★ 国連「自由権規約委員会最終見解」(2008/10/30)から、
日本に対する「C.主な懸念事項及び勧告」(パラグラフ6~32の27項目)のサマリー
ここには、日本の人権水準を国際標準レベルまで引き上げるための、必要最小限の緊急事項がリストアップされている。
画期的な内容と各方面から高い評価を受けている。裁判官のみならず、国民一人一人がこの勧告をもとに人権についてしっかり学習すべきだ。
(各項目、上段が<懸念>、下段が<勧告>)
【第2条 国家による人権実現の義務関連】
6.<懸念> これまでの勧告の多くが履行されていない。
→<勧告> 締約国(日本)は、今回の勧告及び前回の最終見解を実行せよ。
7.<懸念> 下級審で「規約」に言及した裁判例がない(第2条)
→<勧告> 裁判官、検察官及び弁護士に専門職業的研修を行い、規約を判決に生かすようにせよ。
8.<懸念> 第一選択議定書の未批准。
→<勧告> 選択議定書の批准を検討せよ。
9.<懸念> 国内の人権機構がない(第2条)
→<勧告> 政府の外に独立した国内人権機構を設立せよ。
10.<懸念> あいまいな「公共の福祉」概念による権利の制限(第2条)
→<勧告> 立法で概念を定義し、「公共の福祉」を理由に権利を制限出来ないと明記せよ。
【第3条 男女同権関連】
11.<懸念> 女性差別的な民法の条項(第2条1項、第3条、第23条4及び第26条)
〔離婚後6ヶ月間の女性の再婚禁止・男性と女性の婚姻年齢の相違〕
→<勧告> 民法を改正せよ。
12.<懸念> 公職における女性の代表性(第2条1、第3条、第25条及び第26条)
〔国会議員(参議院)の18.2%、国家公務員本省課室長相当職以上の1.7%、など〕
→<勧告> 「男女共同参画基本計画(第2次)」における数値目標を見直せ。
13.<懸念> 民間企業の管理職に占める女性の割合(第2条1、第3条及び第26条)
〔管理職に占める割合が10%、平均すると男性の給与の51%、女性が非正規労働者の7割を占め、有給休暇、母性に関連する保護及び家族手当等の利益を享受することができず、セクシュアルハラスメントを受けやすい、〕
→<勧告> (a) ポジティブ・アクションを行うようすべての企業に要求せよ。
(b) 長時間労働に結びついている労働基準緩和を見直せ。
(c) 児童保育施設の数を更に増やせ。
(d) パートタイム労働者の均等待遇に関する条件を緩和せよ。
(e) 職場におけるセクシュアルハラスメントを犯罪化せよ。
(f) 間接差別の禁止事項を、拡大せよ。
(g) 間接差別防止のための効果的な措置をとれ。
14.<懸念> 性的暴力(第3条、第7条及び第26条)
→<勧告> 刑法第177条の強姦罪の定義の範囲を拡大し、裁判官、検察官、警察官、刑務官への、ジェンダーへの配慮に関する義務的な研修を行え。
15.<懸念> 夫・パートナー等からの暴力(第3条、第7条、第26条2(3))
→<勧告> 暴力の加害者の量刑政策を見直し、シングルマザーの子育てに対する手当を増やせ。
【人身の自由関連】
16.<懸念> 死刑制度廃止(第6条、第7条、第10条)
→<勧告> 死刑廃止を前向きに考慮し、公衆に対して廃止が望ましいことを伝えよ。
17.<懸念> 上訴権を行使しないまま死刑の宣告を受ける被告人の数が増加(第6条、第14条)
→<勧告> 死刑事件について義務的再審査制度(mandatory system of review)を採用せよ。
18.<懸念> 代替収容制度(代用監獄)(第7条、第9条、第10条及び第14条)
→<勧告> 廃止するか、規約第14条の保障の完全な遵守。かつ全ての被疑者に対して、事件に関係する全ての警察の記録にアクセスできる権利を保障せよ。
19.<懸念> 被疑者取調べ(第7条、第9条及び第14条)
→<勧告> 取調べの厳格な時間制限、法律を遵守しない行為への制裁つき立法措置。また取調べの全過程について体系的に録音・録画、弁護人が取調べに立ち会う権利を保障せよ。
20.<懸念> 「刑事施設の被収容者の不服審査」(第7条及び第10条)
→<勧告> (a) 施設視察委員会が、施設の管理者により任命されないように。
(b) 「不服審査に関する調査検討会」の意見が法務省に対して拘束力を有するように。
(c) 不服申立ての審査を、公安委員会から外部の専門家によって構成される独立機関に移すように。
