息子に読み聞かせるお話として、最初は何がいいだろうかとあれこれ考えていました。
『くまのプーさん』かなあ。しかしあれはイーヨーの扱いがあまりにもあんまりだからなぁ。
『ピーター・ラビット』かな。待てよ、あれも色々ヤバいよな。冒頭からしてピーターの父うさぎが肉のパイになっちゃってるし。ベンジャミン・バニーの父は立派だったのにベンジャミンはなんだかろくでなし風味になっちゃうし、ジマイマおばさんの卵は食われちまうし。
イギリスはもうちょっと後にするか…。
では宮沢賢治かな。…あれ、本が見あたらない。えーと、どこへしまったのだっけ。ないな。
しょうがない。ストルガツキーから入るか。いきなり『収容所惑星』は難しいよなー。うーん、うーん。
そうやって本棚の前をウロウロしていたら、アンデルセンの『絵のない絵本』が目に留まりました。おお、これにしよう。
なにげなく手に取った1冊ですが、息子に初めて読み聞かせる物語にはよいですね。とても美しいお話です。「第二夜」まで読んだところで息子は寝てしまいました。こらこら、まだ10ページも読んでいないぞ…
いつか、息子のところへも本物のお月様が物語を聞かせにやってきてくれるでしょうか。いつか、息子もまた月の晩、自分の足元に黒い暗い影が落ちているのを眺めるのでしょうか。それともただ月を見上げてその美しさにうっとりするだけだろうか。そうだ、月はいつだって美しい。
アンデルセン作 大畑末吉訳(岩波文庫)
《内容》
ひとりぼっちで町に出てきている貧しい絵かきの若者をなぐさめに、月は毎晩やってきて、自分が空の上から見た、いろいろな国のいろいろな人に起ったできごとを、あれこれと話してくれた。それは、清らかな月の光にも似た、淡く美しい物語のかずかずであった。生涯旅を愛したアンデルセン(1805-75)らしいロマンティックな1冊。
《この一文》
“ ほんとうにふしぎなことです! ぼくは何かに深く心を動かされると、手と舌がまるでしばりつけられているような気持ちになるのです。そして、心のなかにはっきりうかんでくることでも、それをそのまま絵にかくこともできなければ、また、言葉に言いあらわすこともできないのです。 ”