看護師が足りない ~原発周辺の地域医療は今~より転載
2012年11月27日(火)NHKニュース
阿部
「東京電力福島第一原発の事故から1年8か月あまり。
立ち入りや居住が制限されている原発事故の避難指示区域の周りの地域では、新たな地域医療の課題が浮かび上がっています。」
鈴木
「原発事故では、一時、医療関係者も多くが避難しましたが、事故から1年8か月あまりたった今も特に『看護師』が事故の前に働いていた病院に戻れなくなっています。
この看護師不足が地域医療に深刻な影響を与えています。」
看護師が足りない
先週、都内で看護師の就職フェアが開かれました。
会場に集まったのは、福島県の25の病院です。
原発事故で、一時、避難した医療従事者の内、特に看護師が戻って来られず、十分な人数を確保できていません。
一人でも確保しようと来場者に働きかけます。
病院担当者
「放射能の問題でやめた人もいる中で、補充ができていない。
今は求人を出しても、なかなか応募すら来ない。」
病院担当者
「短期間でもいいので手伝っていただければ。」
その中で、熱心に訴えかけている人がいました。
高野病院の事務長、高野己保(みお)さんです。
「私たちが頑張らないと地域医療が崩壊する状況。
お力を貸していただけるようならと思い、今日この場に来ている。」
福島県広野町、高野病院は福島第一原発から25kmの場所にあります。
原発事故のあと、放射能への不安から、医療スタッフが次々と避難。
今なお、当時の数には戻っていません。
特に深刻なのが看護師不足です。
入院患者を何人受け入れられるかは、看護師の数に左右されます。
看護の質を保つためです。
高野病院の場合、33人いた看護師が震災後、22人に減りました。
このため、受け入れられる入院患者の数は120人から90人程度に減ってしまいました。
ベッドは常に満床に近く、新たに入院患者を受け入れるのは難しい状況です。
高野己保さん
「今いる患者とその家族を守らないといけない。
皆、大変な状況でやっている。」
病院では、一時避難した看護師に戻ってもらえないか呼びかけていますが、多くが戻れずにいます。
戻れない理由は何なのか?その一人を訪ねました。
原発事故の直後、根本さんは、夫と息子の3人で、福島県中部に避難しました。
元の病院に戻れないことを心苦しく感じていると言います。
根本栄子さん
「すごく不安があって、家族をとってしまった。
本当に申しわけない。」
根本さんの自宅は原発から15キロ。
今は住むことができません。
避難先で新たな生活を築かざるをえませんでした。
根本さんは、高齢者施設で働き口を見つけました。
息子は、避難先の高校に進学することになりました。
根本栄子さん
「ここで生活しないといけないし、向こうに行っても子供が転校になってしまう。
高校生なので溶け込むのも大変。
やっぱり(高野病院に)行けなかった。」
こうした中、原発事故で避難を強いられている地域の周辺では、新たな課題が生まれています。
病院に入院する高齢者が、増え続けているのです。
福島第一原発周辺の現在の避難指示区域です。
ここで暮らすことは制限されているため多くの人たちがふるさとを離れました。
震災から1年8ヶ月がたち、ふるさとの近くで暮らしたいと、避難した人たちがいわき市などに戻り始めています。
いわき市では、震災前よりも、住民がおよそ1万6千人増えました。
いわき市内の仮設住宅です。
立ち入りが制限されている大熊町(おおくままち)の人たちが暮らしています。
大勢のお年寄りがふるさとを思いながら、いわき市で暮らしています。
「いわきはいいじゃない。
住むには気候もいいし。」
「暮らして住みやすい、体が慣れているから。」
看護師不足に悩む高野病院。
入院患者の半数近くが、原発事故で避難した人たちです。
早川寿美子さんは、8月に避難先の施設から、高野病院に移ってきました。
避難生活の影響で認知症が進み、寝たきりの状態が続いています。
「よっぽど精神的な苦痛があった。」
「相当の負担だったと思う。」
高野病院では、看護師を確保できないまま、増え続ける高齢者に対応していますが、限界に近づいていると言います。
看護師
「震災前とは人数も違う、時間に追われる、業務も減っていない。」
看護師
「高齢者なので急変しないともかぎらないので、気になって精神的な負担は大きい。」
寒さが厳しくなると、さらに入院患者は増えると予想されています。
しかし、看護師を増やせるめどは立っていません。
高野己保さん
「職員一人一人が大丈夫がんばると言っても、いつまで続くのか示してあげられない。
先が見えない。
今は乗り切れたとしても、あとどれだけ頑張ればいいのか。」
不足する看護師。
増え続ける高齢者。
十分な医療を提供することが出来るのか?