21.<懸念> 昼夜間単独室に収容されていること、(第7条及び第10条)
→<勧告> 明確な基準及び不服申立ての可能性なしに、特定の被収容者を居室棟に分離するという運用を中止せよ。
22.<懸念> 第二次世界大戦中における「慰安婦」制度(第7条及び第8条)
〔その責任を認めていない、加害者が訴追されていない、被害者に提供されている補償金が不十分である、「慰安婦」問題への言及を含む歴史教科書がほとんどない、一部の政治家及び報道機関が被害者の中傷あるいは出来事の否定を続けている〕
→<勧告> 「慰安婦」制度に対する法的な責任を認め、率直に謝罪し、生存している加害者を訴追し、全ての生存者の権利として適切な補償を行うために迅速で効果的な立法府及び行政府による措置をとれ。また、生徒及び一般の公衆を教育し、及び被害者を中傷しあるいは出来事を否定するあらゆる企てに反論し及び制裁措置をとれ。
【外国人の権利関連】
23.<懸念> 人身取引(第8条)
→<勧告> 人身取引被害者を発見する努力を強化せよ。
24.<懸念> 外国人研修・技能実習制度の下で、締約国に来た外国人(第8条及び第26条)
〔国内労働法令、社会保障の保護から除外されており、非熟練労働においてしばしば有給休暇なく搾取され、法定最低賃金を下回る研修手当を受領し、無給で残業を強いられ、しばしば雇用主によって旅券を取り上げられている。〕
→<勧告> 国内法令の保護及び社会保障を拡大し、そのような研修生及び技能実習生から搾取を行う雇用主に適切な制裁を科せ。
25.<懸念> 出入国管理及び難民認定法(第7条及び第13条)
→<勧告> 庇護申請者を拷問や他の虐待の危険のある国へ送還することを明示的に禁止、弁護士、法的扶助、通訳、適切な国による社会的支援又は雇用にアクセスする機会を確保、完全に独立した不服申立機関を設立、不服申立てを行う前行政手続の結論が出た後直ちに送還されないようにせよ。
【表現の自由関連】
26.<懸念> 表現の自由及び参政権に対して課された非合理的な制約(第19条及び第25条)
〔戸別訪問の禁止、選挙運動期間前に配布可能な文書図画への制限、政府に批判的な内容のリーフレットを配布したことで逮捕、起訴された。〕
→<勧告> 警察、検察官及び裁判所が過度に制約しないように、表現の自由と参政権に対して課されたいかなる非合理的な法律上の制約をも廃止せよ。
【子どもの権利関連】
27.<懸念> 少年と少女について(第24条)
→<勧告> 少年と少女の性交同意最低年齢を13歳とされる現状のレベルから引き上げよ。
28.<懸念> 嫡出でない子(第2条1、第24条及び第26条)。
〔国籍の取得、相続権、出生登録に関し差別をされている〕
→<勧告> 出生届に「嫡出」であるか否かを記載しなければならないとする戸籍法第49条1項1を含め、嫡出でない子を差別する条項を除去するべきである。
【国内マイノリティの権利関連】
29.<懸念> レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー(第2条1及び第26条)
→<勧告> 差別を禁止する事由に性的指向が含まれるように法律を改正せよ。
30.<懸念> 国民年金法の国籍要件(第2条1及び第26条)
→<勧告> 国民年金法に定められた年齢要件によって影響された外国人に対して、経過措置を講ぜよ。
31.<懸念> 朝鮮学校(第26条及び第27条)
→<勧告> 国による補助金を増大し、朝鮮学校の卒業証書を直接大学入学資格として認めよ。
32.<懸念> アイヌの人々及び琉球・沖縄の人々(第27条)
→<勧告> 国内法によって先住民族として明確に認め、通常の教育課程にアイヌの人々及び琉球・沖縄の人々の文化及び歴史を含めよ。
※『自由権規約委員会の最終見解』(2008/10/30)外務省訳全文はこちらから
http://www.mofa.go.jp/Mofaj/Gaiko/kiyaku/pdfs/jiyu_kenkai.pdf
※『国際人権B規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)』参照条文はこちらから
http://www.nichibenren.or.jp/ja/kokusai/humanrights_library/treaty/liberty_convention.html
