(01)
①{象、机、花}
であるならば、
① 象が動物である。
② 動物は象である。
③ 象以外(机、花)は動物ではない。
然るに、
(02)
①{象、兎、馬}
であるならば、
① 象が動物である。とは、言へない。
② 動物は象である。とは、言へない。
③ 象以外(兎、馬)は動物ではない。とは、言へない。
従って、
(01)(02)により、
(03)
① 象が動物である。
② 動物は象である。
③ 象以外は動物ではない。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(04)
① 象が動物である。
といふのであれば、
① 象は動物である。
従って、
(03)(04)により、
(05)
① 象が動物である。
② 象は動物であり、動物は象である。
③ 象は動物であり、象以外は動物ではない。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(06)
① 象は動物である。⇔
① ∀x(象x→動物x)⇔
① すべてのxについて(xが象であるならば、xは動物である)。
従って、
(05)(06)により、
(07)
② 象が動物である。⇔
② 象は動物であり、動物は象である。⇔
② ∀x(象x→動物x&動物x→象x)⇔
② すべてのxについて(xが象であるならば、xは動物であり、xが動物であるならば、xは象である)。
然るに、
(08)
1 (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)∀x{兎x→∃y(長y&耳yx)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)∃x(兎x&象x) A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(長y&耳ya)&∀z(耳za→~鼻za) 2UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 象a 6&E
6 (8) 兎a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 48MPP
2 6 (ア) ∃y(長y&耳ya)&∀z(耳za→~鼻za) 57MPP
1 6 (イ) ∃y(鼻ya&長y) 9&E
ウ (ウ) 鼻ba&長b A
2 6 (エ) ∃y(長y&耳ya) ア&E
オ(オ) 長b&耳ba A
オ(カ) 耳ba オ&E
2 6 (キ) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
2 6 (ク) 耳ba→~鼻ba キUE
2 6 オ(ケ) ~鼻ba カクMPP
1 6 (コ) ∀z(~鼻za→~長z) ア&E
1 6 (サ) ~鼻ba→~長b コUE
12 6 オ(シ) ~長b ケサMPP
オ(ス) 長b オ&E
12 6 オ(セ) 長b&~長b シス&I
12 6 (ソ) 長b&~長b エオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
12 (チ)~∃x(兎x&象x) 3タRAA
12 (ツ)∀x~(兎x&象x) チ量化子の関係
12 (テ) ~(兎a&象a) ツUE
12 (ト) ~兎a∨~象a テ、ド・モルガンの法則
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
従って、
(08)により、
(09)
(ⅰ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。然るに、
(ⅱ)∀x{兎x→∃y(長y&耳yx)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。従って、
(ⅲ)∀x(兎x→~象x)。
といふ「推論(三段論法)」、すなはち、
(ⅰ)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない}。 然るに、
(ⅱ)すべてのxについて{xが兎であるならば、あるyは長くて、xの耳であり、すべてのzについて、zがxの耳であるならば、zはxの鼻ではない}。従って、
(ⅲ)すべてのxについて(xが兎であるならば、xは象ではない。)
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当」である。
従って、
(09)により、
(10)
(ⅰ)象は鼻が長い。然るに
(ⅱ)兎の耳は長いが、耳は鼻ではない。従って、
(ⅲ)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当」である。
従って、
(08)(09)(10)により、
(11)
③ 象は鼻が長い。⇔
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
③ すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない}。
従って、
(06)(07)(11)により、
(12)
④ 象が鼻が長い。⇔
④ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)&
∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)→象x}⇔
④ すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くなく、
あるyがxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くないならば、xは象である}。
然るに、
(13)
④ A→B&B→A
の「略号」が、
④ A⇔B
である。
従って、
(12)(13)により、
(14)
④ 象が鼻が長い。⇔
④ ∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
④ すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くなく、
あるyがxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くないならば、xは象である}。
然るに、
(15)
{象の耳、兎の耳}であれば、
① 兎の耳が長い。
② 兎が耳が長い。
(16)
{象の鼻、兎の鼻}であれば、
① 象の鼻が長い。
② 象が鼻が長い。
従って、
(14)(16)により、
(17)
④ 象の鼻が長い。⇔
④ 象が鼻が長い。⇔
④ ∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「等式」が、成立する。
然るに、
(11)(12)により、
(18)
③ 象は鼻が長い。
といふ「命題」に対して、
③ ∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)→象x
といふ「命題関数」を「追加」すると、
④ 象が鼻が長い。
といふ「命題」になる。
然るに、
(19)
前提を追加しても結論は不変でよい。結論は前提が含むものだけを導出するのであるから、新前提を加えても、これらから新結論を引き出す必要はないからである。
(岩波全書、論理学入門、1979年、156頁)
従って、
(10)(18)(19)により、
(20)
(ⅰ)象は鼻が長い。然るに
(ⅱ)兎の耳は長いが、耳は鼻ではない。従って、
(ⅲ)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」が、「妥当」であるが故に、
(ⅰ)象の鼻が長い。然るに
(ⅱ)兎の耳は長いが、耳は鼻ではない。従って、
(ⅲ)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」も、「妥当」である。
然るに、
(21)
象は鼻が長い 形容詞節論
jump to 2015.2.28, 2015.3.12, 2015.9.27, 2015.11.26, 2020.3.1
2015.2.11
「象は鼻が長い。」という文の構造について、昔から議論が交わされています。
「象は」と「鼻が」という二つの主語相当の句の役割を、文法的にどのように説明すべきかについて意見が集約していません。
「象は」が主語で、「鼻が長い」が述部で、述部の中に主語、述語を含む文章があるので、複文であると通常は説明されています。
これに対し、それでは構造の説明が不十分である。「象は」は、主語ではないと説明する人たちもいます。
私は、「象は」ではじめた文章は、「何々です」という述部を想定した文章なので、「象は」は、主語だと思っています。
「象は鼻が長い動物です。」と、「動物」という名詞を追加してみましょう。
このとき、「象は動物です。」という主文において、「象は」は、主語の役割を果たしています。
「鼻が長い」という文は、「動物」を説明する形容詞節です。
ですから、以下のように考えればいいのではないでしょうか。
象は大きい。 述部は、形容詞
象は大きい動物です。 述部は、形容詞+名詞
象は鼻が長い動物です 述部は、形容詞節+名詞
象は鼻が長い 述部は、形容詞節
この説は、一般に認められるかどうか、まだわかりません。
(象は鼻が長い think0298 - ゆっくり考える think0298)
然るに、
(21)に関して、
(22)
私も、概ね、さう思ひます。
(23)
① 象は動物である≡∀x{象x→動物x}。
② 象は鼻が長い ≡∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
であるため、両方とも、
① 象は≡∀x{象x→
② 象は≡∀x{象x→
に関しては、「共通」です。
従って、
(23)により、
(24)
① 象は動物である。
② 象は鼻が長い。
に於いて、
①「象は」が「主語」であるならば、
②「象は」も「主語」である。
と、私も、思ひます。
(01)
①{象、机、花}
であるならば、
① 象が動物である。
② 動物は象である。
③ 象以外(机、花)は動物ではない。
然るに、
(02)
①{象、兎、馬}
であるならば、
① 象が動物である。とは、言へない。
② 動物は象である。とは、言へない。
③ 象以外(兎、馬)は動物ではない。とは、言へない。
従って、
(01)(02)により、
(03)
① 象が動物である。
② 動物は象である。
③ 象以外は動物ではない。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(04)
① 象が動物である。
