青柳昌宏 (講談社BLUE BACKS)
《内容》
序 章:それでもペンギンは飛んでいる
第1章:いろいろなペンギン
第2章:ペンギンとはどんな生き物か
第3章:ペンギンはなぜ恍惚状態になるのか
第4章:ペンギンはなぜ保育所をつくるのか
第5章:ペンギンはなぜ礼装をしているのか
第6章:ペンギンはなぜ頭に意味をもたせるのか
第7章:ペンギンはいつ、どこで出現したのか
第8章:最新ペンギン事情
《この一文》
“南極のフィールドでは、一人で歩いていると時々遠くからペンギンに呼びかけられることがある。この呼びかけはコンタクトコールといわれる鳴き声で、返事をしてやると、それに答えながら雪渓を駆けおりて、目の前までやってくるといった愉快な経験をすることができる。ただし、誰でも鳴き真似が通用するわけではなく、ペンギン語=ペングィッシュの第一課をマスターしていないといけない。
――「第6章 ペンギンはなぜ頭に意味をもたせるのか」 ”
私の愛読書です。もう何十回となく読み返していますが、青柳先生のユーモア溢れる分かりやすい本文よりも、ついつい数多く収められたペンギンの可愛い写真や挿絵に気を取られて、毎度あまり内容が頭に入りません。それだけがこの本の難点でしょうか。
とにかくペンギンは可愛い。どうして人はこんなにもペンギンに惹き付けられてしまうのか、それは分かりませんが、この本を読めばそんなペンギンたちに関する基礎的な知識を身に付けることができます。
有名なイワトビペンギンってマカロニペンギン属だって、知ってました? ヒゲペンギンはアデリーペンギン属なんですよ! ついでに、アデリーペンギンは「渡り」をする鳥で、繁殖のときだけ島へ帰ってくるらしい。いやー、ためになる!
著者によるそれぞれのペンギンについての解説文がとても面白いので、2つばかり部分的に引用してみましょう。
(下のペンギン絵は私によるもの)
【キングペンギン】(オウサマペンギン)エンペラーペンギン属
繁殖期間は14~16ヶ月を必要とするため、完全な繁殖ができるのは3年間で2回にすぎない。人間の影響から隔離された孤島に分布しているので、生息状況は安定しており、個体数はやや増加傾向。一見、王様ぶってはいるが、人の鞄を覗きにやってきたり、ゴムボートをみんなで追っかけてきたりする癖は、どうしてもなおらない。
【アデリーペンギン】アデリーペンギン属
もっとも表情豊かなペンギンで、騒がしく、喧嘩が絶えず、雛は泥んこ。呼ぶと返事をしながら走ってきて、こちらの人相を片目で観察する。アデリーこそペンギンのなかのペンギンだ。
ペンギンは可愛いだけの生き物ではない、ということも分かる実用書。
でもやっぱり可愛いな。