『夜の蝶』をみました。

す、す、すごいっ!!
この作品はベルギーの画家 ポール・デルヴォーの絵の世界を表現したものらしいのですが、まさに! たしかに見覚えのあるイメージが多数あります。まず、暗い大きな瞳の美女。それから夜汽車。幻想的で艶かしく美しい世界。

それが動いてる! 大きな瞳のふたりの美女、紫色のカーテン、夜の列車、鏡から出てきた自分とダンス、ゆったりと流れる音楽の響き。美しい。実に美しい。うっとりするではありませんか。はぁ~。参ったなあ。ハマるな、これは。

とにかく信じられないほどに綺麗です。もうだめ!

それから、とても官能的。登場するふたりの美女は、胸を大胆に露出したドレスを着ているのですが、エロいのはそこではなく、途中で登場する男が、美女の片方がドレスの裾からのぞかせている黒い革の編み上げ靴を「じっ」と見つめるところ。で、それに気付いたもう片方の美女が、扇子で「さっ」とそれを隠すのです。わ、わぁ~~~~! なぜか私の心拍数は急上昇。なぜだか刺激的。


ついでに、同じくラウル・セルヴェ氏の「ハーピア」という作品もみましたが、そちらはものすっごく怖かった……。恐怖…。女の顔を持つ貪欲な鳥、あれですよ。白い鷲のような大きな翼の鳥の頭が、スキンヘッドの美女。これだけでも怖いのに、これがガツガツとすべてを食い散らかすところなどはもう見ていられません。こえー!
たいそう怖かったですが、ストーリーは良かったな。ああいうのは好きです。


ラウル・セルヴェ作品集のDVDが出ています。欲しいな。
ついでに、ポール・デルヴォーの絵ももっとみたくなった。


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