といふのであれば、
① 象は動物である。
従って、
(03)(04)により、
(05)
① 象が動物である。
② 象は動物であり、動物は象である。
③ 象は動物であり、象以外は動物ではない。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(06)
① 象は動物である。⇔
① ∀x(象x→動物x)⇔
① すべてのxについて(xが象であるならば、xは動物である)。
従って、
(05)(06)により、
(07)
② 象が動物である。⇔
② 象は動物であり、動物は象である。⇔
② ∀x(象x→動物x&動物x→象x)⇔
② すべてのxについて(xが象であるならば、xは動物であり、xが動物であるならば、xは象である)。
然るに、
(08)
1 (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)∀x{兎x→∃y(長y&耳yx)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)∃x(兎x&象x) A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(長y&耳ya)&∀z(耳za→~鼻za) 2UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 象a 6&E
6 (8) 兎a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 48MPP
2 6 (ア) ∃y(長y&耳ya)&∀z(耳za→~鼻za) 57MPP
1 6 (イ) ∃y(鼻ya&長y) 9&E
ウ (ウ) 鼻ba&長b A
2 6 (エ) ∃y(長y&耳ya) ア&E
オ(オ) 長b&耳ba A
オ(カ) 耳ba オ&E
2 6 (キ) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
2 6 (ク) 耳ba→~鼻ba キUE
2 6 オ(ケ) ~鼻ba カクMPP
1 6 (コ) ∀z(~鼻za→~長z) ア&E
1 6 (サ) ~鼻ba→~長b コUE
12 6 オ(シ) ~長b ケサMPP
オ(ス) 長b オ&E
12 6 オ(セ) 長b&~長b シス&I
12 6 (ソ) 長b&~長b エオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
12 (チ)~∃x(兎x&象x) 3タRAA
12 (ツ)∀x~(兎x&象x) チ量化子の関係
12 (テ) ~(兎a&象a) ツUE
12 (ト) ~兎a∨~象a テ、ド・モルガンの法則
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
従って、
(08)により、
(09)
(ⅰ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。然るに、
(ⅱ)∀x{兎x→∃y(長y&耳yx)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。従って、
(ⅲ)∀x(兎x→~象x)。
といふ「推論(三段論法)」、すなはち、
(ⅰ)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない}。 然るに、
(ⅱ)すべてのxについて{xが兎であるならば、あるyは長くて、xの耳であり、すべてのzについて、zがxの耳であるならば、zはxの鼻ではない}。従って、
(ⅲ)すべてのxについて(xが兎であるならば、xは象ではない。)
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当」である。
従って、
(09)により、
(10)
(ⅰ)象は鼻が長い。然るに
(ⅱ)兎の耳は長いが、耳は鼻ではない。従って、
(ⅲ)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当」である。
従って、
(08)(09)(10)により、
(11)
③ 象は鼻が長い。⇔
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
③ すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない}。
従って、
(06)(07)(11)により、
(12)
④ 象が鼻が長い。⇔
④ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)&
∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)→象x}⇔
④ すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くなく、
あるyがxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くないならば、xは象である}。
然るに、
(13)
④ A→B&B→A
の「略号」が、
④ A⇔B
である。
従って、
(12)(13)により、
(14)
④ 象が鼻が長い。⇔
④ ∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
④ すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くなく、
あるyがxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くないならば、xは象である}。
然るに、
(15)
{象の耳、兎の耳}であれば、
① 兎の耳が長い。
② 兎が耳が長い。
(16)
{象の鼻、兎の鼻}であれば、
① 象の鼻が長い。
② 象が鼻が長い。
従って、
(14)(16)により、
(17)
④ 象の鼻が長い。⇔
④ 象が鼻が長い。⇔
④ ∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「等式」が、成立する。
然るに、
(11)(12)により、
(18)
③ 象は鼻が長い。
といふ「命題」に対して、
③ ∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)→象x
といふ「命題関数」を「追加」すると、
④ 象が鼻が長い。
といふ「命題」になる。
然るに、
(19)
前提を追加しても結論は不変でよい。結論は前提が含むものだけを導出するのであるから、新前提を加えても、これらから新結論を引き出す必要はないからである。
(岩波全書、論理学入門、1979年、156頁)
従って、
(10)(18)(19)により、
(20)
(ⅰ)象は鼻が長い。然るに
(ⅱ)兎の耳は長いが、耳は鼻ではない。従って、
(ⅲ)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」が、「妥当」であるが故に、
(ⅰ)象の鼻が長い。然るに
(ⅱ)兎の耳は長いが、耳は鼻ではない。従って、
(ⅲ)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」も、「妥当」である。
然るに、
(21)
象は鼻が長い 形容詞節論
jump to 2015.2.28, 2015.3.12, 2015.9.27, 2015.11.26, 2020.3.1
2015.2.11
「象は鼻が長い。」という文の構造について、昔から議論が交わされています。
「象は」と「鼻が」という二つの主語相当の句の役割を、文法的にどのように説明すべきかについて意見が集約していません。
「象は」が主語で、「鼻が長い」が述部で、述部の中に主語、述語を含む文章があるので、複文であると通常は説明されています。
これに対し、それでは構造の説明が不十分である。「象は」は、主語ではないと説明する人たちもいます。
私は、「象は」ではじめた文章は、「何々です」という述部を想定した文章なので、「象は」は、主語だと思っています。
「象は鼻が長い動物です。」と、「動物」という名詞を追加してみましょう。
このとき、「象は動物です。」という主文において、「象は」は、主語の役割を果たしています。
「鼻が長い」という文は、「動物」を説明する形容詞節です。
ですから、以下のように考えればいいのではないでしょうか。
象は大きい。 述部は、形容詞
象は大きい動物です。 述部は、形容詞+名詞
象は鼻が長い動物です 述部は、形容詞節+名詞
象は鼻が長い 述部は、形容詞節
この説は、一般に認められるかどうか、まだわかりません。
(象は鼻が長い think0298 - ゆっくり考える think0298)
然るに、
(21)に関して、
(22)
私も、概ね、さう思ひます。
(23)
① 象は動物である≡∀x{象x→動物x}。
② 象は鼻が長い ≡∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
であるため、両方とも、
① 象は≡∀x{象x→
② 象は≡∀x{象x→
に関しては、「共通」です。
従って、
(23)により、
(24)
① 象は動物である。
② 象は鼻が長い。
に於いて、
①「象は」が「主語」であるならば、
②「象は」も「主語」である。
と、私も、思ひます。
(01)
よく知られているように、「私が理事長です」は語順を変え、
理事長は、私です。 と直して初めて主辞賓辞が適用されるのである。また、かりに大倉氏が、
タゴール記念会は、私が理事長です。
と言ったとすれば、これは主辞「タゴール記念会」を品評するという心持ちの文である。
(三上章、日本語の論理、1963年、40・41頁)
従って、
(01)により、
(02)
① タゴール記念会は、私が理事長です。
② タゴール記念会は、理事長は私です。
に於いて、
①=② である。
といふことは、よく知られている。
従って、
(02)により、
(03)
① 山田家は、太郎が長男です。
② 山田家は、長男は太郎です。
に於いて、すなはち、
① 山田家は、太郎が長男です。
② 山田家の、長男は太郎です。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(04)
② 長男は太郎です。
③ 太郎以外は長男ではない。
に於いて、
②=③ は、「対偶(Contraposition)」である。
従って、
(03)(04)により、
(05)
① 山田家は、太郎が長男です。
といふ「日本語」は、
(ⅰ)山田家の中に、太郎がゐて、
(ⅱ)太郎は山田家の長男であって、
(ⅲ)太郎以外に山田家の長男はゐない。
