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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

検察証拠改ざん 捏造疑惑過去にも

2010年09月26日 | 平和憲法
 ▼ 検察 証拠改ざん
   捏造疑惑過去にも


 郵便不正事件に絡む証拠改ざん事件で、大阪地検特捜部主任検事が逮捕された。証拠は公判の行方を大きく左右する力を持つ。それだけに人を陥れることもできる「魔物」でもある。過去にも捏造や隠匿、取り違えなどの疑惑は絶えなかったが、責任はうやむやに処理されてきた。ツケは回り、検察は大きな代償を払うことになった。(出田阿生、加藤裕治)
 (略)

 ▼ 「財田川事件」「松山事件」…再審無罪に
 しかし過去を振り返ると、多くの事件で証拠に手が加えられた可能性が指摘されてきた。例えば一九七五年に新潟県で発生したひき逃げ死亡事件。最高裁は一九八九年、「一、二審判決を破棄しなければ著しく正義に反する」と逆転無罪を言い渡した。
 この事件で下級審が有罪の決め手としたのが、被告とされた男性のトラック後輪に付いていた血のようなものだった。ところが最高裁は「検問時、付着物は存在しなかったことを否定できない」と捏造の可能性を示唆した。事件発生直後の検問で見つからなかったのに、二日後に警察署へ行って発見されたことなどが理由だった。
 著名な再審無罪事件でも、血痕の偽造疑惑は持ち上がっている。
 五〇年に香川県で発生した強盗殺人事件「財田川事件」では、死刑判決を受けた故・谷口繁義氏の再審が八一年に始まり、三年後に無罪が確定した。ポイントは、事件時にはいていたとされるズボンの血痕。再審の決定や判決では「血痕は事件後に付着した疑いがある」と指摘された。この事件では、谷ロ氏に有利な証拠を「紛失した」と偽って、検察側が隠したという問題も浮かんだ。
 宮城県で五五年にあった殺人放火事件「松山事件」の再審でも、裁判所は掛け布団の襟当ての血痕が「状況が不自然。捜査当局の押収後に付着したと推測できる余地がある」と判断。いったん死刑が確定した故・斎藤幸夫氏に再審無罪が言い渡された。
 六九年に発生した鹿児島夫婦殺人事件。福岡高裁の差し戻し審は八六年、犯人とされた被告の男性に無罪判決を出した。最高裁が八二年に破棄差し戻しを決めた理田のひとつが、重要証拠とされた犯人の陰毛の「すり替え」疑惑だった。捜査中、警察は被告に任意提出させた陰毛の一部を紛失していた。その紛失した毛が、いつの間にか「被害者の遺体から検出された毛」として鑑定に回されたのではないかーと疑問を呈したのだ。
 また八一年に大分市で女子短大生が殺害された事件では、専門家によるDNA鑑定の証拠が否定された。福岡高裁が九五年六月に出した無罪判決では、被告はパーマの短髪だったのに、鑑定に使われた犯人の毛髪は長い直毛だったと指摘。鑑定ミスの可能性が高いとして、鑑定書の信用性を否定した
 ▼ ずさん管理 偽造防止仕組み無く
 ある疑獄事件の捜査中。担当検事の部屋に入ると、壁際に何十個もの段ボールが山積みになっていた。強制捜査などで検察が押収した資料だ。箱に記された数字は、どの事件のどんな資料か示す番号だった。
 検察は押収した証拠品を庁舎内の会議室などに保管し、帳簿を作る。管理の責任は主任検事が負う。今回の事件でいえぱ、証拠隠滅容疑で逮捕された前田恒彦容疑者が担当になる
 証拠の資料を持ち出す場合、検事らは帳簿の該当欄に記載する。電子データは、ウイルス感染を避けるため庁内の特定のパソコンでしか開かない。起訴などで捜査が終結するまで、大抵の場合は資料は庁舎内の保管室へと移されない。
 「保管室だと証拠品係の職員を通さないと資料を取り出せない。職員は土、日、祝日は休み。捜査が進まなくなる」と東京地検特捜部副部長や同公安部長を歴任した若狭勝弁護士は説明する。会議室に置いた方が捜査にとって便利なのだという。
 ただ、会議室でも保管室でも偽造をチェックする仕組みはない。「想定外の事態。証拠は捜査にとって命。手を加えるはずがない」からだ。
 ところが、そんな信頼は裏切られた。若狭氏は「警察の事件と違い、特捜事件は検察が捜査とチェックの二役を担う。大きな事件が頓挫すれば、担当検事らは人事などで責任を問われかねない。チェック機能が働かず、後戻りできない。あせって突き進んだのではないか」と指摘する。
 ▼ 「可視化の徹底」 冤罪防げ
 再発防止の妙案はないのか。若狭氏は「特捜が強制捜査すれば起訴まで行くという雰囲気がある。立ち止まるには勇気が必要。そんな特捜捜査の本質まで考えないといけない」とも語る。
 ジャーナリストの青木理氏「可視化の徹底」などを挙げる。「捜査で集めた証拠は弁護側に全面開示する。取り調べは全過程を緑音、録画する。できれば弁護士を立ち会わせる。証拠偽造は防げないかもしれないが、冤罪は相当に防ぐことができる」とみる。
 足利事件などを手掛けた笹森学弁護士は「これまで数多くの冤罪事件で、虚偽の自白調書の問題が指摘された。すべて“疑い”で終わらせ、真摯に反省してこなかったことが、今回のように物的証拠にまで手をつける事態につながったのでは」と話す。
 捜査機関による証拠の捏造を防ぐには、証拠の差し押さえの際に立会人を入れ、押収資料をすべてコピーするくらいでないと信用性を保てないことになるが、時間と手間の問題で不可能だ。
 「内部の調査や捜査では真相解明は難しい。第三者機関を設立し、徹底的に原因を究明し、総括することが必要だ
 また元検事の郷原信郎弁護士も、今回の事件が個人犯罪ではなく、検察組織全体の問題とみる。「これだけの事件が無罪になることは絶対に許されないというプレッシャーがあったのではないか」と改ざんの動機を推測。「特捜部の体質は軍隊。兵士が殺す手段を選ばないように、検事は被疑者に勝つために多少の無理も通すマスコミは従軍記者で、それを礼讃するばかり」とメディアの責任にも言及する。
 改革案のひとつとして郷原氏は、現在、東京、大阪、名古屋の特捜部を、地方に分散させることを提案する。「都市部に人員や力を集中させて大きな事件を狙うから、無理をする。検察の組織全体の見直しが求められている」
 ■デスクメモ
 証拠保全のチェック機能がないのは悪事を想定していないからなんだそうである。犯罪を捜査する人々が、自分たちの仲間に対しては性善説に立つというのだからばかばかしい話だ。だが笑い話ではない。証拠捏造が許されれば何でもできる。あしたはあなたも犯罪者、なんてことになる。あな恐ろしや。(充)

『東京新聞』(2010/9/22【こちら特報部】)

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