解決策を見いだせないまま厳しい冬がやってきます。
阿部
「冒頭でご紹介した看護師の就職フェアのあとも福島県は引き続き、看護師確保の取り組みを続けています。」
鈴木
「病院では、短期間でもいいので、医師やヘルパーなども含め、応援に来てくれるスタッフを広く募集しているということです。」
2012年11月27日(火)NHKニュース
阿部
「東京電力福島第一原発の事故から1年8か月あまり。
立ち入りや居住が制限されている原発事故の避難指示区域の周りの地域では、新たな地域医療の課題が浮かび上がっています。」
鈴木
「原発事故では、一時、医療関係者も多くが避難しましたが、事故から1年8か月あまりたった今も特に『看護師』が事故の前に働いていた病院に戻れなくなっています。
この看護師不足が地域医療に深刻な影響を与えています。」
看護師が足りない
先週、都内で看護師の就職フェアが開かれました。
会場に集まったのは、福島県の25の病院です。
原発事故で、一時、避難した医療従事者の内、特に看護師が戻って来られず、十分な人数を確保できていません。
一人でも確保しようと来場者に働きかけます。
病院担当者
「放射能の問題でやめた人もいる中で、補充ができていない。
今は求人を出しても、なかなか応募すら来ない。」
病院担当者
「短期間でもいいので手伝っていただければ。」
その中で、熱心に訴えかけている人がいました。
高野病院の事務長、高野己保(みお)さんです。
「私たちが頑張らないと地域医療が崩壊する状況。
お力を貸していただけるようならと思い、今日この場に来ている。」
福島県広野町、高野病院は福島第一原発から25kmの場所にあります。
原発事故のあと、放射能への不安から、医療スタッフが次々と避難。
今なお、当時の数には戻っていません。
特に深刻なのが看護師不足です。
入院患者を何人受け入れられるかは、看護師の数に左右されます。
看護の質を保つためです。
高野病院の場合、33人いた看護師が震災後、22人に減りました。
このため、受け入れられる入院患者の数は120人から90人程度に減ってしまいました。
ベッドは常に満床に近く、新たに入院患者を受け入れるのは難しい状況です。
高野己保さん
「今いる患者とその家族を守らないといけない。
皆、大変な状況でやっている。」
病院では、一時避難した看護師に戻ってもらえないか呼びかけていますが、多くが戻れずにいます。
戻れない理由は何なのか?その一人を訪ねました。
原発事故の直後、根本さんは、夫と息子の3人で、福島県中部に避難しました。
元の病院に戻れないことを心苦しく感じていると言います。
根本栄子さん
「すごく不安があって、家族をとってしまった。
本当に申しわけない。」
根本さんの自宅は原発から15キロ。
今は住むことができません。
避難先で新たな生活を築かざるをえませんでした。
根本さんは、高齢者施設で働き口を見つけました。
息子は、避難先の高校に進学することになりました。
根本栄子さん
「ここで生活しないといけないし、向こうに行っても子供が転校になってしまう。
高校生なので溶け込むのも大変。
やっぱり(高野病院に)行けなかった。」
こうした中、原発事故で避難を強いられている地域の周辺では、新たな課題が生まれています。
病院に入院する高齢者が、増え続けているのです。
福島第一原発周辺の現在の避難指示区域です。
ここで暮らすことは制限されているため多くの人たちがふるさとを離れました。
震災から1年8ヶ月がたち、ふるさとの近くで暮らしたいと、避難した人たちがいわき市などに戻り始めています。
いわき市では、震災前よりも、住民がおよそ1万6千人増えました。
いわき市内の仮設住宅です。
立ち入りが制限されている大熊町(おおくままち)の人たちが暮らしています。
大勢のお年寄りがふるさとを思いながら、いわき市で暮らしています。
「いわきはいいじゃない。
住むには気候もいいし。」
「暮らして住みやすい、体が慣れているから。」
看護師不足に悩む高野病院。
入院患者の半数近くが、原発事故で避難した人たちです。
早川寿美子さんは、8月に避難先の施設から、高野病院に移ってきました。
避難生活の影響で認知症が進み、寝たきりの状態が続いています。
「よっぽど精神的な苦痛があった。」
「相当の負担だったと思う。」
高野病院では、看護師を確保できないまま、増え続ける高齢者に対応していますが、限界に近づいていると言います。
看護師
「震災前とは人数も違う、時間に追われる、業務も減っていない。」
看護師
「高齢者なので急変しないともかぎらないので、気になって精神的な負担は大きい。」
寒さが厳しくなると、さらに入院患者は増えると予想されています。
しかし、看護師を増やせるめどは立っていません。
高野己保さん
「職員一人一人が大丈夫がんばると言っても、いつまで続くのか示してあげられない。
先が見えない。
今は乗り切れたとしても、あとどれだけ頑張ればいいのか。」
不足する看護師。
増え続ける高齢者。
十分な医療を提供することが出来るのか?
解決策を見いだせないまま厳しい冬がやってきます。
阿部
「冒頭でご紹介した看護師の就職フェアのあとも福島県は引き続き、看護師確保の取り組みを続けています。」
鈴木
「病院では、短期間でもいいので、医師やヘルパーなども含め、応援に来てくれるスタッフを広く募集しているということです。」