といふ「3つの命題」の、「連言」である。
従って、
(05)により、
(06)
① 山田家は、太郎が長男です。⇔
① 山田家は、太郎以外は長男ではない。⇔
① ∀x{山田家x→∃y[太郎y&長男yx&~∃z(y≠z&長男zx)]}⇔
① すべてのxについて{xが山田家の人であるならば、あるyは太郎であって、yはxの長男であって、(y=zではなくて、zがxの長男である)といふ、そのやうなzは存在しない)}。
といふ「等式」が、成立する。
然るに、
(07)
1 (1)∀x{山田家x→∃y[太郎y&長男yx&~∃z(z≠y&長男zx)]} A
1 (2) 山田家a→∃y[太郎y&長男ya&~∃z(z≠y&長男za)] A
3 (3) 山田家a A
13 (4) ∃y[太郎y&長男ya&~∃z(z≠y&長男za)] 23MPP
5 (5) 太郎b&長男ba&~∃z(z≠b&長男za) A
5 (6) 太郎b&長男ba 5&E
5 (7) ~∃z(z≠b&長男za) 5&E
5 (8) ∀z~(z≠b&長男za) 7量化子の関係
5 (9) ~(c≠b&長男ca) 8UE
5 (ア) c=b∨~長男ca 9ド・モルガンの法則
5 (イ) ~長男ca∨c=b ア交換法則
5 (ウ) 長男ca→c=b イ含意の定義
エ (エ) ∃z(花子z&~太郎z) A
オ (オ) 花子c&~太郎c A
オ (カ) 花子c オ&E
オ (キ) ~太郎c オ&E
5 (ク) 太郎b 6&E
ケ(ケ) c=b A
5 ケ(コ) 太郎c クケ=E
5 オケ(サ) ~太郎c&太郎c キコ&I
5 オ (シ) c≠b ケサRAA
5 オ (ス) ~長男ca ウシMTT
5 オ (セ) 花子c&~長男ca カス&I
5 オ (ソ) ∃z(花子z&~長男za) セEI
5エ (タ) ∃z(花子z&~長男za) エオソEE
13 エ (チ) ∃z(花子z&~長男za) 45タEE
1 エ (ツ) 山田家a→∃z(花子z&~長男za) 3チCP
1 エ (テ)∀x{山田家x→∃z(花子z&~長男zx)} ツUI
従って、
(06)(07)により、
(08)
(ⅰ)∀x{山田家x→∃y[太郎y&長男yx&~∃z(z≠y&長男zx)]}。然るに、
(ⅱ)∃z(花子z&~太郎z)。従って、
(ⅲ)∀x{山田家x→∃z(花子z&~長男zx)}。
といふ「推論(三段論法)」、すなはち、
(ⅰ)すべてのxについて{xが山田家の人であるならば、あるyは太郎であって、yはxの長男であって、(y=zではなくて、zがxの長男である)といふ、そのやうなzは存在しない)}。然るに、
(ⅱ)あるzは(花子であって、太郎ではない)。従って、
(ⅲ)すべてのxについて{xが山田家の人であるならば、あるzは(花子であって、xの長男ではない)}。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当」である。
従って、
(08)により、
(09)
(ⅰ)山田家は、太郎が長男である。然るに、
(ⅱ)花子は、太郎ではない。従って、
(ⅲ)山田家は(の)長男は、花子ではない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当」である。
然るに、
(10)
{太郎、花子}が{変域(ドメイン)}であるならば、
① 太郎が男性であって、
② 男性は太郎であって、
③ 太郎以外(花子)は男性ではない(女性である)。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(10)により、
(11)
① 太郎が男性である。
② 太郎は男性であり、男性は太郎である。
に於いて、
①=② である。
従って、
(12)
① 山田家が、太郎が長男である。
② 山田家は、太郎が長男であり、太郎が長男であるのは、山田家である。
に於いて、
①=② である。
従って、
(06)(12)により、
(13)
① 山田家が、太郎が長男である。
② 山田家は、太郎が長男であり、太郎が長男であるのは、山田である。
③ ∀x{山田家x→∃y[太郎y&長男yx&~∃z(z≠y&長男zx)]&
∃y[太郎y&長男yx&~∃z(z≠y&長男zx)]→山田家x}。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(14)
1(1)P→Q&Q→P A
1(2)P⇔Q 1Df.⇔
従って、
(13)(14)により、
(15)
① 山田家が、太郎が長男である。
② 山田家は、太郎が長男であり、太郎が長男であるのは、山田である。
③ ∀x{山田家x⇔∃y[太郎y&長男yx&~∃z(z≠y&長男zx)]}。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(16)
1 (1)∀x{山田家x⇔∃y[太郎y&長男yx&~∃z(z≠y&長男zx)]} A
1 (2) 山田家a⇔∃y[太郎y&長男ya&~∃z(z≠y&長男za)] 1UE
1 (3) 山田家a→∃y[太郎y&長男ya&~∃z(z≠y&長男za)]&
∃y[太郎y&長男ya&~∃z(z≠y&長男za)]→山田家a 2Df.⇔
1 (4) 山田家a→∃y[太郎y&長男ya&~∃z(z≠y&長男za)] 3&E
― 以下の「計算の結論」は、(07)と「同じ」になる。―
cf.
