日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(703)「選言」と「仮言命題」と「論語・雍也 一六」と「漢文法基礎(加地伸行)のマチガイ」。

2020-09-04 15:05:03 | 訓読・論理学

(01)
(α)
1   (1)   P∨ Q  A
 2  (2)  ~P&~Q  A
  3 (3)   P     A
 2  (4)  ~P     2&E
 23 (5)   P&~P  34&I
  3 (6)~(~P&~Q) 25RAA
(β)
   7(7)      Q  A
 2  (8)     ~Q  2&I
 2 7(9)   Q&~Q  78&I
   7(ア)~(~P&~Q) 25RAA
(γ)
1   (イ)~(~P&~Q) 1367ア∨E
従って、
(01)により、
(02)
(α)「Pである」ならば「~(~P&~Q)」であり、尚且つ
(β)「Qである」ならば「~(~P&~Q)」である。が故に、
(γ)いづれにせよ、  「~(~P&~Q)」である。
従って、
(01)(02)により、
(03)
「命題論理」に於ける、
(α)P∨Q≡「Pであるか、または、Qである。」
といふ「論理式(選言)」は、
(α)P∨Q≡「Pであるか、または、Qであるか(、または、PであってQである)。」
といふ「意味」である。
従って、
(03)により、
(04)
(ⅰ)Pであるか、または、Qである。 然るに、
(ⅱ)Pである。 故に、
(ⅲ)Qでない
といふ「推論(三段論法)」は、「命題論理」に於いては、「妥当」ではない
然るに、
(05)
(ⅰ)
1     (1)    P∨ Q   A
 2    (2)   ~P&~Q   A
  3   (3)    P      A
 2    (4)   ~P      2&E
 23   (5)    P&~P   34&I
  3   (6) ~(~P&~Q)  25RAA
   7  (7)       Q   A
 2    (8)      ~Q   2&I
 2 7  (9)    Q&~Q   78&I
   7  (ア) ~(~P&~Q)  25RAA
1     (イ) ~(~P&~Q)  1367ア∨E
    ウ (ウ)   ~P      A
     エ(エ)      ~Q   A
    ウエ(オ)   ~P&~Q   ウエ&I
1   ウエ(カ) ~(~P&~Q)&
           (~P&~Q)  6オ&I
1   ウ (キ)     ~~Q   エカRAA
1   ウ (ク)       Q   キDN
1     (ケ)   ~P→ Q   ウクCP
(ⅱ)
1     (1)   ~P→ Q   A
 2    (2)   ~P&~Q   A
 2    (3)   ~P      2&E
12    (4)       Q   13MPP
 2    (5)      ~Q   2&E
12    (6)    Q&~Q   45&I
1     (7) ~(~P&~Q)  26RAA
  8   (8) ~( P∨ Q)  A
   9  (9)    P      A
   9  (ア)    P∨ Q   9∨I
  89  (イ) ~( P∨ Q)&
           ( P∨ Q)  8ア&I
  8   (ウ)   ~P      9イRAA
    エ (エ)       Q   A
    エ (オ)    P∨ Q   エ
  8 エ (カ) ~( P∨ Q)&
           ( P∨ Q)  8オ&I
  8   (キ)      ~Q   エカRAA