日本に対する「C.主な懸念事項及び勧告」(パラグラフ6~32の27項目)のサマリー
ここには、日本の人権水準を国際標準レベルまで引き上げるための、必要最小限の緊急事項がリストアップされている。
画期的な内容と各方面から高い評価を受けている。裁判官のみならず、国民一人一人がこの勧告をもとに人権についてしっかり学習すべきだ。
(各項目、上段が<懸念>、下段が<勧告>)
【第2条 国家による人権実現の義務関連】
6.<懸念> これまでの勧告の多くが履行されていない。
→<勧告> 締約国(日本)は、今回の勧告及び前回の最終見解を実行せよ。
7.<懸念> 下級審で「規約」に言及した裁判例がない(第2条)
→<勧告> 裁判官、検察官及び弁護士に専門職業的研修を行い、規約を判決に生かすようにせよ。
8.<懸念> 第一選択議定書の未批准。
→<勧告> 選択議定書の批准を検討せよ。
9.<懸念> 国内の人権機構がない(第2条)
→<勧告> 政府の外に独立した国内人権機構を設立せよ。
10.<懸念> あいまいな「公共の福祉」概念による権利の制限(第2条)
→<勧告> 立法で概念を定義し、「公共の福祉」を理由に権利を制限出来ないと明記せよ。
【第3条 男女同権関連】
11.<懸念> 女性差別的な民法の条項(第2条1項、第3条、第23条4及び第26条)
〔離婚後6ヶ月間の女性の再婚禁止・男性と女性の婚姻年齢の相違〕
→<勧告> 民法を改正せよ。
12.<懸念> 公職における女性の代表性(第2条1、第3条、第25条及び第26条)
〔国会議員(参議院)の18.2%、国家公務員本省課室長相当職以上の1.7%、など〕
→<勧告> 「男女共同参画基本計画(第2次)」における数値目標を見直せ。
13.<懸念> 民間企業の管理職に占める女性の割合(第2条1、第3条及び第26条)
〔管理職に占める割合が10%、平均すると男性の給与の51%、女性が非正規労働者の7割を占め、有給休暇、母性に関連する保護及び家族手当等の利益を享受することができず、セクシュアルハラスメントを受けやすい、〕
→<勧告> (a) ポジティブ・アクションを行うようすべての企業に要求せよ。
(b) 長時間労働に結びついている労働基準緩和を見直せ。
(c) 児童保育施設の数を更に増やせ。
(d) パートタイム労働者の均等待遇に関する条件を緩和せよ。
(e) 職場におけるセクシュアルハラスメントを犯罪化せよ。
(f) 間接差別の禁止事項を、拡大せよ。
(g) 間接差別防止のための効果的な措置をとれ。
14.<懸念> 性的暴力(第3条、第7条及び第26条)
→<勧告> 刑法第177条の強姦罪の定義の範囲を拡大し、裁判官、検察官、警察官、刑務官への、ジェンダーへの配慮に関する義務的な研修を行え。
15.<懸念> 夫・パートナー等からの暴力(第3条、第7条、第26条2(3))
→<勧告> 暴力の加害者の量刑政策を見直し、シングルマザーの子育てに対する手当を増やせ。
【人身の自由関連】
16.<懸念> 死刑制度廃止(第6条、第7条、第10条)
→<勧告> 死刑廃止を前向きに考慮し、公衆に対して廃止が望ましいことを伝えよ。
17.<懸念> 上訴権を行使しないまま死刑の宣告を受ける被告人の数が増加(第6条、第14条)
→<勧告> 死刑事件について義務的再審査制度(mandatory system of review)を採用せよ。
18.<懸念> 代替収容制度(代用監獄)(第7条、第9条、第10条及び第14条)
→<勧告> 廃止するか、規約第14条の保障の完全な遵守。かつ全ての被疑者に対して、事件に関係する全ての警察の記録にアクセスできる権利を保障せよ。
19.<懸念> 被疑者取調べ(第7条、第9条及び第14条)
→<勧告> 取調べの厳格な時間制限、法律を遵守しない行為への制裁つき立法措置。また取調べの全過程について体系的に録音・録画、弁護人が取調べに立ち会う権利を保障せよ。
20.<懸念> 「刑事施設の被収容者の不服審査」(第7条及び第10条)
→<勧告> (a) 施設視察委員会が、施設の管理者により任命されないように。
(b) 「不服審査に関する調査検討会」の意見が法務省に対して拘束力を有するように。
(c) 不服申立ての審査を、公安委員会から外部の専門家によって構成される独立機関に移すように。
21.<懸念> 昼夜間単独室に収容されていること、(第7条及び第10条)
