太陽光発電買い取り スタートダッシュに期待より転載
太陽光などで発電した電気の買い取り価格が固まった。業界の希望をほぼ受け入れた高めの価格設定となり、再生可能エネルギーの導入に拍車がかかりそうだ。
電力の「固定価格買い取り制度」が7月から始まるのに向けて、経済産業省の調達価格等算定委員会が検討を重ねてきた。
その結果、太陽光発電は1キロワット時当たり42円、風力は23円10銭。買い取り期間は事業用の太陽光で20年、家庭用で10年、風力は20年などとした。
いずれも、太陽光発電協会や日本風力発電協会が希望していた価格に、ほぼ沿った内容だ。メガソーラーを手掛ける企業などからも歓迎の声が上がっており、企業にとっては最低限のリスクで参入できる環境が整うことになる。
同委員会で委員長を務める植田和弘京大教授が「再生可能エネルギーを促進するための一種の投資だ」と説明したとおり、狙いは明白だ。再生エネルギー普及促進のメッセージをはっきりと打ち出したことになり、委員会の決断を率直に評価したい。
すでにヨーロッパでは買い取り制度が導入され、再生エネルギーの普及が進んでいる。今回の価格設定では、企業が海外諸国と同じ水準の利益を上げられるようにするよう配慮がなされた。
これにより、現在は全発電量のうち1割程度に過ぎないシェアを、一気に引き上げようというわけだ。経済産業省の試算によると、再生エネルギー関連の世界市場は、2020年には86兆円規模にまで急拡大していく。まさに成長分野であり、雇用創出と相まって、新たな基幹産業として期待は大きい。
ただ、気がかりなのは、家計の負担がどれほど増すかという点だ。再生エネルギーで発電した電力は電力会社が買い取るが、その分は電気料金に上乗せされる。枝野幸男経済産業相は会見で、標準家庭で初年度の電気料金に月60~120円の上乗せが生じるとの試算を明らかにした。
原子力の比率を下げ、再生エネルギーへシフトしていく。その趣旨に立てば、ある程度の負担増は国民的な理解が得られるだろう。だが、原発停止でコストがかさんだ電力会社が便乗値上げを図りはしないだろうか。消費者の目からガラス張りの価格設定となるよう、政府には工夫を求めたい。
また、悪質業者の取り締まりも喫緊の課題だ。家庭で余った電力が買い取られることになり、太陽光発電システムを取りつけるよう一般家庭に売り込む業者も増えている。これに伴い、全国の消費生活センターには、太陽光発電の導入をめぐるトラブルの相談が急増している。補助金制度や買い取り制度についてうその説明をしたり、強引な勧誘をするなどのケースが寄せられているようだ。
すでに、内閣府の消費者委員会が「太陽光発電システムそのものに対する消費者からの信頼をも損なう」として対応するよう提言を出した。取り締まりが後手に回らないよう、規制を急ぐ必要がある。
再生エネルギーの買い取り制度で普及に弾みをつけ、将来の基幹電力として、また新たな産業の柱として再生エネルギー分野を育てていく。家庭や消費者への影響にもしっかり目配りしながら、政府には着実に進めてもらいたい。(古賀史生)