  8   (ク)   ~P&~Q   ウキ&I
1 8   (ケ) ~(~P&~Q)&
           (~P&~Q)  7ク&I
1     (コ)~~( P∨ Q)  8ケRAA
1     (サ)  ( P∨ Q)  コDN
従って、
(05)により、
(06)
①   P∨Q≡「Pであるか、または、Qであるか(、または、PであってQである)。」
② ~P→Q≡「Pでないならば、Qである。」
に於いて、
①=② である。
従って、
(06)により、
(07)
(ⅰ)Pであるか、または、Qであるか(、または、PであってQである)。 然るに、
(ⅱ)Pでない。 故に、
(ⅲ)Qである。
といふ「推論(選言三段論法)」は、「妥当」である
従って、
(04)(07)により、
(08)
「記号」で書くとして、
(a)P∨Q, P├ ~Q
(b)P∨Q,~P├  Q
に於いて、
(a)は、「推論」として、「妥当」ではなく
(b)は、「推論」として、「妥当」である
然るに、
(06)により、
(09)
①  P∨Q
② ~P→Q
に於いて、
P=~P
といふ「代入」を行ふと、
①  ~P∨Q
② ~~P→Q
に於いて、
①=② である。
然るに、
(09)により、
(10)
「二重否定律」により、
① ~P∨Q
②  P→Q
に於いて、
①=② である(含意の定義)。
然るに、
(11)
 ―「ド・モルガンの法則」の「証明」―
(ⅰ)
1   (1) ~(~P&~Q) A
 2  (2) ~( P∨ Q) A
  3 (3)    P     A
  3 (4)    P∨ Q  3∨I
 23 (5) ~( P∨ Q)&
         ( P∨ Q) 24&I
 2  (6)   ~P     35RAA
   7(7)       Q  A
   7(8)    P∨ Q  7∨I
 2 7(9) ~( P∨ Q)&
         ( P∨ Q) 28&I
 2  (ア)      ~Q  7RAA
 2  (イ)   ~P&~Q  6イ&I
12  (ウ) ~(~P&~Q)&
         (~P&~Q) 1ウ&I
1   (エ)~~( P∨ Q) 2エRAA
1   (オ)    P∨ Q  オDN
(ⅱ)
1   (1)   P∨ Q  A
 2  (2)  ~P&~Q  A
  3 (3)   P     A
 2  (4)  ~P     2&E
 23 (5)   P&~P  34&I
  3 (6)~(~P&~Q) 25RAA
   7(7)      Q  A
 2  (8)     ~Q  2&E
 2 7(9)   Q&~Q  78&I
   7(ア)~(~P&~Q) 29RAA
1   (イ)~(~P&~Q) 1367ア∨E
従って、
(10)(11)により、
(12)
「含意の定義」と「ド・モルガンの法則」と「二重否定律」により、
①   ~P&Q →R
②  ~(P&Q)→R
といふ「論理式」は、
① ~(~P&Q)∨R
② ~~(P&Q)∨R
といふ「論理式」に、更には、
①   (P∨~Q)∨R
②   (P& Q)∨R
といふ「論理式」に、「等しい」。
従って、
(12)により、
(13)
①  {~P&Q →R}⇔{(P∨~Q)∨R}
②{~(P&Q)→R}⇔{(P& Q)∨R}
といふ「2つの等式」が、成立する。
従って、
(08)(13)により、
(14)
①{(P∨~Q)∨R},~(P∨~Q)├  R
②{(P& Q)∨R},~(P& Q)├  R
といふ「推論」、すなはち、
①  {~P&Q →R},~(P∨~Q)├  R
②{~(P&Q)→R},~(P& Q)├  R
といふ「推論」は「妥当」であるが、