→<勧告> 明確な基準及び不服申立ての可能性なしに、特定の被収容者を居室棟に分離するという運用を中止せよ。
22.<懸念> 第二次世界大戦中における「慰安婦」制度(第7条及び第8条)
〔その責任を認めていない、加害者が訴追されていない、被害者に提供されている補償金が不十分である、「慰安婦」問題への言及を含む歴史教科書がほとんどない、一部の政治家及び報道機関が被害者の中傷あるいは出来事の否定を続けている〕
→<勧告> 「慰安婦」制度に対する法的な責任を認め、率直に謝罪し、生存している加害者を訴追し、全ての生存者の権利として適切な補償を行うために迅速で効果的な立法府及び行政府による措置をとれ。また、生徒及び一般の公衆を教育し、及び被害者を中傷しあるいは出来事を否定するあらゆる企てに反論し及び制裁措置をとれ。
【外国人の権利関連】
23.<懸念> 人身取引(第8条)
→<勧告> 人身取引被害者を発見する努力を強化せよ。
24.<懸念> 外国人研修・技能実習制度の下で、締約国に来た外国人(第8条及び第26条)
〔国内労働法令、社会保障の保護から除外されており、非熟練労働においてしばしば有給休暇なく搾取され、法定最低賃金を下回る研修手当を受領し、無給で残業を強いられ、しばしば雇用主によって旅券を取り上げられている。〕
→<勧告> 国内法令の保護及び社会保障を拡大し、そのような研修生及び技能実習生から搾取を行う雇用主に適切な制裁を科せ。
25.<懸念> 出入国管理及び難民認定法(第7条及び第13条)
→<勧告> 庇護申請者を拷問や他の虐待の危険のある国へ送還することを明示的に禁止、弁護士、法的扶助、通訳、適切な国による社会的支援又は雇用にアクセスする機会を確保、完全に独立した不服申立機関を設立、不服申立てを行う前行政手続の結論が出た後直ちに送還されないようにせよ。
【表現の自由関連】
26.<懸念> 表現の自由及び参政権に対して課された非合理的な制約(第19条及び第25条)
〔戸別訪問の禁止、選挙運動期間前に配布可能な文書図画への制限、政府に批判的な内容のリーフレットを配布したことで逮捕、起訴された。〕
→<勧告> 警察、検察官及び裁判所が過度に制約しないように、表現の自由と参政権に対して課されたいかなる非合理的な法律上の制約をも廃止せよ。
【子どもの権利関連】
27.<懸念> 少年と少女について(第24条)
→<勧告> 少年と少女の性交同意最低年齢を13歳とされる現状のレベルから引き上げよ。
28.<懸念> 嫡出でない子(第2条1、第24条及び第26条)。
〔国籍の取得、相続権、出生登録に関し差別をされている〕
→<勧告> 出生届に「嫡出」であるか否かを記載しなければならないとする戸籍法第49条1項1を含め、嫡出でない子を差別する条項を除去するべきである。
【国内マイノリティの権利関連】
29.<懸念> レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー(第2条1及び第26条)
→<勧告> 差別を禁止する事由に性的指向が含まれるように法律を改正せよ。
30.<懸念> 国民年金法の国籍要件(第2条1及び第26条)
→<勧告> 国民年金法に定められた年齢要件によって影響された外国人に対して、経過措置を講ぜよ。
31.<懸念> 朝鮮学校(第26条及び第27条)
→<勧告> 国による補助金を増大し、朝鮮学校の卒業証書を直接大学入学資格として認めよ。
32.<懸念> アイヌの人々及び琉球・沖縄の人々(第27条)
→<勧告> 国内法によって先住民族として明確に認め、通常の教育課程にアイヌの人々及び琉球・沖縄の人々の文化及び歴史を含めよ。
※『自由権規約委員会の最終見解』(2008/10/30)外務省訳全文はこちらから
http://www.mofa.go.jp/Mofaj/Gaiko/kiyaku/pdfs/jiyu_kenkai.pdf
※『国際人権B規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)』参照条文はこちらから
http://www.nichibenren.or.jp/ja/kokusai/humanrights_library/treaty/liberty_convention.html
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