コロンビアの作家、ガブリエル・ガルシア=マルケスが亡くなりましたね。ご冥福をお祈りします。そして多大なる感謝を。
ここにもこれまでに何度も書いていますが、18歳の時にこの人と内田百﨤に出会っていなければ、その後の私の人生は全然違ったものになったかもしれません。私はお話を読むのは好きでしたが、物語を読むということの本当の意味を知ったのはガルシア=マルケスの短篇集『エレンディラ』と内田百﨤の『冥途』によってでした。小説の世界がこんなにも豊かで不可思議で美しく、そしてこんなにも広く深いものだとは! 衝撃だったなあ。ちなみに私は『エレンディラ』の中では「大きな翼のある、ひどく年取った男」と「この世でいちばん美しい水死人」が好きです。びっくりするほどよぼよぼで埃っぽかった。びっくりするほど海が美しかった。薔薇の香り。そしてエステーバン。うむ、彼はエステーバンに違いないよ。こんなふうに物語が存在し得るなんて、私には想像もつかなかったものです。ほとんどまったく異次元でした。南米文学は凄くて素敵だ。そのことを教えてくれたガルシア=マルケスには心から感謝を捧げたいです。
さよなら、ガルシア=マルケス。
私はあなたの作品をいくつも読んだけれども、よりによって最大の傑作『百年の孤独』はまだ読んでいないのです。でも、だからこそ私はこれからも安心して生きていけます。私をもう一度変えるかもしれない衝撃が、まだ私を待っている。お守りのように大事に、ずっと持っている。
ありがとう、ガルシア=マルケス。どうか安らかに。