前提を追加しても結論は不変(同じ)である。結論は前提が含むものだけを導出するからである。
(岩波全書、論理学入門、1979年、156頁改)
従って、
(07)(08)(09)(16)により、
(17)
(ⅰ)山田家は、太郎が長男である。然るに、
(ⅱ)花子は、太郎ではない。従って、
(ⅲ)山田家の長男は、花子ではない。
といふ「推論(三段論法)」だけでなく、
(ⅰ)山田家が、太郎が長男である。然るに、
(ⅱ)花子は、太郎ではない。従って、
(ⅲ)山田家の長男は、花子ではない。
といふ「推論」も、「妥当」である。
従って、
(03)(17)により、
(18)
① 山田家は、太郎が長男である。
② 山田家が、太郎が長男である。
③ 山田家の、長男は太郎である。
といふ「日本語」は、「3つ」とも、「正しい」。
然るに、
(19)
三上章(1903年~ 1971年)は主として、日本語の記述文法にその後半生を捧げた言語者である。彼の自由闊達な発想は、従来の文法へのアプローチの方法と対峙して独自の言語世界を開拓してきた。三上(1960b)の「はしがき」には次のような文言が記されている。
日本語の文法的手段のうち、最も重要なのはテニヲハです。中でもハです。
本書は、問題をそのハ一つに絞って、日本文法の土台を明らかにしようとしたものです。
代行というのが中心概念の一つになっています。ハはガノニヲ を代行する、というのです。(三上1960b:1)ここで三上は、「太郎が」「太郎の」「太郎に」「太郎を」が主題化された「太郎は」が、前四者それぞれの機能を代行していることを明らかにしたのである。
これまでは、「ハ」と「ガ」を同じ土俵に乗せて比較してきていたが、三上は、「ハ」を「ガノニヲ」とは異なるカテゴリーの助詞として扱い、その独自の性質を解き明かしたのである。
(三上章の当惑 ― 時枝誠記との関係において― 藤原雅憲)
従って、
(18)(19)により、
(20)
① 山田家は、
② 山田家が、
③ 山田家の、
に於いて、
① が、③ を『代行』してゐるのであれば、
② も、③ を『代行』してゐる。
(21)
伝統的論理学を速水滉『論理学』(16)で代表させよう。わたしのもっているのが四十三年の第十九刷一万部中の一冊で、なお引続き刊行だろうから、前後かなり多く読者を持つ論理学書と考えられる。新興の記号論理学の方は、沢田充茂の『現代論理学入門』(62)を参照することにする(三上章、日本語の論理、1963年、4頁)。
然るに、
(22)
「三上章、日本語の論理、1963年」を読む限り、三上章 先生が、「述語計算(Predicate calculus)」を学んだ「形跡」はない。
従って、
(21)(22)により、
(23)
三上章先生は、「現代論理学」を学ばないまま、「三上章、日本語の論理、1963年」を上梓した、といふことになる。