①{(P∨~Q)∨R}, (P∨~Q)├ ~R
②{(P& Q)∨R}, (P& Q)├ ~R
といふ「推論」、すなはち、
①  {~P&Q →R}, (P∨~Q)├ ~R
②{~(P&Q)→R}, (P& Q)├ ~R
といふ「推論」は「妥当」ではない
然るに、
(15)
(ⅰ)
① 不有祝鮀之佞、而有宋朝之美、難乎、免於今之世矣=
① 不〔有(祝鮀之佞)〕、而有(宋朝之美)、難乎、免(於今之世)矣⇒
① 〔(祝鮀之佞)有〕不、而(宋朝之美)有、難乎、(於今之世)免矣=
① 〔(祝鮀の佞)有ら〕ずして、而も(宋朝の美)有らば、難いかな、(今に世に)免るること=
① 〔(祝鮀のやうな弁舌が)有る〕のではなく、而も(宋朝のやうな美貌が)有るだけならば、難しいことだよ、(今の時世を)無事に送ることは。
(ⅱ)
② 不有祝鮀之佞、而有宋朝之美、難乎、免於今之世矣=
② 不〔有(祝鮀之佞)、而有(宋朝之美)〕、難乎、免(於今之世)矣⇒
② 〔(祝鮀之佞)有、而(宋朝之美)有〕不、難乎、(於今之世)免矣=
② 〔(祝鮀の佞)有りて、而も(宋朝の美)有ら〕ずんば、難いかな、(今の世矣)免るること=
② 〔(祝鮀のやうな弁舌が)有って、而も(宋朝のやうな美貌が)有る〕といふ、ことではないならば、難しいことだよ、(今の時世を)無事に送ることは。
然るに、
(16)
 実はどちらも意味が通じるのである。
① のほうは、注といって、伝統的な解釈であるが、
② のほうは、注といって、朱熹(朱子)の解釈なのである。
(二畳庵主人、漢文法基礎、1984年10月、325・326頁)
然るに、
(17)
P=祝鮀のやうな弁舌が有る。
Q=宋朝のやうな美貌が有る。
R=今の時世を無事に送ることは、難しい。
とするならば、
①  ~P&Q →R
② ~(P&Q)→R
といふ「論理式」は、
① 不〔有(祝鮀之佞)〕、而有(宋朝之美)、難乎、免(於今之世)矣。
② 不〔有(祝鮀之佞)、而有(宋朝之美)〕、難乎、免(於今之世)矣。
といふ「漢文」に「等しい」。
従って、
(14)(17)により、
(18)
①  ~P&Q→R
① 不〔有(祝鮀之佞)〕、而有(宋朝之美)、難乎、免(於今之世)矣。
に関して言へば、
① {~P&Q→R},~(P∨~Q)├ R
といふ「推論」は、「正しい」。
然るに、
(19)
「ド・モルガンの法則」により、
① ~(P∨~Q) は、
①  ~P& Q  に「等しい」。
従って、
(18)(19)により、
(20)
① {~P&Q→R},~(P∨~Q)├ R
といふ「推論」、すなはち、
① {~P&Q→R},~P&Q├ R
といふ「推論(MPP)」は、当然、「正しい」。
然るに、
(14)(17)により、
(21)
①{~P&Q→R},  (P∨~Q)├ ~R
といふ「推論」、すなはち、
①{(P∨~Q)∨R},(P∨~Q)├ ~R
といふ「推論」は、「正しくない」。
然るに、
(22)
「連言除去(&E)」と「選言導入(∨I)」により、
(ⅰ) P& Q
(ⅱ) P&~Q
(ⅲ)~P& Q
(ⅳ)~P&~Q
に於いて、
(ⅰ)ならば、(P∨~Q)である。
(ⅱ)ならば、(P∨~Q)である。
(ⅲ)ならば、(P∨~Q)でない
(ⅳ)ならば、(P∨~Q)である。
従って、
(21)(22)により、
(23)
(1){~P&Q→R},(P∨~Q)├ ~R
といふ「推論」は、「正しくない」が故に、
(ⅰ){~P&Q→R},( P& Q)├ ~R
(ⅱ){~P&Q→R},( P&~Q)├ ~R
(ⅲ){~P&Q→R},(~P& Q)├ ~R
(ⅳ){~P&Q→R},( P&~Q)├ ~R
といふ「3つの推論」は、「正しくない」。
従って、
(23)により、
(24)
(ⅰ){~P&Q→R},( P& Q)├ ~R
