私の生家は、福島県の通称、中通り地方の長閑な農村地帯にあり、はっきり言うと田舎町です。家は、ちょっとした高台というか山の上方にあります。戦国時代に山城が築かれていたみたいで、地名も『館』です。ちっちゃな城があったといわれていて、『二の丸』とか『段の下』という地名が付いている場所があります。元々は、山の一番上の方に屋敷があったみたいですが、少しでも耕作地を増やしたいという昔の人の知恵で、江戸時代には、中腹のあたりに家をつくり替えたようです(ブルドーザーなんかで土地の区画整理をしたときに、江戸時代の生活雑器が地中から出てきたことをおぼろげながら覚えています)。おそらく小さな館(お城)があったみたいで、春山城と呼ばれていたそうです。歴史辞典で一度、自分の家のことが紹介されているのを見たことがあります。おそらく『外敵』が来ても防衛できるように山の頂上に館を造り、北東南は、かなり険しい傾斜地になっていて、西の方は、あきらかに人工的な堀を造った跡がいまでも残っています(鎧返し? 私は幼い頃、大川原家18代目とよく両親と祖母から言われましたね。私の名前は、初代と同じ『有重』と相成ったのです。この名前は、小学生の頃は本当に嫌でしたね。よく同級生から冗談で「アリ死げ!」と地面を這いつくばっている蟻を踏みつぶすような仕草をされましたので。これも無意識のうちにコンプレックスが刷り込まれていく要因かもしれませんね)。でも父親の気持ちを察すると、どうしても文久年間に傾いてしまった大川原家の家運を立て直したい、大川原家再興のために初代の名前をつけたみたいです。家運が傾いた直接の原因は、江戸文久年間に物乞いが来て、食べ物を分け与えたのだそうです。そのときの料理の残り火がもとで、火事になり家が全焼してしまったそうです。そのあとは、広大な田畑の切り売り。もしかしたら、文人趣味かもしれませんが(自分の都合のいいように解釈しています)、あまり働かなかったみたいで、すべて良きに計らえだったようです。きっと小作人もたくさん使って酷使してたんでしょうね。つい最近、判明したことなんですが、父が亡くなる4、5年前に観音寺という真言宗のお寺のお墓の土地が、すべて大川原家の先祖の名義のままなので、お寺のお坊さまから名義を書き換えてほしいと言われ、父は印鑑を押したそうです。何百軒という家のお墓の土地がすべて大川原家の所有地だったなんて、びっくりしちゃいましたね。お墓の土地所有者とかいわれても、困っちゃいますよね。確かに私の家のお墓は、室町時代の五輪の塔が四つほどあり、奉公していた方々のお墓もちょっと離れたところにあります。戒名は先祖代々、院殿居士です。
院御時延元二丁丑歳奥州國司顕家御供士北面大河原源六左衛門尉藤原有重
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此間三百年不分
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2代 大學
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3代 但馬
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4代 内蔵之尉
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5代 源五郎
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6代 三太郎
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7代 仁右衛門
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8代 仁右衛門
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9代 倉之丞
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10代 むめ
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11代 仁右衛門
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12代 三男豊之助平作
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13代 三男鉄吾
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14代 二男仁助後ニ平吉
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15代 喜代多
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16代 喜次
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17代 正蔵
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18代 有重
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19代 福寿
以上が大川原家の家系図です。はっきり言ってもの凄い長男の重圧でしたね、この家系図が。
大川原の一族は、みんな大概お人好しで、人を疑うことをしない田舎者です。どちらかというと、騙されやすいタイプかもしれませんね。父は生前、これから紹介する『心の糧七ヶ條』という紙を貼って眺めていたみたいです。
心の糧七ヶ條
一、 此の世の中で一番楽しく立派なことは生涯を貫く仕事を持つことである
一、 此の世の中で一番さみしいことは自分のする仕事のないことである
一、 此の世の中で一番尊いことは人の為に奉仕して決して恩に着せないことである
一、 此の世の中で一番みにくいことは他人の生活をうらやむことである
一、 此の世の中で一番みじめなことは教養のないことである
一、 此の世の中で一番恥であり悲しいことはうそをつくことである
一、 此の世の中で一番素晴らしいことは常に感謝の念を忘れず報恩の道を歩むことである
院御時延元二丁丑歳奥州國司顕家御供士北面大河原源六左衛門尉藤原有重
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此間三百年不分
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2代 大學
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3代 但馬
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4代 内蔵之尉
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5代 源五郎
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6代 三太郎
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7代 仁右衛門
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8代 仁右衛門
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9代 倉之丞
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10代 むめ
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11代 仁右衛門
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12代 三男豊之助平作
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13代 三男鉄吾
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14代 二男仁助後ニ平吉
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15代 喜代多
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16代 喜次
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17代 正蔵
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18代 有重
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19代 福寿
以上が大川原家の家系図です。はっきり言ってもの凄い長男の重圧でしたね、この家系図が。
大川原の一族は、みんな大概お人好しで、人を疑うことをしない田舎者です。どちらかというと、騙されやすいタイプかもしれませんね。父は生前、これから紹介する『心の糧七ヶ條』という紙を貼って眺めていたみたいです。
心の糧七ヶ條
一、 此の世の中で一番楽しく立派なことは生涯を貫く仕事を持つことである
一、 此の世の中で一番さみしいことは自分のする仕事のないことである
一、 此の世の中で一番尊いことは人の為に奉仕して決して恩に着せないことである
一、 此の世の中で一番みにくいことは他人の生活をうらやむことである
一、 此の世の中で一番みじめなことは教養のないことである
一、 此の世の中で一番恥であり悲しいことはうそをつくことである
一、 此の世の中で一番素晴らしいことは常に感謝の念を忘れず報恩の道を歩むことである