厚労省文書偽造 「主任一人の問題でない」
▼ 9検察官 罷免申し立てへ
三井 環 元大阪高検公安部長
(略)
「改ざんは信じ難い行為だが、(検察では)都合の悪い証拠を隠すことはいくらでもある」東京都台東区の事務所で、三井氏はそう切り出した。
同氏は約十年前、現役検察幹部として検察庁の調査活動費の裏金化問題を内部告発していた最中、別の詐欺事件で逮捕された。当時、「口封じ逮捕」という風評も流れたが、懲役刑を受け、今年一月に出所した。
三井氏は二十二日付で、資料改ざんの証拠隠滅容疑で逮捕された大阪地検特捜部の主任検事、前田恒彦容疑者(43)もだけではなく、都合の悪い取り調べメモを「廃棄した」と法廷で証言した同地検の検事六人偽証容疑などで検事総長に告発。
十月一日付で検察官適格審査会に対し、無罪が確定した厚労省の村木厚子局長(当時)の逮捕・起訴にかかわったとされる最高検幹部ら九人の検事を懲戒免職処分にするよう求める。すでに約百人が申立人として名を連ねているという。
適格審査会は国会議員や最高裁判事、弁護士など十一人で構成され、三年ごとに全検察官の適格性を審査。そのほか一般からも申し立てができ、審査会が認めるとき「随時審査」が開かれる。不適格と議決された場合、法相が罷免する。
三井氏は「ほとんど機能していないといわれるが、検察審査会では不起訴の是非が問えるのみ。検察官をチェックできる機関はほかにない」と話す。
審査会に告発する検事の大半が“顔見知り”。かつての同僚らの責任を問う三井氏は文書偽造事件自体が「捏造された冤罪事件」と断じる。
▼ 虚構づくり幹部も責任
「大阪地検は文書偽造が民主党参院議員の口利きによる『議員案件』だったという筋書きで動いた。しかし、前田容疑者が議員に事情聴取した昨年九月段階で議員のアリバイが判明。この筋書きはつぶれた。それを特捜部長も検事正も把握していないはずがない」
さらに「(村木氏のような)高級官僚の逮捕・起訴は事前に上級庁と協議することが内規で決まっている」と指摘。「大阪地検、大阪高検、最高検が事前協議を行い、逮捕するか否かを決めたはず。最終的に検事総長名での指示に基づいて、逮捕状は請求される。幹部たちはこの時点で筋書きがつぶれているのを知っていたはずなのに、無理に逮捕方針に走った」
それゆえ、この無罪事件の責任は検察のシステムを考えても、押収資料改ざんに手を染めた主任検事一人に負わせてすむ問題ではないと言う。
「特に特捜事件は検事も絶壁に立たされ必死。起訴するためにありとあらゆることをやる。むしろ暴走しやすい」と三井氏。自らの現役時代にも「もしかしたら無罪かも」という心証を抱えながら、事前の筋書き通りに起訴した事件は「いくらでもあった」と漏らす。
「特捜事件こそ、裁判員裁判の対象にするべきだ」と話す一方、冤罪防止には「取り調べの可視化だけではなく、押収証拠品の全面開示が不可欠だ」と力説した。
『東京新聞』(2010/9/25【ニュースの追跡】)
▼ 9検察官 罷免申し立てへ
三井 環 元大阪高検公安部長
(略)
「改ざんは信じ難い行為だが、(検察では)都合の悪い証拠を隠すことはいくらでもある」東京都台東区の事務所で、三井氏はそう切り出した。
同氏は約十年前、現役検察幹部として検察庁の調査活動費の裏金化問題を内部告発していた最中、別の詐欺事件で逮捕された。当時、「口封じ逮捕」という風評も流れたが、懲役刑を受け、今年一月に出所した。
三井氏は二十二日付で、資料改ざんの証拠隠滅容疑で逮捕された大阪地検特捜部の主任検事、前田恒彦容疑者(43)もだけではなく、都合の悪い取り調べメモを「廃棄した」と法廷で証言した同地検の検事六人偽証容疑などで検事総長に告発。
十月一日付で検察官適格審査会に対し、無罪が確定した厚労省の村木厚子局長(当時)の逮捕・起訴にかかわったとされる最高検幹部ら九人の検事を懲戒免職処分にするよう求める。すでに約百人が申立人として名を連ねているという。
適格審査会は国会議員や最高裁判事、弁護士など十一人で構成され、三年ごとに全検察官の適格性を審査。そのほか一般からも申し立てができ、審査会が認めるとき「随時審査」が開かれる。不適格と議決された場合、法相が罷免する。
三井氏は「ほとんど機能していないといわれるが、検察審査会では不起訴の是非が問えるのみ。検察官をチェックできる機関はほかにない」と話す。
審査会に告発する検事の大半が“顔見知り”。かつての同僚らの責任を問う三井氏は文書偽造事件自体が「捏造された冤罪事件」と断じる。
▼ 虚構づくり幹部も責任
「大阪地検は文書偽造が民主党参院議員の口利きによる『議員案件』だったという筋書きで動いた。しかし、前田容疑者が議員に事情聴取した昨年九月段階で議員のアリバイが判明。この筋書きはつぶれた。それを特捜部長も検事正も把握していないはずがない」
さらに「(村木氏のような)高級官僚の逮捕・起訴は事前に上級庁と協議することが内規で決まっている」と指摘。「大阪地検、大阪高検、最高検が事前協議を行い、逮捕するか否かを決めたはず。最終的に検事総長名での指示に基づいて、逮捕状は請求される。幹部たちはこの時点で筋書きがつぶれているのを知っていたはずなのに、無理に逮捕方針に走った」
それゆえ、この無罪事件の責任は検察のシステムを考えても、押収資料改ざんに手を染めた主任検事一人に負わせてすむ問題ではないと言う。
「特に特捜事件は検事も絶壁に立たされ必死。起訴するためにありとあらゆることをやる。むしろ暴走しやすい」と三井氏。自らの現役時代にも「もしかしたら無罪かも」という心証を抱えながら、事前の筋書き通りに起訴した事件は「いくらでもあった」と漏らす。
「特捜事件こそ、裁判員裁判の対象にするべきだ」と話す一方、冤罪防止には「取り調べの可視化だけではなく、押収証拠品の全面開示が不可欠だ」と力説した。
『東京新聞』(2010/9/25【ニュースの追跡】)
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