といふ「推論」は、「正しくない」。
然るに、
(25)
「交換法則」により、
① ~P&Q
①  P&Q
といふ「連言」は、それぞれ、
① Q&~P
① Q& P
といふ「連言」に「等しい」。
従って、
(24)(25)により、
(26)
(ⅰ){~P&Q→R},(P&Q)├ ~R
(〃){Q&~P→R},(Q&P)├ ~R
といふ「推論」は、「正しくない」。
然るに、
(17)により、
(27)
 P=弁舌がある  (祝鮀のやうな弁舌が有る)。
 Q=ハンサムである(宋朝のやうな美貌が有る)。
 R=やっていけない(今の時世を無事に送ることは、難しい)。
~R=やっていける (今の時世を無事に送ることは、易しい)。
とするならば、
① ~P&Q→R
といふ「論理式(命題)」は、
① 不〔有(祝鮀之佞)〕、而有(宋朝之美)、難乎、免(於今之世)矣。
といふ「漢文」に「等しい」。
(25)(26)(27)により、
(28)
① ~P&Q→R
① Q&~P→R
といふ「論理式(命題)」は、
① 不〔有(祝鮀之佞)〕、而有(宋朝之美)、難乎、免(於今之世)矣。
といふ「漢文」に「等しい」。
従って、
(21)~(28)により、
(29)
①{(P∨~Q)∨R},(P∨~Q)├ ~R
といふ「推論」、すなはち、
①  {Q&~P→R},(Q& P)├ ~R
といふ「推論」、すなはち、
(ⅰ){ハンサムではあっても、弁舌がなければ、やってゆけない}。  (ハンサムであって、弁舌がある)。従って、やっていける。
(〃){ハンサムの上に弁舌を兼ね備えてこそ、はじめてやってゆける}。(ハンサムであって、弁舌がある)。従って、やっていける。
といふ「推論(前件否定誤謬)」は、「正しくない」。
cf.
 ①{Q&~P→R},(Q&P)├ ~R
 であれば、
 ①{Q&~P→R},(Q&~~P)├ ~R
 であって、
 ①{Q&~P→R},(Q&~~P)├ ~R
 から、Q を「除く」と、
 ①{~P→R},(~P)├ ~R
 は、「前件否定誤謬」である。
然るに、
(30)
「次(31)」に示す通り、「二畳庵主人(加地伸行 先生)」は、
(ⅰ){ハンサムではあっても、弁舌がなければ、やってゆけない}。     (ハンサムであって、弁舌がある)。従って、やっていける。
(〃){ハンサムの上に弁舌を兼ね備えてこそ、はじめてやってゆける}。(ハンサムであって、弁舌がある)。従って、やっていける。
といふ「推論(前件否定誤謬)」は、「正しい」と、されてゐる。
(31)
 そこで話をもとにもどしてみる。
① の場合、-a+bであると訳すと「弁舌はなくて、ハンサムというのは、あぶない(ハンサムの上に弁舌を兼ねそなえてこそ、はじめてやってゆける)」ということになる。
(二畳庵主人、漢文法基礎、1984年10月、325・326頁)
然るに、
(32)
①{~P&Q→R}≡{Pでなくて、Qであるならば、Rである。}
ではなく、
①{~P&Q⇔R}≡{Pでなくて、Qであるならば、そのときに限って、Rである。}
であるならば、「前件否定誤謬」には、ならない
然るに、
(17)により、
(33)
① 自非無祝鮀之佞而有宋朝之美者、易乎、免於今之世矣=
① 自[非〔無(祝鮀之佞)而有(宋朝之美)者〕]、易乎、免(於今之世)矣⇒
① [〔(祝鮀之佞)無而(宋朝之美)有者〕非]自、易乎、(於今之世)免矣=
① [〔(祝鮀の佞)無くして(宋朝の美)有る者に〕非ざる]自りは、易きかな、(今の世に)免るること。
であるならば、
①{~P&Q⇔R}≡{Pでなくて、Qであるならば、そのときに限って、Rである。}
であり得る、はずであるが、(15)により、「原文(論語・雍也 一六)」は、そのやうには、なってゐない